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第17話

第17話

 三人目の明日を救う者は、正義の夢斬士


【フェルレトの街 中央広場付近 13回目の夕刻(ゆうこく)】



《「この世界の人達が何を喋っているのかも、この看板に何が書いてあるのかも分かんない! 全くもう! 朝陽(あさひ)ー! どこにいるのよー!」》


 ――あーもう! 大きな声でキンキンキン、耳が痛い!



『朝陽よ、夢宮コンツェルンとの夢斬参型(ゆめぎりさんがた)通信がまた弱まったぞ』



 ――『えっ? もしかして夢斬参型が送ろうとしていたモノって……』



『左様、おそらくな』



「朝陽様とユメキリ様は、あの方とお知り合いですか?」



 ――お知り合いというか……、少し変わった関係というか……。



《ガヤガヤ(あい、見ろよ! あそこにいるエクスアリア族の女を連れているあの若い女)ガヤガヤ》

《ガヤガヤ(あれっ? 茶毛の女と同じ黒布服を着てるわ!)ガヤガヤ》



 ――ちょっと! 弥乃葉に気づかれるじゃない!



《ガヤガヤ(ホントだ! でもエクスアリア族の女とあのヒューマアリアは、普通に会話してるー、不思議ー!)ガヤガヤ》



 ――はぁ……、みんなこっちを見てるし……。



《「ん? どうしたの? もしかして何かあるの? ……あっ!!」》




 ――やばっ! 気づかれた!



《「やっーと見つけた! 朝陽!」》



 ――なんでニヤニヤしながら向かってくるのよ! 恥ずかしいんだけど!



「朝陽様、こちらに向かってきますよ! やはりお知り合いですか?」


「うん、そう。でもなんでここにいるのかは知らない……」


《「やっーと見つけた、朝陽朝陽朝陽朝陽朝陽!」》


 ――やばっ、勢いよく向かって来る!


「えへへへ! 会いたかった、朝陽朝陽朝陽!」


 ――そうきたか、よっと!



《「はっ? 避けるなん――――」》



 ――いきなり飛びつこうとするからよ!



「イタァァ! ……はぁー?! 久しぶりに会った後輩を避(よ)けるなんてさー、酷すぎじゃありませんか!」


「あっ、よく見たら弥乃葉だ」


「はぁー? もっとこう! 『えへへうふふ! 会いたかったよー弥乃葉! わたしもあッさひッ! えへへうふふ』っていう感じになる感動の再会シーンだよね、コレ!」


「なーにが、『感動の再会シーンだよね、コレ』よ! そもそもなんでここにいるのよ!」


「それはこっちのセリフ!」


「はっ? なんでそうなるのよ!」


「どこかの誰かさんがー、わたしのいない隙を狙ってー、この世界へ勝手に行ってー、すぐ消えた! わたしもコンツェルンのみんなもどれだけ朝陽の事を心配したか!」



 ――えっ? もしかして夢鬼理ネットワークシステムが遮断された後も探してくれていたの?



「それと! 朝陽のお父さんの総帥(そうすい)も心配してるんだから!」


「えっ、お父様が?」


「そうだよー! 確かー『ああぁー! こんな事になるなら……朝陽を一人で行かせず、正義の夢斬士たる夢月弥乃葉シェフも一緒にエクスアリアへ行かせればよかったのだな!』ってさ!」


「なんでお父様が、アンタにそんなことを言う必要があるのよ!」



 ――まったく! いつもの弥乃葉なんだから!



『弥乃葉よ。お前はなぜこのエクスアリアにいるのだ?』


「おー! ユメキリさん! 相変わらずそのキーホルダー姿、似合ってる!」


『弥乃葉よ、答えになっていないぞ』



「えーと……それはねー『おー! これが! 初代正義の夢斬士の俺様が護り続けた、遥か未来にある夢覚の地じゃなかった夢覚市! ヤバっ、俺様は感動のあまり頬が濡れてきたぜー!』だからだよッ!」



《「おい夢月! そんな事を一言も言っていない! 余計な事を話すな!」》



 ――あれ? この声は……もしかして!



