第14話
第14話
とある冒険者パーティーの夢喰:2
【フェルレトの街 南郊外域周辺 昼刻】
――この街にも慣れてきたけど、ミリュテさん達の拠点が街の南って……、この街は広すぎるのよ!
《ガヤガヤ(おいおい聞いたか? 最近出没する異国の言葉を喋る黒い変な布服を着た茶毛の女がこの街に出没するって)ガヤガヤ》
《ガヤガヤ(それってあのヒューマアリアの女じゃないのか? ほらオメェの言ってる黒い変な黒い布服を着てるじゃないか》
《ガヤガヤ(コラ! でも確かに特徴が似ているな……、でもそいつはあの尖った耳のエクスアリア族は連れてないみたいだぞ》ガヤガヤ》
――ふーん、この世界にも夢斬士非戦闘服みたいな服を着ているヒューマアリアの女性がいるんだ……、ん? 異国の言葉を話す茶毛の女? ……ま、まさかね。
「アサヒさんは有名人ですね」
「えっ? でもこの街に来てから数刻日ぐらいなのに……」
「その格好とシャリアさんを連れて街を歩いていれば、十分目立ちますよ」
「なるほどね、だから視線を感じるのかー」
――私達、そんなに目立つのかな?
「でも、むざめしーのユメギリ士の方々は、この世界へ容易く来られるのですか?」
「えっ? もしこの世界に夢斬達が簡単に来ることができるなら、この世界は夢斬士達だらけになってるよ」
「あっ! 確かにそうですね、朝陽様」
――そのヒューマアリアの茶毛の女も気になる……、でも今は明日を救う夢斬士としてやるべきことをやるだけ!
《ガヤガヤ(SからDのギルド依頼とは別にいつの間にかトクなんだっけな?)ガヤガヤ》
――特夢位ランクがいつの間にかできていたの?! ……となると、この世界に陰楼さんはいつからいたの……謎すぎるわね。
《ガヤガヤ(やっぱりフェルレト亭のあのエク牛の乳から作られたあの冷たいあの食べ物、いつたべても美味すぎてたまらんなー)ガヤガヤ》
《ガヤガヤ(その気持ち分かるぜ! 北の迷宮で一仕事からのフェルレト亭で美味い飯を食って、あれを食べると疲れが飛ぶよな!)ガヤガヤ》
――フェルレト亭のバニラアイス……美味しかったなー、あのメニューの中にカレーライスもあるなんて……、どの世界でも地球と同じ料理の発想を考える人がいるんだろうな……。
◇十数刻分後◇
【ミリュテのパーティー拠点外 13回目の昼真刻】
「お二人共、拠点に着きましたよ!」
「やっと着いた……」
「あわわ、人混みが……」
「すみません。フェルレトの南しか格安の拠点が空いていなかったんです」
――こ、これが格安の拠点だと言うの? 大きい屋敷だし、格安な拠点に重そうな銀扉なんて、普通付かないでしょ!
「とりあえず中へどうぞ!」
「お邪魔します」
――広っ! 外も中も広くて綺麗だし、これが格安拠点なの……。
《「リクル……、あれっ? ミリュテ、お帰り」》
――この人がセロツさんか……数日前に見た時と同じ人だ。
「ただいま帰りました」
「どうだった? 特夢位の依頼を出すことができたのかい?」
「はい! こちらのお二人方をお連れしました!」
「えっ? 珍しい黒布服のヒューマアリアの女性とエクスアリア族の女性……、夢の魔物を狩れるギルドメンバーの名前は、確かギルド幹部の方ではなかったかな……女性二人、か……」
――まっ、それが普通の反応だよね。
「はじめまして、セロツさん」
「ええ、お名前は?」
「私はエクスアルディアギルド冒険者、特夢位の夢宮朝陽です、こちらは……」
「私も朝陽様と同じく、エクスアルディアギルド冒険者、とくむいーのシャリア・エクス・ア・ロッテです!」
「お二人が今見せてくれた冒険者証……、それは正しくギルドの冒険者証、疑ってすみません」
「大丈夫ですよ、セロツさん。リクルさんの状態については、ミリュテさんから大体聞きました」
「ならリクルは助かるのか?」
「ええ、私達はリクルさんを助けるために来たのです」
「なるほど、リクルを助けるため……、その言葉を信じよう」
「ありがとうございます」
「ミリュテ、お二人を地下室へご案内して」
「分かりました。ではお二人方、こちらへ」
――また重そうな扉ね……、この先が地下室か。
◇地下階段◇
――なんで扉を開けたらすぐに地下室じゃなくて地下階段なのよ! ミリュテさんが聖なる力で照らしてくれてるけど、奥が暗くて見えない!
