第15話
第15話
とある冒険者パーティーの夢喰:3
【リクル夢領域〈むりょういき〉:フェルレト域 夢刻】
『朝陽よ、ここが冒険者リクルの夢領域だ』
「あわわわ! ここがリクルさんのむりょういきーですか!」
『左様だ、シャリアよ。ここが冒険者リクルの夢領域、明日を奪う力を持つ夢喰の餌場だ』
「朝陽様、ユメキリ様、フェルレトの街と別の場所が混ざっているのはどういうことなのでしょう?」
――フェルレトの街と迷宮っぽい場所が混ざっているのは・……。
「それはね、リクルさんの日常がフェルレトの街と北の迷宮にあるからかな」
「リクルさんの日常ですか……、これからどこへ向かうのですか?」
――リクルさんの夢喰がいる場所は恐らく……。
「今から向かうのは、この夢領域の最奥部だよ」
「夢領域の最奥部ですか?」
「うん、そこにリクルさんの明日を奪おうとしている夢喰がいるはず」
「分かりました……でもシャリアは初めてむりょういきーに入るので、何か注意せねばならない事はありますか?」
「注意しないといけないこと? この夢領域にいる者には、絶対に声をかけちゃダメってことかな」
「それはなぜですか?」
「もし勝手に夢の中へ自分以外の者が侵入してきたら、シャリアさんならどうする?」
「それはもちろん! 緑光の聖なる力でハイ……あっ! もしかして」
「そう、シャリアさんが考えてる通りだよ」
「朝陽様とシャリアは、リクルさんの明日を救うためにいます! でもその事をリクルさんは知らない、だから声をかけてはいけないのですね?」
『左様だ、シャリアよ。我達は冒険者リクルではない、即ち、この夢領域内では異物だ』
「異物になる……、分かりました! 朝陽様、ユメキリ様」
――分かったとしても、声をかけたくなる……、シャリアさんの性格なら尚更……。
◇しばらく後◇
――街の広さもほぼ同じだなんて! 何か手掛かりは……。
「朝陽様、むりょういきーの者達に声をかけてしまったら、一体どうなるのですか?」
「もし声をかけてしまったら、夢鬼理が作った白い霧の入口が消滅する、二度と――」
「あわわ! それはつまり……あわわ」
『朝陽よ。シャリアを怖がらせてどうするのだ』
「別にそんなつもりで言った訳じゃないよ」
『それなら良いが、シャリアよ』
「なんでしょうか?」
『我達とこの夢領域の者達にある違いはなんだ?』
「違いですか? ……あっ! 朝陽様とシャリアには、色があるのにこの者達は色がない!」
『左様だ。白と黒の色がついた者、それがこの夢領域の住人だ』
「なるほど……分かりました! ありがとうございますユメキリ様」
――『ごめん、ユメキリ。ありがとね』
『礼には及ばん……ん?』
「どうしたの?」
『少し遥か先の前方にいる者、数刻日前に見たリクルの姿ではないか?』
――あの大剣と兜と鎧……数刻日前、市場で見たリクルさんだ、南に向かってる……。
「リクルさんに気づかれないように後を追ってみよう!」
「分かりました、朝陽様」
◇リクル夢領域 拠点北迷宮域・外◇
《「セロツ、ミリュテ。今帰ったぞ、あれ誰もいないな」》
――あの大きな格安拠点の屋敷へ入って行った。
「ユメキリ、夢斬士刀をお願い」
『朝陽よ、了解した』
【夢宮朝陽が夢鬼理夢斬士刀を装備しました!】
――夢喰が生み出す夢領域の魔物はこれで十分。
「私が先に行くから、シャリアさんは後方支援をお願い」
「分かりました、朝陽様」
『朝陽よ、リクルの夢領域最深域まであと少しの様だ、最深域までの道順を表示する』
「ありがとう」
◇リクル夢領域 拠点北迷宮域・内◇
「朝陽様、大分深いところまで迷宮を彷徨った感じがしますね」
「そうだね、もう少しで最深い――」
「朝陽様、どうかされましたか?」
――ん? あれはもしかして……。
《『ねぇー、誰かいないのー? 助けてぇぇ、助けてぇぇ、誰か助けて……』》
「朝陽様! あそこに誰かいます、助けないと!」
――まっ、まずい! シャリアさんを止めないと!