「朝陽様朝陽様、あれを……」


「あっ、まずいわね」



《ガヤガヤ(アレはギルド幹部のカゲロウ様だぜ!)ガヤガヤ》

《ガヤガヤガヤガヤ(えー! あの大きい綺麗な家に住むギルド幹部様……)ガヤガヤガヤガヤ》

《ガヤガヤガヤガヤ(初めて見るギルド幹部……でも威圧感が……)ガヤガヤガヤ》



「ん、どうしたの? そんなにわたしの顔を見つめるなんて……本当に朝陽は……えへへへ」


「えっ? もしかして弥乃葉、今の声が聞こえなかったの?」


「ん? 今の声?」



 ――なんですぐ後ろにいる陰楼さんに気づかないのよ!



「もしかして『俺様の名は夢宮陰楼(ユメミヤカゲロウ)! 黒騎士の鎧にマントを纏い、剣ではなく二刀の刀を振り翳す……ん? 初代正義の夢斬……』って? あれ? 宙に浮いてる?」



「この地へ渡っても朝陽に余計な話をするな、と言ったはずだぞ!」


「えっ? 陰楼様?」


「この状況を見て、何も感じないのか? それでもお前は、朝陽と同じ刻を生きる夢斬の武士(モノノフ)か?」


「あー、陰楼様! この状況? 『我が名は、朝陽と同じ夢宮本家の夢斬士の夢月弥乃葉である、お見知り置きを!』って、離してよ!」


「あのな! はぁ……朝陽も色々、大変だな……ほらよ!」


《ガヤガヤガヤ(おいおい見たか? カゲロウ様が片腕で茶毛長髪のヒューマアリアを投げたぞ!)ガヤガヤ》



 ――うわっ、痛そー。



「イッタイナァァー! 『旦那、レディは丁重に扱うべきだぜ……それが正義の夢斬士なのさッ』だよ、分かった?』


「何を言っているんだ。第一、お前がこの地へ渡る事ができたのは、誰のおかげだ?」


「わたしは正義の夢斬――」


「またあの刻のようにぶん投げてほしいのか? お前を遊びさせる為にこの地へ渡る手筈(てはず)を整(ととの)えたのではない」



 ――えっ? 弥乃葉がエクスアリアにいるのは、陰楼さんのおかげ?



 《ガヤガヤ(ねぇ、カゲロウ様とエクスアリア族の隣にいるヒューマアリアの顔、少しカゲロウ様に似てるよね》ガヤガヤガヤ》

 《ガヤガヤガヤ(ホントだ! カゲロウ様に似てる似てる!)ガヤガヤガヤ)



 ――まずいわね、また人が集まってきたわ……。



「ふっ……、ここは俺が引き受ける! くだらぬ騒ぎを起こし、すまなかった!」



 《ガヤガヤ(聞いたか! カゲロウ様が引き受けるってよ! みんな、帰るぞ!)ガヤガヤ》



 ――あれだけ集まっていた人達が帰っていく……、ギルド幹部の陰楼さんは、一体何者なの?