「あのーミリュテさん」
「なんでしょうか?」
「私達はフェルレトの街に来たばかりだからまだよく分からないけど、北の迷宮はどこにあるの?」
「えっ、街の東門から抜けて二十数刻分程、北に歩いた先に、北の迷宮はありますね」
――東門から二十数分、か……意外と近いわね。
「ありがとう。数刻日前に迷宮で休んでから、リクルさんは気分が悪くなったのですよね?」
「そうです。ワタシ達はヒューマアリア人の冒険者ですし、日々北の迷宮等に潜ったり、ギルド依頼を遂行したり、迷宮に現れる宝を集めて換金する、だから迷宮に潜る刻は途中で休憩しないと」
――確かに……、迷宮の中が常に安全ってわけでもないしね。
「ありがとう、リクルさんはいつも前衛で魔物を狩るの?」
「そうです、ワタシは後方からの二人の支援で、セロツは誘導とリクルの支援、リクルは前衛で大剣を奮い魔物を狩る……アサヒさん、それが何か関係あるのですか?」
――何か関係あるのか、か……。
「リクルさんがミリュテさん達に対して放った、『雑魚だから殺めてやる!』という言葉、リクルさんから言われた事が今まである?」
「リクルがそんな言葉をワタシ達に放ったことなど一度もありません! あれっ、もしかして?」
「そう、それは恐らく、リクルさんの本心じゃないはずよ」
「リクルの本心じゃない……、夢の魔物……、夢の魔物を討伐する特夢位ランクなんて、存在しない魔物とただの御飾りのランク、そんな風に考えていました……」
――確かに夢の中に現れる化け物は所詮夢の中だけの存在……、でもそれが、明日を奪う力を持つ夢喰の仕業だと、普通は考えないでしょうね。
「ワタシは聖なる力使いになるために、エクスアルディア王国にある聖法学院で学んできました」
――エクスアルディア王国にある聖法学院? やっぱりファンタジーな現実世界にも魔法学院があるのね。
「でも殺意の邪想なんていう能力があるなんて、ワタシは未だに信じられません!」
――殺意の邪想は、本来ならこの世界にあるはずのない能力だもの、すぐには信じられないよね。
「でもその目で自分が知らない能力を見てしまった……」
「はい、だからどうすれば良いのか分からなくなってしまって……」
「なるほど……、ではミリュテさんが聖なる力を初めて使った時、感じたことはなに?」
「えっ、それは勿論、『すごい! 私にも聖なる力が!』……ですが、あれっ? まさかリクルは!」
「リクルさんが北の迷宮で休んだ時、その時に見た夢が、北の迷宮の中で魔物を倒す夢、だったのかも」
「そんな事が………………………、すみません、行きましょう」
――そんな簡単に言われてもって感じよね、この長い階段みたいに……。
「もしかして夢の中の迷宮で、リクルが魔物を倒す時の達成感を夢の魔物がリクルに見せつづける、ということですか?」
「そう。夢の中じゃない迷宮の中でリクルさんが魔物を倒す、その後迷宮内で休む時、夢の魔物がリクルさんの夢の中でリクルさんが倒した魔物に化けて倒される、でも現れ続ける、みたいな感じです」
「……なるほど、だからリクルの能力管理を見た時、殺意の邪想の能力が現れたのですね?」
「そう。夢の魔物を倒した時に遺す邪なる残滓、これが殺意の邪想と呼ぶモノです」
「話を聞いても未だに信じられない……、ワタシとセロツは大丈夫なのでしょうか?」
「ちょっと待ってください」
――『ユメキリ、ミリュテさんとセロツさんの解析をお願い』
『解析だな朝陽よ、了解した』
【ミリュテとセロツの夢領域ゲートを解析中………………解析完了! 侵入痕跡及び殺意の邪想無】
――『良かった、ありがとう』
『朝陽よ、礼には及ばん』
「ミリュテさんとセロツさんにも、殺意の邪想と夢の魔物が侵入した形跡は無いみたいです」
「本当ですか! それは良かった!」
「それは良かった?」
「あっ! いつも女神エクスアリア様に祈りながら眠っていて、女神エクスアリア様が夢の魔物から護ってくださったと考えたら、嬉しくてついっ」
「朝陽様。女神エクスアリア様の泉に納めたユメキリII型・主さんと女神エクスアリア様の御加護によって、ミリュテさん達を護ってくださっています!」
「シャリアさん、良かったね!」
「はい、朝陽様!」
「あの……それはどういう?」
「えーと、シャリアさんはエクスアリア族だから、かな」
「そうかー! エクスアリア族は女神エクスアリア様の泉がある霊峰樹海ヴェルハラの森を守衛する種族、でしたよね?」
「そうです! 女神エクスアリア様が選びし救世主、夢宮朝陽様の盾と剣になるべく、シャリアは一緒に旅を始めたのです!」
「そうですか……、でもアサヒさん達に特夢位の依頼をお願いして良かったです」
「こちらこそありがとう、でも……」
――ありがとうなんだけど……、階段が長すぎる!
