↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/46

第21話

 第21話 エクスアリア炒飯と夢宮一族: 4



【フェルレトの街  夢宮陰楼(ユメミヤ カゲロウ)の家 13.8回目の夜刻】



《「よーし! あと少しで完成だー!」》


「うむ。いい香りがするな、朝陽(アサヒ)」


「ええ、弥乃葉(ヤノハ)は夢覚(ムザメ)市でもよく料理を作ってくれていましたから」


「そうか……、少しばかり話が逸れたな」


「いえ、私がタケミツに抱く怒りを抑えられなかったのが原因ですから」


「ふっ、では夢月(ユメツキ)が、この地へ渡ることができたからくりについてだか……」



 ――弥乃葉がこの世界に来ることができた理由……、本当にどんな手を使ったんだろう……。



「その前に……シャリアよ」


「はい、なんでしょうか?」


「お前の故郷、ヴェルレスト村の自然は素晴らしい」


「ありがとうございます! ……あれ? 陰楼様はヴェルレストへいつ行かれたのですか?」


「そうだ、フェルレトの地を離れた三刻日前にな」



 ――ん? なんでフェルレトの街からヴェルハラの森へ行ったのかしら。



「なぜヴェルハラの森へ?」


「なぜ? お前が『この地へ渡った時、夢鬼理とお前が作りし、そのからくりに細工をしたか?』と俺に問うたのは、お前だろ?」 

 


 ――初めて陰楼さんと会った時、確かにジャミングをかけたか聞いたけど……、ヴェルハラの森の名前は出してない。



「なぜあの森の事を知っているのだ、と言いたげな顔をしているな」


「だって初めて陰楼さんと会った時、ヴェルハラの森の事を話した記憶がありませんから」


「ふっ、そうだったな……、だが人里へ滅多に顔を出さぬはずのエクスアリア族のシャリアが、お前の近衛として現れた……、それこそあの森から来たことを示す、動かぬ証なのだ」



 ――そうだ、フェルレト亭にシャリアさんと一緒に行った時も今朝フェルレト街の人達が弥乃葉の噂をしていた時も弥乃葉が騒いでいた時も街の人達は、私の事を『エクスアリア族と話す珍しいヒューマアリア』って言っていたわ……。


「あのー、それでアイリア様とお会いになられたのですか?」


「うむ、少しばかり話もしたが……、アイリアは、二人の事をかなり案じていたぞ」


「そうですか、アイリア様が……、これは一度、アイリア様のお顔を見に行かないとですね!」


「うん、そうだね。ヴェルハラの森方面に行く時があったら必ず行こう」


「はい、朝陽様」


 ――この世界に来た日、シャリアさんとアイリアさんとヴェルレストの村の人達が受け入れてくれなければ、私は今頃……。



「うむ。それとお前達が、あの村の奥にある泉の底に沈めた、夢鬼理の一体……」


 ――女神エクスアリアの泉の底に設置したユメキリII型・主の話をするという事は、本当にヴェルハラの森に行ってたんだ。


「……によって、森全域が彼奴等(キャツ)を寄せつけぬ、聖峰樹海と化していたな」


「朝陽様。やはりユメキリII型さんと女神エクスアリア様が、ミリュテさんとセロツさんを護って下さってましたね、本当に良かったですね!」


「そうだね、あの泉の底へユメキリII型を沈めて正解だったね」



 ――これからもユメキリII・主型(シュガタ)がこんなにも働いてくれているなんて、予想以上ね。



「後、あの森へ俺が赴いた訳がもう一つある」



 ――ん? それってもしかして……。



「まさか、この世界へ来る時に私が使用して、壊れてしまった門を探しに行ったのですか?」


「そうだ。閉門された門を見つけ、鬼理刻の力で門の内側から遥か明日にある夢覚の地へ赴き、お前が無事であることを夢宮一族へ伝えるためにな」



 ――私の無事を伝えるためだけに、陰楼さんは未来の夢覚市へ渡ったの? ていうか転送帰還ゲートは遮断されて消えた筈なのに、それを見つけ出すなんて有り得なさすぎ!



