第10話
第10話 フェルレトの街と雪山の貮型 前編
【東エクスアリア草原 7.5回目の真深夜刻】
――あれから半日以上歩いた気がするけど……、流石に足が痛い……、ん? あれは? 小山の中にあるほら穴?
「シャリアさん、ユメキリ! 今日はここまでにして、あのほら穴っぽい場所で休みましょうか」
「分かりました、朝陽様」
◇東エクスアリア草原 ほら穴前◇
「うん、入口も広くて、コウモリっぽいのもいなさそうだし……、ユメキリ、野営設備をお願い!」
『朝陽よ、了解した』
【夢鬼理ガジェットから野営設備を召喚しました!】
「シャリアさん、設営するのを手伝って」
「あわわ、シャリアはこれを見るのが初めてなのですが……、何をお手伝いすれば良いのでしょう……」
「大丈夫、私が教えてあげるから」
「分かりました、朝陽様」
◇しばらく後……◇
「あわわ……これはあの時見た小さな家……」
「あーこれはね、テントという道具だよ」
「てんとー? なんですかそれは?」
――てんとー? やっぱりシャリアさんには、理解するのが難しいかな……。
「シャリアさん。このテントの中に入って眠ると外からの寒さを凌げるのよ」
「そうなのですね……、エクスアリア族が村の外で眠る際は、森の木の上で眠っておりましたので……」
「えっ? 木の上? それでシャリアさん達は疲れが取れていたの?」
「あわわ! それが霊峰樹海ヴェルハラの森を守護する事が使命のエクスアリア人の日常でしたので……お恥ずかしいです」
「まあ、私達の世界は便利な道具がいっぱいあるからね」
「そ、そうなのですか? 一度見てみたいです!」
「ダメだよ、シャリアさん。あなたはこの世界の住人なんだから……、でもコンツェルンにある私の部屋だけなら大丈夫かもね」
「こんつぇーるん? はい! いつか朝陽様の世界に……」
――『こんな約束をしたらダメなのは分かっているけど……、シャリアさんが居てくれなければ今頃……』
『朝陽よ。一度、言葉に出した刻は戻らぬ……』
――『うん、分かってるよ……』
『今日は色々とあっただろう? もう休むが良い』
「うん……、おやすみなさい」
「朝陽様……おやすみなさい」
――テントの中もシュラフの中も暖かい。
◇しばらく後……◇
――ダメだ、やっぱり眠れない! シャリアさんも眠ってるし……身体を動かそう!
【東エクスアリア草原 洞窟上 真深夜刻】
――魔物もいないし、冒険者らしき人もいない……よし!
「私は!」
――夢宮朝陽!
「私は!」
――明日を救う力を持つ夢斬士!
「私は!」
――明日を救う力を持つ夢斬士、夢宮朝陽!
「今、私がいる場所は?」
――夢覚市? 違う! ここはエクスアリアだ!
「ハァ! 次!」
【夢斬士模擬戦闘用擬刀を装備しました!】
『朝陽よ、眠らぬのか?』
「うん。昨日の朝の事、まだ……少しだけ心の整理がついてないの」
『左様か……朝陽よ、ならば久しぶりに我が手合わせしてやろう』
――えっ? そうか……エクスアリアでバトルスーツが纏えるなら、夢鬼理も当然その白き侍の姿のまま、出てくることもできる、か。
「朝陽よ、どこからでも来るが良い」
「行くよ! ユメキリ!」
「朝陽よ、お前の力はなんだ?」
「私の力? ハァ!」
「そうだ、お前の力は明日を奪う力か?」
「セイ! 違う! 明日を救う力! ハァ!」
「左様、我と朝陽が交わした刻想の契りにより生まれた力は、人の明日を救い護り続ける、白き想いを纏いし明日を救う力だ」
――そうだ! いくら私が明日を救う力を持つ者だからって、日々の鍛錬を怠ったりしてはダメなんだ!
「明日を救う力を持つ者、ハァァァァァ! 力に溺れることなかれ!」
【夢鬼理にトレーニングスラッシュを放ちました!】
「朝陽よ、少しは整理はできたか?」
――『うん。ありがとう、ユメキリ』
『礼には及ばん、朝陽よ』
「……ふぅー、疲れた……」
――草原に背中を預けて見るエクスアリアの夜空……、ファンタジー世界なのに夢覚市とあんまり変わらない。
「静かね……、朝陽ルームから眺めていた月とエクスアリアの月、似たような形で綺麗……」
――数日前にいた世界は高層ビルが建ち並ぶ夢覚市、でも今いる世界は自然が広がるエクスアリア。
「こんなことになるなら、スマホぐらい持ってくれば良かったよ」
――あの時は数時間で帰るつもりだったから、今更後悔しても遅いし。
「はぁぁー、眠たくなっ……」
――むにゃむにゃ……。
《『すまぬ……朝陽。あの腑抜けタケミツを教育する為に、我『ザザッ』は、この世界を選ぶべきでは無かった』》
――風の音が聞こえる……、この声……もしかして夢斬貮型?