「ミリュテさん、階段が少し長い気が……」
「あああ! すみません! お二人の話を聞いて、信頼できると判断できるまでこの階段に円環の聖なる力……、いえ、すぐに解きます」
――えっ? 私達はループする階段を降りていたの……、ていうかそんなこともできるの?!
「はい! 円環の聖なる力を解きました、こちらがリクルが眠る地下室です」
◇ミリュテ達の拠点 地下室◇
「アサヒさん、まだリクルさんは眠っているみたいです」
「そう、みたいですね」
――鎖で繋がれているのがリクルさん。
あの時は兜で見れなかったけど、金短髪の大柄、いかにも大剣を握りそうな感じの人……。
《チャリン》
「ん……物音? あぁミリュテか……《「俺に嬲り殺められる覚悟はできたかぁ! テメェ達みたいな雑魚共は殺める!まずはお前を殺めてからー! 次にセロ――」……」
「〈深眠の誘法〉……、アサヒさん!」
「えっ、今のは?」
「深眠の聖なる力です! だからしばらくリクルも起きないはずです!」
『朝陽よ、リクルの解析が完了したぞ』
――『ありがとう、結果は?』
『殺意の邪想によるリクルへの侵蝕が進行している』
――『侵蝕が進行している、か……、まだ間に合いそう?』
『左様だ。朝陽よ、リクルの夢領域へ入るか?』
――『もちろん! それが明日を救う力を持つ夢斬士だからね!』
『左様か、ならば明日を救う力である我を纏うがよい』
【夢宮朝陽がユメキリバトルスーツを装備しました】
「アサヒさん、その黒きお姿は?」
「これ? これはリクルさんの明日を救う力、かな」
「明日を救う力……」
「そう! 私がこの力を使って夢の魔物と殺意の邪想からリクルさんを解放するから、少しだけ待ってて!」
「リクルを殺意の邪想から解放してくれる力……、万が一の事があったら、ギルドへすぐに連絡しますから!」
「うん、よろしくお願いします!」
「はい! リクルを……リクルをお願いします」
「分かりました! シャリアさん、行くよ!」
「あわわ……、よし! ユメキリIVさんお願いします!」
【シャリアがユメキリIV・穹撃型を装備しました!】
「シャリアさんもアサヒさんと同じ力を感じる……、でもシャリアさんは白緑光の聖鎧……、シャリアさん、よろしくお願いします!」
「分かりました!」
――よし! 準備完了だよ! リクルさんの夢領域ゲートへ接続はできた?
『リクルの夢領域ゲートへの接続は終わっている』
――真っ白な霧が見える鬼の口のような門、十数年ぶりに見る夢鬼理の夢領域ゲート。
「朝陽様、この白い霧の様な空間に飛び込むのですか?」
「そうだよ。この世界に来てからこの方法で初めて夢領域に入るけど……、でも私達は明日を救う力を持つ者!」
「はい、朝陽様!」
「ミリュテさん、行ってくるね!」
「よろしくお願いします! お二人共、お気をつけて!」
【夢宮朝陽とシャリア・エクス・ア・ロッテがリクルの夢領域に接続を開始しました……】
――『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』、目の前にいるリクルさんの明日を救う、それがエクスアリアの夢斬士だ!
第14話
ある冒険者パーティーの夢喰:2 完。
第15話へつづく!
*2026年4月28日(火)内容の再構成改訂を行いました。
*2026年9月10日(木) 一部内容の改訂を行いました。