「なんで……そんな危ないこ――」


「ふっ、お前もあの目に丸板を着けた女が発した『遥か数百前の夢覚の地で生きる俺が、遥か数百先の夢覚の地に現れたら、それ自体が禁忌(キンキ)である』と考えているのか?」



 ――目に丸板を着けた女? もしかして眼鏡を掛けてる心裡(シンリ)のことかな……。



「そうです。向こうの世界で下手に動いたら、夢宮一族と私自身の存在が消えてしまうのですよ」


「はっはっは! その事ならば心配はいらぬ」



 ――はっ? 遥か数百年前の人間が未来を知る事自体、危ないんだけど……。



「遥か明日の夢覚の地へ赴いたのは、この地で時を刻む俺。遥か数百年前の夢覚の地から刻を跳躍したわけでないのだよ」



 ――えっ、『一体、何を言っているの……』



『朝陽よ。朝陽の目の前にいる夢宮陰楼は幻か?』


「違うよ、さっき陰楼さんの手を触った時、普通に温かい感じだった」


「当たり前だ! この地にいる俺も未だ死してはおらぬぞ」


「それはどういうことですか?」


「ふっ、この地にいる間、俺は刻の歩みが止まりし夢覚の地で今も眠っている」


『左様か、ではお前はどうやって夢覚の地へ帰るのだ?』


「ふっ、この地で眠る刻、夢覚の地へ帰る意志を鬼理刻に示せば、夢覚の地で朝の目覚めを迎えるのだ」


「えっと、つまりどういうこと?」


『朝陽よ、我達の前にいる此奴は、鬼理刻の力でこの世界に存在している夢宮陰楼であり、遥か数百年前の夢覚市で今を生きる夢宮陰楼その者ではない、ということだ』



 ――つまり陰楼さんは、鬼理刻の力を使って……って、まったく話がややこしいわね……。



「そう、夢宮陰楼は夢宮陰楼なり。夢覚の地へ帰る時も鬼理刻が遥か明日の存在であるお前が消えぬ様、余計な知識が残らない様にしてくれているのだ」



『なるほど……陰楼よ、この世界で生きる夢宮陰楼という存在を鬼理刻が用意、その存在も紛れもなく夢宮陰楼の一人であり、どの地にいようとも始まりの夢斬の武士である夢宮陰楼は揺るぎはしない、で良いのだな?』



「そうだ。俺の子孫たる夢宮の名を持つ朝陽とこうして同じ釜の飯を食えるのもな」


「そ、そうですね……」



《「そうだよー! わたしがこーんなエクスアリアチャーハンを大昔に住む朝陽のご先祖様に作るなんて、あり得ないんだからさ!」》



「おおぉー! これぞお前達が食ってた美味に見えた炒めた飯!」


「陰楼様! お待たせしましたー、特盛エクスアリア炒飯です!」


 ――はっ? なんで特盛炒飯を作れるのよ! 材料はどうしたのよ!



「夢月、分かってるじゃないか! 」


「どうだー! これが『正義の異世界夢斬料理人である夢月弥乃葉シェフが夢宮陰ろ――』って、イッタイナァ!」


「高く聳(そび)える塔の最上の一室で、お前が俺に刃を構えてきた記憶が甦ってな……うん、美味だ」


 ――ん? 高い塔の最上? コンツェルンビルのA.Yエリアのこと?


「そ、それは……突然現れた『夢宮本家の令嬢を拐(さら)った! 悪の組織の刺客!』が――」


「はいはい、俺も見た画のからくりに全てが残っていることを忘れるなよ……美味」



 ――俺が見た画のからくり? それって監視カメラの事?



「だから……それはあの後、ちゃんと謝ったでしょ!」


「うむ、この炒めた飯。いくら食しても夢月にしては、美味の飯だな」


「夢月にしては美味の飯? 一言余計でしょ!」


「うむうむ、美味だ美味」


「はぁ……聞いてないしー! でもその後が大変だったんだからね!」


「それはそうだろうな、ふー美味だった!」


 ――あれだけ盛られていたチャーハンをもう食べたの、あり得ないでしょ。


「その後、どうなったのですか?」


「当然、遥か明日で生きる夢宮の者達は、始まりの夢斬の武士として夢宮一族を作り、遥か昨日にある夢覚の地で生きる俺を信じなかった」


 ――いきなり現れて、『遥か昔の夢覚市で今も生きてる俺は始まりの夢斬士ですよ!』……なんて言われても、誰だって簡単には信じないわ……。



「だが……お前がこの地で無事である、その事だけは伝えきた、だから夢月がこの地へ渡ってきたのだろうな」


「陰楼さん、ありがとうございます」


「それと、遥か明日の夢宮一族を統べるお前の父君と母君、それと丸板をつけた心裡(しんり)とやらも、お前の事をかなり案じていたぞ、そこの夢月もな」


「当たり前でしょ! 『正義の夢斬士の夢月弥乃葉は、勝手に異世界へ渡った親友を追う事を決意した』ってことなんだからさ!」


「ふっ、だがお前がこの地へ渡れた因果は、俺と鬼理刻の手筈によるモノだ、それを忘れるなよ」


「はいはい! そうですねー、夢宮陰楼様!」


「なんだか話が複雑すぎて、頭の整理が……」



『朝陽よ。遥かなる昨日にて夢宮陰楼が作りし、『明日を救う力を持つ者、力に溺れるけとなかれ』という夢斬士としての夢宮一族の礎は、遥かなる明日に位置する夢宮一族でも変わらず夢宮一族の礎となっていた、と夢宮陰楼は言いたいのだろう』


