第26話
第26話 見た目は普通、重さが異常な少女:4
【東エクスアリア草原 岩場野営ポイント 14.8回目の夜刻】
――この世界に渡る日の前後を境に異変が起き始めたというか……、この世界に渡る約一週間前にタケミツと夢斬貮型が侵入したことが異変の原因、か……。
「メリディさん、エルタティアは今、どうなっているのですか?」
「その話をする前に、アサヒにお聞きしたいことがあります」
「はい、なんでしょう?」
「では……罵倒神の守護剣がわたくしに申した、眠りの心中に現れるという邪なるオーガに魅入られし者は、異国の言葉と知識を発したり、突如他の者に対し危害を加える様になるという話は、真ですか?」
――夢斬貮型がその話をメリディさんにしたということは……、やはり夢喰いえタケミツの仕業……。
「はい、本当です」
「やはり……、わたくしの地の聖なる力だけでは……」
「メリディさん、私達は明日を奪う邪なるオーガから明日を救う力を持つ者、だから私達も一緒に――」
《「……う……長い悪夢から醒めたような……、はっ! メリディ様は?!》
――ん? 騎士さんが目を覚ましたみたいね。
「メリディ様、どこだ!」
「ここです。良かった……エイアス・アリディア、あなたが正気に戻ってくれて……」
――よく見てみたら二人とも蒼白の髪……、どんな関係なんだろう……。
「申し訳ございません、メリディ様。邪なる者に侵された巫女の塔からお救いしたのに、今度は自分が刃を……」
「もう良いのです、エイアス」
「弥乃葉、この人に椅子を出してあげて」
「はいはい、りょーかい!」
――こんなに早く目覚めるなんて……、あり得ない……でもこの世界では普通なのかも。
「すまない……これに腰をかけるのか?」
「どうぞ、エイアスさん。私達の事を覚えていませんか?」
「えっ? 黒髪の剣士と茶毛の剣士……、あっ、そうだ! 俺の頭の中で邪なるモノが殺の囁きをする中、聞こえた声とお二人の姿……、もしや俺を邪なる者から解放してくれたのは?」
「そうー! 君を解放したのは、『正義の夢斬士たる夢宮朝陽と正義のキャンパー夢斬料理人夢月弥乃葉』だよ! はい、どうぞ!」
「はっ? 君は一体、何を言っているんだ? この料理はなんだ?」
「エイアスさん! それは弥乃葉さんが作ったエクスアリアのかれーらいすーです!」
「エクスアリア族? こんな場所にいるなんて珍しい……、メリディ様、この者達は一体?」
「エイアス。この者達は、邪なるオーガからエルタティアを救えるかもしれない者達」
「罵倒神の守護剣亡き今、我々の目の前に現れた新たな望みということですね」
「そうですわ、エイ――」
「はいはいー! ドワー……いやスレイアアリアの巫女さんもカレーのおかわりどうぞー! とりあえず今は食べよ!」
「ありがとう、いただきますですわ」
――こういう空気の時、弥乃葉がいてくれるから助かる……、でも一瞬『ドワー』って聞こえた気がしたけど、気のせいかな。
◇しばらく後 14.9回目の夜刻◇
「とりあえず、ご飯も食べたし! 今後どうするかはまた朝、出発する時に決めましょう」
「分かりましたわ、アサヒ」
「分かった、アサヒ殿」
「あれ? 弥乃葉は?」
「弥乃葉さんならあちらに……」
「えっ? あちら……はぁ」
――なんでもう木に寝袋を吊るして寝てるのよ、早すぎでしょ!
「朝陽様、シャリアももう休みますね」
「うん。おやすみ、シャリアさん」
「おやすなさーい? 朝陽様」
――よし! みんな眠ってる。
『朝陽よ、眠らぬのか?』
「うん、最初の目的地のエルタティアが、まさかこんなことになっているなんて、予想もしていなかった」
『だが、朝陽よ。朝陽と我は、人の明日を護り続けるサダメの約束の元、十数年共に生きてきた』
「うん、そうだね。だから私はこの世界にいて、みんなとカレーライスを食べる経験をしたんだよ』
『左様、それは朝陽が明日を救う夢鬼理の力を持つ者として、人の明日を救い、彼奴等夢喰から護り続けてきた積み重ねの結果でもある』
「でもそれは私一人だけの力じゃない。夢鬼理がいなければ、明日を救う力なんて無かったし、『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』の掟と夢鬼理とみんなの力があって、今の夢宮朝陽としての私がいる」
『左様……、ただ朝陽よ』
「うん? どうしたの?」
『これからの明日。お前にもしものことがあれば、我はお前を護り抜くために、お前を夢鬼理朝陽――』
「そうならない様に頑張るよ、だから夢鬼理も私がそうならない様にサポートをお願い!」
『了解した……、さあ眠るがよい』
「うん、おやすみなさい」
――夢鬼理朝陽……それは私でなくなるということ……でもそんなことにはならないよ。
第26話
見た目は普通、重さが異常な少女 その4 完。
第27話へつづく!
*2026年9月26日(土) 一部内容の改訂を行いました。




