第11話
第11話 フェルレトの街と雪山の貮型:後編
【フェルレトの街:宿屋 8回目の夕夜刻】
「はぁ? ユメなんだって? 要はお前ら金がねぇって事だろ! なら帰ってくれ!」
――はぁ? お金ならユメペイにちゃんと入ってるわよ!
「これが見えないの?! これはおか――」
「嬢ちゃんさ、その怪しい光る板は金じゃねぇから! 帰れ帰れ!」
「えっ、ちょっとー!」
「金だよ金! 泊まりたきゃ、金を持ってこい!」
――お金ならあるわよ! 全くもう!
◇宿屋前◇
「はぁ、ユメペイが使えないなんて……」
「あわわ、困りましたね。エクスアリア族は、お金とは無縁な環境で暮らす民でしたので……すみません、朝陽様」
『朝陽よ、ここは夢覚市ではないのだぞ。YuMePay!を使う仕組みが無いのに、この街の商人がどう使うのだ?』
「確かにそうなんだけど……、はぁ……どうしようね」
「朝陽様。シャリア達を追いかけて来た、あの野盗が差し出した金品を頂いた方が、良かっ――」
「あの盗賊達が渡そうとして来た金品は、他の人から奪った物も入っているの、だからあれを受け取ってはダメなの」
「そうですね。でもお金が無い以上、どうしましょう?」
「どうしようね……はぁ」
――まさかファンタジーな現実世界でキャッシュレス決済が使えないなんて……。
煉瓦で作られた家……、ジョッキのマークのお店もあるっぽいし、お店の方から良い匂いもしてきたし……、はぁお腹空いてきたな……。
「シャリアさん、今日も野営するから、外へ出ましょ」
「良いのですか? 街を歩かなくて」
「お金がないからね、この街にいても仕方ないよ」
◇フェルレトの街 東 市場付近◇
《「おい、リクル! どうしたんだよ!」》
――リクルって呼ばれた人……、大きな剣と鎧と兜を被る強そうな冒険者っぽい感じね。
《「ごめんセロツ、ミリュテ。あの迷宮で休んでからなんか変な気分なんだ……」》
――セロツって呼ばれた人……、片手剣と盾に鎧系の冒険者っぽいわね。
《「大丈夫なのリクル? とりあえずギルドに寄って報酬貰ってフェルレト亭に行ってご飯食べようよ!」》
――ミリュテって子は、魔法使い杖とファンタジーの魔法使いが着るようなローブを羽織ってるし……、こういうのを確か……冒険者パーティー? って言うのよねー。
《「ごめんな、ありがとう。セロツ、ミュリテ……」》
――ギルドと冒険者パーティーか……、でも私達は冒険をするために、明日を救う為の旅を始めた訳じゃないし。
「あのー朝陽様、これを見てください!」
――これって言われても……文字が読めない!
「ユメキリ、この板に書いてある文字の翻訳はできそう?」
『この掲示板に書かれた文字か? 朝陽よ、了解した』
【エクスアルディア文字を翻訳中…………エクスアルディア文字の翻訳が完了しました!】
――えーと、なになに……。
[来たれ! 魔物討伐者!]
この画に記されし魔物を倒した暁には、討伐報酬を支払おう! 詳しくは、エクスアルディア王国直属エクスアルディアギルド フェルレト支部 冒険者管理部まで!
「朝陽様、このエクスアルディアという国の話を、アイリア様から遥か前に聞いた記憶があります!」
「そうなの? このエクスアルディア王国は、どこにあるの?」
「申し上げにくいのですが……、エクスアルディアは、霊峰樹海ヴェルハラの森から、遙か先の西にあるヒューマアリア達が暮らす王国らしいのです」
「えっ? 遙か先の西?! じゃあその王国は私達がいる場所の反対側にあるのかな」
「はい、そうなりますね」
「まぁーしゃあない、か。もしかしたら宿に泊まれるお金が稼げるかもしれないし、ここへ行ってみるか……」
◇エクスアルディアギルド フェルレト支部◇
《カララン カララン》
「ほほー、初めて見ここが冒険者ギルドなんだ」
――いろんな装備をした人達が沢山いるし、みんな強そうね。
《ガヤガヤ(ゴブリンの群を追い払う依頼は何回やっても疲れるなー!)ガヤガヤ》
《ガヤガヤ(そりゃ、数十いるゴブリンの群れを追い払う依頼は大変だろ? 自分からやりたがる奴なんていないだろ!)ガヤガヤ》
――やっぱりゴブリンもいるんだ。もしゴブリンの夢喰がいたら、やっぱり群れなのかな。
《ガヤガヤ(最近よー、北の迷宮が夢の中で出てくると、いきなり目覚めることが増えたよなー)ガヤガヤ》
《ガヤガヤ(お前もか! なんか不思議だよなー)ガヤガヤ》
――北の迷宮……さっきの三人組、ギルドに行くって言っていたのに来てないみたいね。
「ふうん、いろんな怪物の討伐依頼?みたいな貼り紙があるけど……ん? これは!」
――これはもしかして日本語と漢字? [特夢位:夢の魔物]……、なんで日本語のギルド討滅依頼書がこんな場所にあるの?
