第20話 エクスアリア炒飯と夢鬼理ネットワーク その3
エクスアリア炒飯と夢鬼理ネットワーク その3
弥乃葉が見せてくれた、夢宮コンツェルンが記録していたデータ。
2週間前のヴェルハラの森で、夢喰エグゼクショナー型のシャリアさんによって私の命の灯火が消された、嘘の映像データだった。
シャン! シャン! シャン!
「熱! 『夢月 弥乃葉シェフ様のエクスアリア炒飯! ふふ〜ん』……って熱!」
「良い香りだ…………俺の時代における夢覚の地では、人々に害を加える妖に対抗する妖祓いの一族、それが夢宮一族だったのだ」
夢宮家は元々、人々に害をなす妖怪のみを退治する、妖対策のプロフェッショナルな家系であったという。
「でもな、害をなす妖が、全く出なくなる時期が来た。
その代わりに夢覚の地の人々が、原因不明の眠り病や朝を迎えると殺の言葉を口走る様になったのだ。
朝陽、何故だか分かるか?」
陰楼さんの話から考えると、原因は一つ…………なら答えはこれしかない。
「…………もしかして、夢喰ですか?」
「そうだ。夢覚の地に現出したら祓われる事を学んだ妖が、次に目をつけた餌場、それが、人の夢の中だ。
明日を奪う鬼の基となったモノ。
それが夢魔の妖であり、夢魔の妖が明日を喰らい、進化し、集結して出来たモノ、それが夢喰だ」
夢覚の地と呼ばれていた時代の夢覚市では、夢魔の妖が、夢覚の地の住人の脅威となっていた。
人の夢の中から知識を盗み、夢を見る人の明日という餌を喰う、だから夢喰…………明日を奪う鬼、夢喰。
「という事ですね? 陰楼さん」
「そうだ。かつて刻想器だった時の鬼理刻と契約した時は、夢覚の地で、殺意の邪想に呑まれた野盗と戦っていた。
だが、予想以上に手強い野盗に俺は、トドメを刺される寸前だったのだ…………」
【陰楼の回想】
「グァガァヴァヴァヴァ! 夢宮一族の人間。
これで貴様も、夢宮一族も終わりだぁぁ!」
「くっ……ここまでか、すまん……みんな」
本当にすまん、みんな。
俺に…………もっと力があれば!
『汝……は、それで良いのか? 夢覚の地を此奴らの手に渡ることを汝は、本当に望むのか?』
何を言ってやがる。
夢覚の地の民を守れず、こんな訳も分からん野盗に斬られて、死に征くなど、本望な訳あるまい。
いきなり時の歩みを止め、勝手に俺の頭の中へ語りかけてきている貴様が、何をしてくれるというのだ?
『何をしてくれるだと? ふっ、汝はどうしたい? このまま此奴らに無様に斬られて、夢覚の地で明日を護ることを辞めるか? それとも、汝が今持つ力以上の力を我が与え、その代償に夢覚の地の明日を護り続ける覚悟が、今の汝にはあるか?』
ふん、そんな脅し、俺には通用せん。
だが、こんな野盗如きのせいで、俺の代で、夢宮の一族を終わらせる訳にはいかん。
いいだろう…………貴様の力の代償に、俺が夢覚の地の明日を護り続けてやるから、さっさと力を寄越せ!
『ふ、良かろう! 夢宮陰楼……刻想、契の刻』
契りの刻?
だが俺は今、刀身が白き光放つ刀を握っている。
これが夢覚の地を護り続ける力!
…………時の歩みが始まったな。
「夢宮陰楼ぉぉぉ……そ……その力はなん…………だ」
「祓滅!」
ブシャァァァ!
「その力……許さぬ! 陰楼ォォォォ…………!」
コ、コイツ、俺の手に何をしやがる!
「祓滅! ぐっ」
ブシャァァァ!
「殺意………の邪想…………命の灯火が消え、夢宮の一族が破滅するその時まで…………精々苦しむがいい…………」
「チッ! 祓滅!」
ブシャァァ!
この時、俺は夢魔の妖に殺意の邪想を利き手ではない手に植え付けられた。
「ぐっ! 血を求めて、手が疼いてやがる…………厄介なモノを押し付けやがって!」
殺意の邪想から流れてきた情報から、夢覚の地の人々の眠り病と殺の言葉の原因が、夢魔の妖であると俺は、理解せざるを得なかった。
それから鬼理刻と俺は、殺意の邪想を純粋な想いの力に変化させる鍛錬を積みながら、夢覚の地の人々の夢の中へ入り、夢魔の妖を狩り続けている。
『俺の命の旅が終わっても、夢魔の妖は人々を襲うだろう…………なら俺にできる事は、俺の使命を後世の者達に受け継いでもらうのみ…………』
『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』
『夢の中で、害をなす妖を祓い斬る者。
妖祓いの夢宮一族から夢斬の武士、夢斬士の一族として、これからも夢宮一族は、夢覚の地を護るのだ』
【時は戻り、今、エクスアリア】
「…………というのが、夢斬士としての夢宮家の始まりだ。長話していたら、腹が減ってきたな…………夢月、お前たちがさっき食べていた、炒めた飯はまだあるのか?」
「えーと、『料理の夢斬士、 夢月 弥乃葉シェフの絶品エクスアリア炒飯は、只今準備してるぜ!』なので、少しお待ちください」
「ああ、頼むぞ」
エクスアリア炒飯と夢鬼理ネットワーク その3 完
その4へつづく!