「帰って行ったか……、ふっ、全く!」


「ごめんなさい、陰楼様」


「このままこの場で夢月を交えて話をしても、住人達に迷惑をかける」


「どこかで話を……フェルレト亭はどうでしょう?」


「いや、夢月を連れて行けば、あの飯場にも間違いなく迷惑がかかるはずだ……だから話の続きは、俺の家でしよう」


「分かりました」



 《ぐー! ぐるぐる! ぐー! ぐるぐる! ぐー! ぐるぐる!》



 ――そうだ……報酬を取りに行って、その後、フェルレト亭に行く予定だった……、お腹空いた……。



「とりあえず、これを渡しておく」


「これは? 鍵?」


「家の錠鍵だ。今からフェルレト支部へ行き、野暮用を済ませてくる。だから飯場で飯を食ってから、俺の家へ来い」


「はい、分かりました」


「じゃあ、またあとでな」



 ――行ってしまった……、鍵を渡してきたって事は、しばらく帰ってこないってことよね、なら……。



「もう、全く! 弥乃葉は弥乃葉なんだから! ほらっ」


「ごめん、でも朝陽が変わってなくて嬉しかった」


「だってまだこの世界に来てから二週間だもの、そんなにすぐには変わらないわよ」


「はぁ? にしゅ……」


「どうしたの?」


「ううん、なんでもないよ!」 


「うん、それじゃあ! 三人でフェルレト亭へご飯を食べに行きましょうか」


「ちょっと待って朝陽! お金……この世界のお金を貸して!」


「はぁ? なんで?」


「そりゃもちろん、朝陽の目の前にいるわたしは『正義の夢斬士たる夢月弥乃葉シェフだからさ!」という訳でー、朝陽さんは、何を食べたいのでしょう?」


「はっ? だからフェルレト亭に行――」


「うん! うんうんー!『お腹を空かせた私は、正義の夢斬士様の夢月弥乃葉シェフが作る! 絶品エクスアリア炒飯が食べたいなー』って、そこまで言われるなんて……嬉しいなー!」


「はあ? 勝手に決めな……って、何処に食材が売られているのか、アンタ分かってる?」


「そりゃーもちろんさ! あっはっはー!」



 ――あっはっはー、じゃないのよ! 全く弥乃葉は、弥乃葉なんだから!



「はあ……はい、これで足りるでしょ」


「毎度ありー! じゃあ行きましょー!」



 ◇しばらく後◇



 ――ふぅ、疲れた……、一体どれだけ買えば気が済むのよ!



「朝陽様。むざめしーではユメギリ士は、朝陽様の様な方ばかりではないのですか?」


「えっ? どうして?」


「シャリアは朝陽様が剣を抜くところしか見た事がなかったので……」


「そう言われてみれば、確かにそうだね」


「はい、こちらにいるやのはーさんも身振り素振りで、何を言っているのかぐらいは予想はつくのですが……、この人、本当にユメギリ士なのかな……と考えておりまして」



 ――私と一緒に過ごしたシャリアさんからすれば、そう考えるのが普通だよね。



「ごめんね……でもこの子、任務の時は真面目だからさ」


「そ、そうなのですか?」


「でもまぁ、目の前にいる姿からは想像つかないかもね」



 ――そう……、任務の時はある意味で普通なんだけどね。



「さっきから、自分の事を『しゃりあー』と言ってるエルフさんと朝陽は、わたしの知らない言葉で話してるみたいだけどさー、もしかしてわたしの話をしてるの?」


「そう、アンタの話」


「ふーん、でもわたしの事をなんて言ってるのかも、わたしは知らないけどねー」


「別にアンタの悪口を言ってるわけじゃないから」


「そんなこと分かってるよ、でも『嬢ちゃん達、積もる話はまず腹ごしらえをしてからにしようか……』だからさ!」


「はい、はい」



「……まぁ、いいや。あっ! 陰楼の家に勿論、火はあるよね?」


「はあ? なに作ろうとしてんのよ?」


「そりゃもちろん『正義の夢斬士たる夢月弥乃葉シェフ、エクスアリアで作る最初のメニューは……』……」


「ん? 最初のメニュー?」



「夢月弥乃葉シェフ特製、絶品エクスアリア炒飯だ!」



 ――なんで炒飯になるのよ! 全く弥乃葉は、弥乃葉なんだから!



 第17話 


 三人目の明日を救う者は、正義の夢斬士 完。


 第18話へつづく!

*2026年4月30日(木) 再構成改訂を行いました。

*2026年9月13日(日) 一部内容の改訂を行いました。

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