《『すまぬ……朝陽。腑抜けのタケミツは、既に夢喰の王と『ザザッ』した』》
――あれ? 私、草原にいるはずなのに……ん? 雪山の山頂? しかもあれは夢斬貮型だ、そこにいたのか!
《「タケミツが夢喰の王? タケミツは仮にも夢宮一族の人間よ! だから当然、夢宮の掟を知っているはずよ!》
《『すまぬ、朝陽。タケミツが我『ザザッ』を『ザザッ』、それを見ていた『ザザッ』によって、タケミツが『ザザッ』の王と『ザザッ』とした、我『ザザッ』は夢宮の『ザザッ』』》
――もしもそれが本当なら私がすべきこと、それは……。
《『朝陽、今は夢鬼理ネット『ザザッ』を完『ザザッ』、夢覚市へ帰ってはならん……』》
《「夢斬貮型は、本当に訳が分かんない事をすぐに言うよね? 誰のせいでこうなったのか分かってんの!」》
《『チッ!』》
《「舌打ちすんな! いつも言ってるでしよ!」》
『久しいな……その言葉……タケミツに空へと投げられた我『ザザッ』は、その後、夢宮の『ザザッ』が『ザザッ』が持つ力により、このエルタティアの『ザザッ』へと突き刺さり『ザザッ』年、もう我『ザザッ』の夢領域を維持する『ザザッ』が尽きそうだ……』
《「どう言うこと? ねえ! 夢斬貮型! 夢斬貮型!」》
――本当に夢斬貮型がエルタティアの山頂にあるなら、回収しないと!
《「朝……様! 朝……様、朝陽様!」》
【東エクスアリア草原 8回目の朝刻】
《チュン、チュンチュン、チュン、チュンチュン!》
――すずめ? エクスアリアにもいるのね。
「はっ! あれ? ……シャリアさん?」
「おはようございます、朝陽様! 世が明けましたよ」
「えっ? 世が明けた?」
「はい! 世が明けました!」
――そんなに眠ってたのね、昨日よりも頭の中の整理がついたような気もする。
「起こしてくれてありがとう、シャリアさん。シャリアさんは、よく眠れた?」
「はい! てんとーと温かい布のおかげでよく眠れました」
「それは良かった。じゃあシャリアさん、テントを片付けた後、出発するよ」
「はい! 朝陽様」
【エクスアリア大陸 東ヴェルハラ草原 8回目の夕刻】
「はぁ……どれだけ広いのよ、この草原は!」
「朝陽様、もう少しでまた夜が来ますね」
――あれ? 冒険者みたいな人達がみんな同じ方角を歩いてる。
「なんだか人も増えて来たし、近くに村があるのかな?」
「……だといいのですが、朝陽様」
「とりあえずシャリアさん、もう少し歩こう!」
「はい、朝陽様!」
――村だと助かるんだけどな……、村じゃ無かったら、もう少しだけ歩いて、今日も野営かな。
「ねえ、ユメキリ」
『どうした、朝陽よ。もしやあの夢で見た夢斬貮型のことか?』
「そう。私達がヴェルハラの森に転移した時や旅立つ前に、時間のずれについて話をしてくれたでしょ?」
『そうだったな、朝陽よ。前も言ったが、コンツェルンにある夢斬参型と、我との間にある通信網は辛うじて繋がっている』
――『良かった……それすらも遮断されていたら夢覚市にいつか帰る目標が消えてしまうところだった』
『朝陽よ。我達と夢覚市の間にある時は左程ズレてはいないはずだ、だから心配は無用だ』
「えっ? ユメキリは向こうの世界がいつなのか、分かるの?」
『正確な日までは解らぬ、しかし夢斬参型との通信情報によれば、夢覚市はまだ、8月のようだ』
「まだ8月かー、それを聞いて安心した。夢覚市に帰った時、向こうの世界は数年以上経っていました! なんて事を考える、とね……」
『朝陽よ。我達が向こう世界に帰る時、どれ程の月日が流れていたのかは、その時に考えればよい』
「そうだね、確かにね」
『左様、今はこのエクスアリアの世界で、朝陽がすべき事がある、そうだろう?』
「そうだね! 今はこの世界で私がするべき事をやるだけだ!」
『左様だ、朝陽よ』
――私が今するべき事は、地然街エルタティアを目指すことだ。
「朝陽様、あれを見てください! あれは?」
「あれは……外壁で囲まれた門だね」
『朝陽よ、どうやら冒険者達が入って行く先には、フェルレトと呼ばれる、東ヒューマアリア人の街があるようだ』
「東ヒューマアリア人の街……と言うことは?
『朝陽、シャリアよ。今日は宿に泊まるのも良いのではないか』
「宿か……うん! お腹も空いてきたし……決めた、行こう、シャリアさん!」
「はい、朝陽様!」
私達は近くにいた冒険者達の後を追い、東ヒューマアリアの街であるフェルレトの街へ向かった。
――あれ? 私達、お金を持っていたっけ? まぁー、私にはユメペイがある! だから大丈夫でしょ!
第10話
フェルレトの街と雪山の貮型 完。
第11話へつづく!
*2026年4月23日(木)内容の再構成改訂を行いました。
*2026年8月31日(月) 一部内容の改訂を行いました。