「ふっ、そうだ。俺と鬼理刻が夢覚の地の明日を永劫に護り続ける覚悟、その心中を夢鬼理が代弁してくれるとはな」



 ――過去と未来は繋がっている、それが夢宮一族が夢覚市に存在する理由。


「しかし鬼理刻と夢鬼理、お前達は真に同一ではないのか?」


『左様。夢鬼理は夢鬼理、鬼理刻である鬼理刻、刻想器は刻想器、これは変わらぬ理だ』


「ふっ、そうか。確か鬼理刻も同じことを申していたな……夢月、あの女から朝陽へ何か託されたのではないのか?」


「……あっ、そうだった! 忘れてたー、はい」



 ――これはなに? 


「心裡さん曰くー、夢鬼理からの微弱な通信を夢斬参型が傍受可能状態を増加させる通信機だってさ!」


『左様か。朝陽よ、それを我の前へ』



 ――こんな小さな部品で何が起きるというの?


『なるほど、夢斬参型の稼働状況の把握が以前より良くなったな』


「そうそうー! それがあれば朝陽とわたしがいつか夢覚市に帰っても、わたし達が消えていないはずってさ!」


 ――心裡、ありがとう……、これで安心してエクスアリアで活動できるよ。


「ん? 私と弥乃葉がいつか夢覚市に帰る? アンタはもう帰るんじゃないの?」


「はぁー? なんでわたしが『異世界に渡る子供のお遣いは、無事に終わりましたー! いかかでしたかー!』みたいな感覚で帰らされないといけないのよ!」


「ごめんごめん」


「もう! 総帥から『朝陽の事を頼むぞ、正義の勇者夢斬士、その名も夢月弥乃葉よー!』って、お願いされたし!」


「お父様がそんなことをアンタに言うわけないでしょ!」


 ――全く! お父様の前でも弥乃葉は弥乃葉なんだから!


「それでー! わたしも朝陽とシャリアさんの明日を救う旅に同行するからさ、よろしくね!」


「はい、弥乃葉さん。よろしくお願いします!」


 ――弥乃葉が旅の仲間になってくれるのは嬉しいけど……、それよりも……。


「陰楼さん、もしエクスアルディアギルドの特夢位(トクムイ)のギルド依頼がきた場合はどうするのですか?」


「ふっ、この街へ戻りし今、この周辺で特夢位の遂行は、一人で十分さ、旅を再び始めるとよい」


「はい、色々とありがとうございました」



【エクスアリア・東 フェルレトの街 13.9回目の真深夜刻(マシンヤコク)】



「おー! これがエクスアリアの夜! さっきまであんなに『ファンタジー世界の冒険者、僕達の名前はモブというのだ!』なフェルレトの人達がいないね」


「モブー? 弥乃葉さん、モブーとはなんですか?」


「はいはい、シャリアさんが困ってるでしょ」


「はいはいー! 今から夜のフェルレトの街を散策しましょー!」


 ◇十数刻分後◇



【フェルレト支部二階 夢斬士の部屋 14回目の夜朝刻】



 ――ふぅ、お風呂も入ってスッキリしたし! 後は……。


「じゃあ、今日の昼刻に東の地然街エルタティアへ出発するよ、二人共それで良い?」


「はい、朝陽様」


「おおっと急すぎだねー、まぁいいや、了解了解」


「よし、それじゃあ二人共おやすみなさい!」


「おやすみーなさい? スースー」


「おやすみ、朝陽……スースー」


 ――二人共寝るの早っ! あの弥乃葉が持っていた夢羅鬼理(ユラキリ)という名前のガジェット、もしかしてあれは……、いいや起きたら聞いて――むにゃむにゃ……。



 第21話

 エクスアリア炒飯と夢宮一族:4 完。


 第22話へつづく!

*2026年6月28日(日) 内容の再構成改訂を行いました。

*2026年9月18日(金) 一部内容の改訂を行いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。