第13話
とある冒険者パーティー編
第3章 エクスアルディアギルドの夢斬士
第13話
とある冒険者パーティーの夢喰:1
【エクスアルディアギルドフェルレト支部 夢斬士専用部屋 13回目の朝刻】
《チュン! チュンチュン! チュンチュン!》
――す、ずめ……鳴き声?
『朝陽よ。13日目の夢覚の刻、起きるがいい』
――も……もう朝?
「ふあぁぁー……おはよう、夢鬼理」
『おはよう、朝陽よ』
「その鈴付き刀キーホルダー姿を見るのは二週間ぶりね」
『うむ。エクスアリアへ渡ってから、我はずっとお前の仮初の髪留めになっていたからな』
「そうだね、昨日まで警戒してたしね」
『左様。この仮初のキーホルダーの姿でいられる刻は、我にとっては心休まる安全な場所、という事だ」
――確かに、向こうの世界ではその姿が普通だった……。
『それに、我の分体から生まれし夢斬ガジェットと違い、原初のガジェット概念を持つ我ならば、手の内に入る大き……ん?』
「どうしたの?」
「朝陽よ。シャリアも起きたようだ」
――シャリアさんもベットに慣れたみたい……「あわわわ、朝陽様ー! シャリアは豪華なベッドで眠った事が無いので眠れません! あわわ」って言っていたのが嘘みたいね。
「ふあわわわぁ!」
「おはよう、シャリアさん」
「シャリアよ。おはよう」
「おはようございます! 朝陽様、ユメキリ様!」
「うん、おはよう。よく眠れた?」
「はい、ようやくベッドにも慣れて、眠ることができました!」
「それは良かったね。あー、そうだ、夢鬼理」
「どうした朝陽よ。もしや夢宮コンツェルンとの通信の事か?」
「そうそう! ……やっぱり、コンツェルンにある夢斬参型との通信状態は改善しない?」
「残念だが朝陽よ。夢斬参型との通信状況は未だ変わらずだ、だが向こうが何かを送信していることだけは分かるぞ」
「何かを送信してる? なんだろうね」
「それは我には分からぬ、ただ何かを送ろうと――」
《『ねぇ! ここに――の専門家のギルドメンバーがいるって聞いた!』》
「……しているのは確かなようだ。ん? どうしたのだ、朝陽よ」
「ううん、なんでもない」
《『朝陽。俺はしばらくこの地から離れる。その間、お前が夢喰討滅依頼を受けるも良し、待つのも良しだ。ただし!討滅依頼が無き刻は、この地より生まれた最初の夢斬士として、シャリアの稽古をつけてやれ、いいな朝陽』》
――なーんて言ってきた次の日の朝にはもう居なくなってたし!
「朝陽様、どうしましょうか? また街のはずれで夜が来るまで空を眺めますか?」
「本当はシャリアさんと一緒に稽古をしたいところなんだけどね……」
――稽古をつけてやれ! って言う方は簡単……、一体どうやって稽古をつけるのよ!
《「だかーら! ここに――の魔物の専門家のギルドメンバーがいるって聞いたの!」》
――ん? 下から聞こえるような……。
「あの……朝陽様、どうかされました?」
「えっ? なんでもないよ」
「もしかして、陰楼様が言っていたシャリアへユメギリ士としての訓練について、お悩みでしたか?」
「まあそんな感じかな……夢喰討滅依頼も無いからね……」
「朝陽様、シャリアの訓練については大丈夫ですよ!」
「えっ? それってどういう意味?」
「シャリアはこの街で眠るようになってから、ユメキリIVさんが眠りの心中で訓練してくれていましたので、だから大丈夫です!」
「えっ? ユメキリIV型が教えてくれたの?」
「はい! この街に来てからユメキリIVさんが『いつでも朝陽と一緒に夢喰と戦える様に稽古をつけてあげる』って」
――ユメキリIV型がそんなことを……まっ良いか、シャリアさんの夢領域でなら安全だし。
「シャリアさんありがとね、それとユメキリIV型も」
《『シャリアが夢斬士になるための特訓だもん! 当然、当然!』》
――シャリアさんが相棒で良かったね、ユメキリIV型!
《「私達もエクスアルディアギルドに登録された冒険者なのよ! なんで特夢位ランクのギルド依頼書があるのに、依頼は受付してないのよ!」》
――ん? 今確かに特夢位ランクって聞こえた!
「シャリアさん、下に降りるよ!」
「あわわ、どうされたのですか?」
「私達初のエクスアリアでの夢喰討滅依頼かも!」
「……はい、朝陽様! 今すぐ準備します!」
【エクスアルディアギルド フェルレト支部 一階】
《「だから何回も言ってるじゃない! 夢の中に出てくる魔物! パーティーメンバーのリクルが、リクルが……」》
――あれ? この子、何処かで……、それとリクルと言う名前も何処かで聞いたような。
「事情は分かりました」
「それじ――」
「申し訳ございません、その特夢位ランクの担当冒険者は今、不在中でして……」
「分かったわ! そのギルドメンバーはいつ帰ってくるのかしら?」
――これは私達の出番だ!
