第23話 見た目は普通、重さが異常な少女 その1
第4章 突入です!
第4章 地の聖なる力と想いの力の夢斬士達
見た目は普通、重さが異常な少女 その1
【東エクスアリア草原 エルタティア近辺 野営ポイント 夜刻】
「よし、あとは煮込むだけだ! これで『夢月弥乃葉シェフの今日の晩御飯は完成だ!』 あっそうだ! シャリアさん!」
「なんでしょうか? 弥乃葉さん」
――あれ? この匂いは?
グツグツ! グツグツ! グツグツ!
「えっ? シャリアさんはあの『僕は、夢領域という迷宮を彷徨う旅人なり!』の夢領域に入ったの?」
「はい、弥乃葉さん。朝陽様と一緒に、ギルド冒険者のパーティーメンバーのリクルさんの夢の中に入りました」
「で? どうだった? 『初めて味わう、人の夢は、蜜の味」の夢領域は、どうだった? 怖かった?」
「はいはい、弥乃葉、シャリアさんが困ってるでしよ」
「分かってるよー、でも朝陽も当然、入ったんだよね?」
「もちろん、私達は夢斬士だからね」
「流石、朝陽、ブレないねー、『夢喰は斬る! ご飯も食う! それが、夢宮朝陽だぜ!』だね」
私達は今、野営設備を設置したポイントで、弥乃葉が作る、匂いから予想ができる晩御飯を待っている。
「いやぁ……ちゃんと出来てるかな…………うーん! この匂いと香りは…………バッチリです!」
焚き火等を使い、騒ぎながら弥乃葉が作った晩御飯の正体、それは…………
「ヒュュ〜! 『ああーこの匂い……散っていった仲間たちと野営地で、暖を囲みながら、時間をかけて作った、懐かしいあの時の事を思い出すなぁ……ヒュュ〜! それが絶品エクスアリアカレーさ……』はい、どうぞ! 召し上がれ!」
弥乃葉が作った晩御飯は、カレーライスだった……
しかもちゃんとカレーの匂いがするカレーライスだけど、エクスアリアで、なぜカレーライスを作れたのだろうか?
「弥乃葉さ、その夢羅鬼理ガジェット、何が入ってるの? 夢鬼理ネットワークの転移ゲート通過時に、食材は弾かれるから、持ち込めないはずよ」
食材を夢鬼理ガジェット、夢斬ガジェットに入れたまま、ゲートは通過できない様に、夢鬼理ネットワークは設計されているのだ。
「さぁ、弥乃葉、どう説明する?」
「ゆ――夢羅鬼理の力が有れば、簡単だよ…………『ただ、夢覚市の夢鬼理ネットワークの転移ゲートを通過出来なかった原因が、夢羅鬼理ガジェットの中にカップラーメンやレトルトカレーを入れてたからなんて……朝陽には言えねぇな…………』だからフェルレトの街にある食堂のマスターにカレールゥ? を分けてもらったんだよね」
「カレールゥを分けてもらった? あんた、普通に怪しいニホ…………ヒューマアリア人だよ」
「ヒューマアリア人…………『あぁファンタジーと言えば、ヒューマンという人種は定番設定だったね…………ヒューマとエクスアリアで、ヒューマアリアか…………なるほど、ここがエクスアリアの世界か』……ん? 怪しい? どういうこと、朝陽さん?」
「弥乃葉さんは、ちょっとだけ元気過ぎるヒューマアリアの女性ですね…………」
「シャリアさん…………朝陽と違って、優しい!」
『我はあまりよく分からんが、エクスアリアの歴史に、夢斬士を残してはならぬと朝陽は、いつも言っているぞ』
「え、そうなのユメキリさん? 確かに本来は、人の夢領域に接続する為の夢鬼理ネットワークだもんね…………私は、朝陽に助けて貰ったあの日から寝ても夢は見られないけど…………」
数年前。
昏睡状態だった弥乃葉の家族から、夢鬼理ネットワークを通じて依頼を受けた私は、弥乃葉の夢領域で、弥乃葉の明日を奪っていた夢喰を討滅した。
本来なら弥乃葉の夢に、夢斬士がいた事実は、本人の記憶から消えるが、弥乃葉は夢領域で行動していた私を、完全に認識していた。
「えーと、どうして弥乃葉さんは、自身の夢喰を討ったのが、朝陽様だと解ったのですか?」
「え? 『いいかい、嬢ちゃん。それは俺が、勇者召喚された時の勇者適性が、夢斬士だったからさ…………』なんだよね」
「えっ? 勇者召喚? 勇者適性がユメギリ士? なんですか、それは?」
「はいはい、弥乃葉、シャリアさんが困ってるでしょ」
「シャリアさん、朝陽! おかわりは?」
――あっ、話を逸らした。
「はい! いただきます、弥乃葉さん」
「了解〜、朝陽は?」
「いただこ……ん? ……誰だ!」
弥乃葉のエクスアリアカレーのおかわりを貰おうとした時、野営ポイント近くの森の方角から、ボロボロの服を着た私と同じ歳ぐらいの女の子が、フラフラしながらこちらに向かって来た…………
バタン!
「あわわ、この子、倒れちゃいましたよ……どうしましょう、朝陽様?」
「このままこの子を放置する訳にはいかない。シャリアさん、弥乃葉、とりあえずテントの中に運んで、様子を見よう」
「分かりました! 朝陽様」「了解、朝陽」
森の入口近くに設営した野営ポイントとは言え、このままこの子を放置しておくのもまずい。
「朝陽〜! この子、『見た目は普通! 重さは異常!』ってぐらいに重いんだけどー、朝陽〜手伝ってよ!」
「重い? そんな訳ないでしょ…………重っ!」
「あわわ……朝陽様、シャリアも手伝います!」
「ありがとう、シャリアさん!」
見た目は普通のヒューマアリアの女の子なのに、体重は、私達3人がかりでようやく運べるぐらいの重さなのに、地面に沈まないと言うのは、不思議な感覚だった。
『朝陽よ。言語解析をするか?』
「うん、お願い。ユメキリ」
『朝陽よ、了解した』
【ユメキリが、対象スキャン中…………言語解析…………スレイアアリア語の解析を完了しました!】
「メリディ様! メリディ様! 何処へ行かれたのですか! せっーかく、メリディ様を殺められる好機だったのに!」
ユメキリが言語解析をしてくれた直後、森の方角から奇妙な絶叫が聞こえてきた…………
人の夢に現れ、人の明日を奪う鬼――夢喰が遺す力である殺意の邪想の影響を受けている者の絶叫だ。
「シャリアさん、この子をお願い」
「朝陽様! 私も戦います!」
「ダメ! 3人で戦って、万が一、私達が敗れる様な事があれば、この子の明日も奪われてしまう…………だから、お願い!」
「明日を護れなくなる…………朝陽様、分かりました! この子は、シャリアが必ず護ります!」
「ありがとう、シャリアさん、お願いね!」
「はい! 朝陽様!」
私達は声が聞こえて来た、野営ポイントから少し離れた森の入口の方角へ向かった。
「朝陽! 滅する? それとも、救う?」
「救うに決まってるでしょ! 弥乃葉」
「だよね、でも最悪な場合は滅するから、いい?」
「救う! 良い? 滅したらダメだからね!」
「了解、努力はする」
「行くよ! 弥乃葉!」
第23話 見た目は普通、重さが異常な少女 その1 完
その2へつづく!
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