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第19話②

 

 第19話 エクスアリア炒飯と夢宮一族:2



【フェルレトの街  夢宮陰楼(ユメミヤ カゲロウ)の家 13回目の夜刻】




「お前達、フェルレト亭へ行っていたのではないのか?」

「そっ、それは朝陽(アサヒ)がどうしてもわた――」

「こら夢月(ユメツキ)! 勝手に火を使いやがって……まあいい、ほらよ朝陽」



 陰楼さんが持っていた布袋が目の前に置かれた。



「陰楼さん……これは?」

「これはエリディアから預かったモノ、特夢位(トクムイ)の依頼、ギルド所属冒険者のリクルの明日を救った報酬だ」

「ありがとうございます」



 ――あれっ、袋が少し重くない?



「冒険者リクルの仲間の一人、ミリュテとやらはこれでも報酬が少ないくらいだ、とエリディアに言っていたそうだ」

「でも、陰楼さ――」

「朝陽、これはお前とシャリアが救った明日の対価だ。報酬の量は関係無い、お前も夢斬士(ユメギリシ)なら分かるだろ?」

「はい、明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ、ですね」

「そうだ、朝陽。それが夢宮一族の夢斬士の掟であり、人達のさい ……ご、夢月、聞いてるか?」

「……えっ?『もちろん聞いてるさ、私は正義の夢斬士、夢月弥乃葉(ゆめつき やのは)だぜ〜!』って、イッタい!」



 ――弥乃葉と陰楼さんの見ていると、長い付き合いみたいに見えるけれど……あれっ? 弥乃葉がエクスアリアにいる理由、まだ聞いていない!



「朝陽。なぜ夢月がお前達の目の前にいるのか? これを知りたいのだろう、それはだな――」

「はいはい! それは私から話すよ、陰楼様」

「……いいだろう、ではお前から話せ」

「はい、陰楼様」



 ――えっ? 急に弥乃葉が真面目な顔になった?




 陰楼さんの隣に座り始めた弥乃葉は、ゆっくりと話を始めた。



「朝陽さ。8月8日の夜、これがどういう意味なのか、分かる?」

「8月8日の夜は私がエクスアリアへ渡った日だよ」

「うん、そうだね。じゃあ朝陽さ、今の夢覚市は何月何日かな?」

「えっ? 私がエクスアリアに来てから二週間経ったぐらいみたいだから、夢覚市はお盆明けぐらいじゃないの」

「はあ……やっぱりかー」



 ――やっぱりって、どういうこと?



「私がエクスアリアへ渡った時の夢覚市は8月30日だよ。だから約10日以上、時間がズレてる」

「えっ! 10日以上もズレているの?!」

「まあ、朝陽がそう言いたくなる気持ちも分かるよ……ならこれを観ても同じことが言える?」

「え? どういうこと?」

夢羅鬼理(ユラキリ)、ユメキリさんへアレの転送をお願い」

『主人弥乃葉、承知ナリ』



 【夢羅鬼理(ゆらきり)が、ユメキリに映像データを転送しました】



『これは……朝陽よ、我を卓の上へ』

「分かった、ユメキリ」



 私はキーホルダー型のユメキリをテーブルの中央に置いた。



『では、映像を再生する』



 《「くっ! この子、強い! でもこの動きなら勝てる!」》



 ――これはヴェルハラの森……私が戦っているのは、シャリアさんだ!



 《「あなたの首を殺めてあげるわ! ヴェルハラの森の侵入者の首を殺めてあげる!」》

 《「はぁー! 必ずあなたを救っ――」》



 ――えっ? 私がシャリアさんに貫かれてる……。



 《「隙あり! 侵入者をエグセクショナーしたわ! ははははははぁー、これはさ、最ッ高な気分よーー!」》



「あわわわ、私が朝陽……様を…………あり得ないです! この映像は幻です!」



 ――これは嘘だ! シャリアさんの明日を確かに救ったはず! でなければ夢宮朝陽とシャリアさんはここにいない!




「朝陽。あなたは夢鬼理ネットワークシステムエクスアリアの転移ゲート付近でシャリアさんと戦闘した、で間違いな――ってイッタァ!」

「こら夢月! 言葉もなく朝陽とシャリアに恐れを植え付けてどうするのだ!」

「イッタイナァ! だから今から説明するか――」

「はぁ夢月、お前に任せようとした俺が愚かであった……朝陽、この偽りの動く画を生み出したのは、夢魔(ムマ)(アヤカシ)に通ずる者だ」

「夢魔の妖と通ずる者?」

「そうだ、彼奴等(キャツラ)夢喰(ユメグイ)が変化する前の名が夢魔の妖」



 ――夢喰に進化する前の姿が夢魔の妖……。



「陰楼様! 邪なるオーガである夢喰とむまーのあやかしーとは一体どういう存在なのですか?」

「シャリア、よく聞くがよい。夢魔の妖とは、お前が呑まれる要の一つとなった邪なる力である殺意の邪想を生み出す存在だ」

「あの禍々しい力……」

「シャリアよ。お前は朝陽がいなければ殺意の邪想に呑まれ、お前の故郷であるヴェルレストの明日を奪っていたかもしれんな」

「あわわわ! 朝陽様がいなければシャリアは……」

「シャリアさん、ちょっと陰楼さん!」

「……悪かったなシャリア」

「いえ! シャリアは朝陽様のお側にいます! それが全てですから!」



 ――シャリアさん……本当に強い心を持つ人だ。



『陰楼よ。ヴェルハラの森の夢鬼理ネットワークシステムの帰還ゲートへの細工は、夢魔の妖の仕業か?』

「流石はユメキリだな。あの門を内側から強引に閉じる事で、朝陽と夢月の時代の夢覚の地から夢斬士を来させないようにしたとみえる」

『やはりな。我達は彼奴にまんまと誘導されたというわけだな』

「彼奴? どういうこと?」

「ここにいる俺、朝陽、夢月は本来ならこの世界にいてはいけない異物なのだ」

「確かに、夢覚市から来た私達は本来エクスアリアの世界にいてはいけない存在」

「そうだ、朝陽。だがもう一人いるだろ? 明日を諦め、お前達の明日を救う仕組みでエクスアリアに来た者が……」



 ――確かに夢鬼理ネットワークシステムを使い、夢覚市からこの世界に来た人間がもう一人いる!



「エクスアリアの明日を奪う彼奴等夢喰がなぜ、本来知らないはずの夢覚の地の言葉と知識を語るのか、お前の中で既に(トウ)は出ているはずだ」



 ――夢鬼理ネットワークシステムの脆弱(せいじゃく)性をついて、この世界に異世界転移した腑抜け(ふぬ)……己の身勝手な理由から明日を諦め、夢喰の王になろうとしている腑抜け、その人間の名前は……。



「はい、陰楼さん。それは夢宮タケミツの事……ですよね」

「そうだ朝陽。彼奴は既に明日を奪う夢喰と成り果てた夢宮の掟破り」



 ――明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……、夢宮タケミツが夢宮の掟破りなら私はタケミツを斬るしかない!



「朝陽。『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』という夢宮の掟の始まりを話してやろう」




 第19話

 エクスアリア炒飯と夢宮一族:2  完。


 第20話へつづく!

お読みいただきありがとうございました。


2026年6月28日(日) 内容の再構成改訂を行いました。

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