「ですから……あっ、アサヒさん、おはようございます」
「おはようエリディアさん、上の階まで声が聞こえて来たからさ、もしかして特夢位ランクの依頼?」
「はい、そうですが……」
「なら私達が話を聞くよ」
「でも特夢位ランクの依頼は全てカゲロウ様が……」
「エリディアさん、私も陰楼さんと同じ夢斬士。だからその子が困っているなら、ギルド依頼は私が受けるよ」
「はい……分かりました。実はカゲロウ様からアサヒさんが、自らから依頼受諾をした場合のみ、特夢位ランクの依頼を行わせる様に、と指示を受けておりました」
「決まりね! じゃあエリディアさん、この子の案内をお願いします」
「承知いたしました、朝陽さん。ではこの特夢位ランクの依頼書の必要事項を記入して受付までお持ちください」
「うーん、よくわからない文字だけど……なんとか書いてみるわ」
――この世界の文字って、紙の上に指を少し浮かせてスマホみたいに書くんだ……、『でも文字が読めない!』
『朝陽よ、あの者が記す文字の翻訳は完了したぞ』
――ありがとうユメキリ、助かったよ。
「はい。なんとか書いてみたけど、これでいい?」
「確認しますね……、はい大丈夫です。アサヒさん、これを……」
――うんうん。これは何が起きているのか分かりやすいわね。
「ありがとう、私達はどこで話を聞けばいいのかな?」
「それでしたら、あちらの面談室をご利用ください
「うん、分かった。ミリュテさん、行きましょうか」
「はい、よろしくお願いします」
◇フェルレト支部 面談室◇
――ほほー、これは広々とした面談室ね。
「ではミリュテさん、そちらの椅子へお座りください」
「この椅子ですか?」
「ええ、お座りください」
「分かりました」
――さあ、夢宮朝陽のエクスアルディアギルドの夢斬士として、初めての聞き取りだ!
「まず、自己紹介から。私はエクスアルディアギルド特夢位冒険者の夢斬士、夢宮朝陽です」
「どうも、ミリュテです」
「私もエクスアルディアギルド特務位冒険者のユメギリ士、シャリア・エクス・ア・ロッテです」
「はぁ、エクスアリア族の方ですか?」
「あわわ、シャリアがこんな場所にいるのは珍しい、ですよね」
「いえいえとんでもない! ワタシは女神エクスアリア様が創りし聖なる力の使い手として、聖なる力を学んだ身です、エクスアリア族の方とお会いできて光栄です!」
――やっぱりエクスアリア族はこの世界の象徴みたいな種族なんだ。
「では、私は反対側の席に……」
「はい、よろしくお願いします!」
「ではミリュテさん、まずはリクルさんの異変に気づいた二、三刻日前の話をお伺いしましょう」
「はい、でもその前に、よっと」
――脱いだ魔法使いの帽子の下は、綺麗な翡翠の髪、っと……。
「では改めて……。リクルの様子がおかしい事に気が付いたのは、そちらにも書きましたが、二、三刻日前に北の迷宮からの帰り道のことでした」
「あの時、すれ違ったのは、やっぱりミリュテさん達だったのね」
「すれ違った、すれ違った……、あー! 数刻日前にすれ違った、変な黒い布服を着ていたヒューマアリアの人だ!」
「あははは……、変な服、ね……」
――やっぱり変なのかな? 確かに夢斬士非戦闘服は、フード付きパーカージャケットみたいな服だし……。
「ご、ごめんなさい! リクルを助けてくれるかもしれない人になんてことを!」
「いえいえー、大丈夫ですよ。話の続きをお願いします」
「はい……あの後、私達は結局、ギルドにも寄らず、フェルレト亭にも寄らず、リクルを休ませる為に拠点へ帰りました」
「なるほど、そのまま拠点へ帰ったのですね?」
――だからフェルレト支部にも、フェルレト亭にもいなかったのね。
「そうです、でも拠点に戻った直後、突然リクルが気を失ったのです」
「リクルさんが気を失った?」
「はい、ワタシは聖なる力使いなので、パーティメンバーの能力管理を視る事ができる聖なる力も使えます」
「なるほどー能力管理を視れる、ですか……、ミリュテさんは、その聖なる力でリクルさんの能力を見たのですか?」
「はい、それが聖なる力使いの私がやるべき仕事なのです」
「やるべき仕事ですか……」
「はい、だから迷宮から帰ると能力管理の聖なる力で、二人の能力をいつも確認しているんです」
「いつも確認ですか……、リクルさんが倒れた日、リクルさんの能力管理で、何か異常はありましたか?」
「えっ? そうですね……、殺意の、殺意の邪想と言う言葉をアサヒさん達は知っていますか?」
「はい、勿論です。それ以外に何か異常は?」
「それ以外の異常………」
「そうですねー、例えば、貴方達に対して殺の言葉を発するとか」
「ワタシ達へ殺の言葉……、そうです! しばらくして目覚めたリクルにワタシ達が声をかけたら、リクルが突然怒りだして、『お前ら雑魚は、俺様が殺めてやるよ! 覚悟しろ!』って……」
――間違いなく夢喰、あと殺意の邪想……、この目で直接、リクルさんを見て判断しないといけないわね。
「リクルさんは今、どこに?」
「リクルなら今、拠点の地下牢にいます」
「地下牢か……では今から行きましょうか」
「依頼を受けてくれるのですか?」
「もちろんです、それが夢斬士の仕事ですから! それじゃ行きましょうか」
「はい、よろしくお願いします」
「はい、朝陽様!」
――SNS夢鬼理ネットワークサービス以外で夢喰討滅を行うのは久しぶりね。
でも『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』だよ、夢宮朝陽!
第13話 とある冒険者パーティーの夢喰:1 完。
第14話へつづく!
*2026年4月28日(火) 内容の再構成改訂を行いました。
*2026年9月8日(火) 一部内容の改訂を行いました。