「ぼうけ――」
《『ありがとう、やっと見つけまし――』》
「はいはい、騙そうとしてもダメ! 夢鬼理想明斬!」
《「ク――! あとも――少しだ……」》
【夢宮朝陽が夢領域の魔物を討滅しました!】
「あわわ、……もしかして夢喰の罠?」
「夢喰はね、私達に斬られない方法を常に考えているの」
「ユメギリ士に斬られない方法を?」
「そう、今みたいに傷を負った冒険者に化けたりもしてる」
「傷を負った冒険者の様に振る舞う? なぜ夢喰はその様なことをするのですか?」
「えーとね……シャリアさんが獲物を狩れない時、シャリアさんならどうする?」
「獲物を捕まえる為の罠を張ります……ん? もしかして朝陽様⁈」
「そう! 今のが夢斬士に斬られない方法の一つだったの」
「なるほど……、助けていただきありがとうございます、朝陽様!」
「うんうん。シャリアさんなら夢喰の罠もすぐに分かる様になるから頑張ろうね!」
「はい、朝陽様!」
――さて先に進もう、あと少しで最深域付近につきそうだし。
◇リクル夢領域 最深域周辺◇
《「おりゃァァァァァァ! 次だ次!」》
「ん? この声、リクルさん?」
《「おりゃァァァァァァ! どこからでも来い! おいミリュテ、あと何体いるんだ……、ミリュテがいねぇ、セロツもいねぇし、一体どこへ行った?》
――ユメキリ! リクルさんの殺意の邪想の侵蝕は?
『殺意の邪想の侵蝕度が、かなり進行している、急ぐのだ朝陽よ!』
「ありがとう! シャリアさん、行くよ!」
「はい、朝陽様!」
◇リクル夢領域 最深域◇
「はははははは! なんという、なんという素晴らしい力なんだ! この力は最強、この力は最強だァッ! 《『グワァハァッハァッアァ!』》」
「チッ! 一足遅かった!」
――『リクルさんはまだ救える?』
『左様、まだ間に合う。朝陽よ、冒険者リクルの明日を救うか?』
「当たり前でしょ! ここまで来て、リクルさんの明日を救わないなんて、夢斬士としてありえない!」
『左様、それが明日を救う力を持つ者。冒険者リクルの解析は完了している』
「ありがとう、ユメキリ」
――明日を救う力を持つ者として、ここで死ぬ訳にはいかない!
「あはははは! 気持ちいいなこの最強の力は! 誰かで試し殺めてぇなあ! あーそうだー、そこの《『夢覚市の夢斬士、夢宮朝陽とエルフ族のシャリア・エクス・ア・ロッテ!』》出てこいよ、殺めてヤルヨォォ!」
――兜と鎧が鮮血色、胸部から眼が……、しかも夢喰の型式名も……力に溺れ呑まれた腑抜けが!
「私達を試し殺めるねぇ……、腑抜けのアンタが使う、その最強の力で夢斬士を斬れるのかしらねぇ! ハァッ!」
「本当に目障りだなぁー、《『ここは夢覚市ではない! それとー、この者が持つ明日は美味い美味い!』》遅い!」
――くっ! 大剣相手に夢斬士刀は流石に部が悪すぎか。
【夢宮朝陽が夢鬼理滅想刀を装備しました!】
「武器を変えても無駄ダァ!《『その明日を救う力は使えないようにしたはずだぞ!』》オラァァァ!」
――この滅想刀なら大剣の斬撃に耐えられる!
「あらそう? この前、野盗ごとアンタ達を滅したあの時のこの刀とアンタが今、目にしているこの刀は違う、ハァッ!夢鬼理滅想斬!」
『夢鬼理想発滅動! 夢鬼理滅想! 夢鬼理滅想! 夢鬼理想滅! 夢鬼理想滅!』
「朝陽様、その剣を握って大丈夫なのですか?」
「うん、大丈夫!」
――今の私には、一緒に戦ってくれるシャリアさんがいる! だから必ずリクルさんの明日を救ってみせる!
第15話
とある冒険者パーティーの夢喰:3 完。
第16話へつづく!
*2026年4月28日(火) 内容の再構成改訂を行いました。
*2026年9月11日(金) 一部内容の改訂を行いました。