《カララン! カララン! 「ふわぁぁー眠い」》
――眼鏡が似合う紺色の髪とスラッとした美人な女性……、あっ、カウンターの中に入った……、もしかして受付係の人かな。
「あらー? 青い線光の黒い布服を着た見慣れないヒューマアリア人の女性、騎士の軽鎧を纏うエクスアリア族? ……珍しいですね」
――えっ? 夢斬士非戦闘服ってそんな珍しいの?
「えーと、そちらの女性はエクスアリア人の女性の方ですね。そちらの女性はえーとヒューマ――」
「違います! 私は日本――」
「はい、そうです! 私は霊峰樹海ヴェルハラの森にあるヴェルレストの村から来た、エクスアリア族のシャリア・エクス・ア・ロッテです」
「やっぱり! ではそちらの方は?」
「こちらの方は、私が近衛を務める旅するヒューマアリア人の女性のアサヒ・ユメミヤ様です!」
「アサヒ? ユメミヤ? アサヒは聞いたことがありませんがユメミヤ? まっ、偶然でしょ」
――えっ、偶然? もしかしてタケミツもここに来たのかな?
「初めまして、アサヒさんとシャリアさん。エクスアルディア王国直轄エクスアルディアギルドフェルレト支部へようこそ」
「どうも夢宮朝陽です、よろしく」
「シャリアです! よろしくお願いします」
「どうも、私は当ギルドの冒険者管理部所属、現在はフェルレト支部で受付を務めるエリディア・ヒューラです」
――冒険者管理部? さっきの掲示板に書いてあった名前だ。
《「引き継ぎは終わり、あとはよろしく、エリディア」》
「分かりました、また明日ね」
《カララン! カララン!》
「うん。今日もあの人のおかげで、特夢位の依頼は完了してる、流石ね」
――あの日本語で書かれたギルド依頼書、この人なら何か知ってるかも。
「あの……エリディアさん、その特夢位というのは……」
「あっ、ごめんなさい、アサヒさん。あなたには関係ないことですので」
――そう簡単には教えてもらえない、か……。
「それよりも、お二人はこんな遅い夜刻になぜ当ギルド支部の扉を開けたのでしょう?」
「それはですね……冒険者登録しようかなーなんて」
「そうですか。でもこの夜刻帯は、成果報酬を貰う冒険者が多くて、冒険者登録を希望される方は、あまりいないのですが……」
「えっ……えーとですね、話は長くなるのですが……」
《『おい、エリディア! さっきユメミヤという言葉が聞こえた気がしたぞ! その女はまだいるか?』》
「えっ? はい、まだ目の前にいらっしゃいますが……」
《『そうか、ならば今からそちらへ行こうか……、ようやくユメミヤ・アサヒとご対面できるのだから!』》
――えっ、なんで? ようやくご対面? ……奥の部屋から出てきたし……。
「ほー。お前が夢宮朝陽か……、俺を女にしたような夢斬の武士だな」
――黒騎士の鎧とマントと二本の刀……、ヴァンパイアハンター? しかも私に顔が似てる……、もしかして!
【夢宮朝陽が夢鬼理夢斬士刀を装備しました!】
《ガヤガヤ(ヒューマアリアの女が手から剣を取り出した剣を取り出した……)ガヤガヤ)》
「貴様! なぜ私の名前を知っている! もしかして――」
「待て! ユメミヤアサヒ! この状況を見ろ! ここにいる者の前でその力を使うな! お前の目の前にいるエリディアも怖がっている、早く刀をしまえ!」
「貴様に質問しているのはこっちよ!」
「全く、本当にどうしようもない女だな……、『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……』、ユメミヤの名を持つお前なら当然知っているだろ?」
――なぜ……エクスアリアにいる人間が夢宮の掟を知っているのよ!
【夢宮朝陽が夢鬼理夢斬士刀を格納しました!】
「ふっ、なぜ夢宮の掟をこの地の者が知っているのだ、と言いたそうだな」
「当たり前だ! その言葉は、私が生まれた家の掟だからよ! 貴様は一体……何者なんだ!」
「ふっ。お前が今、俺達に刃を向けた刀は、想い叶えしだった刻想器の力だろ?」
――はっ? なんでユメキリが刻想器って知っているのよ!
「ふっ。俺の名は、お前の生きる刻に存在する夢覚の地から、遙か数百年の刻に存在する夢覚の地で、生を受けた……」
――私が生きる時代から数百年前にある夢覚市で生まれた?
「夢宮家で、始まりの夢斬の武士として生きている夢宮陰楼だ」
――夢宮陰楼……、私のご先祖様? というよりもなんでエクスアリアに夢宮のご先祖様がいるのよ!
「エリディア! 朝陽と話をする、あとを頼むぞ」
「はい、分かりました。カゲロウ様」
「うむ。……そこのエクスアリア族の嬢ちゃんも一緒に来るがよい」
「はい、分かりました」
――本当にこの人が私のご先祖様だなんて……、簡単に信じることはできないわ!
第11話 フェルレトの街と雪山の貮型:後編 完。
第12話へつづく!
お読みいただきありがとうございました!
*2026年4月25日(土) 内容の再構成改訂を行いました。
**2026年9月2日(水) 一部内容の改訂を行いました。




