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第9話

 

 第9話

 明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ



【ヴェルハラ草原 フェルレトヴェルハラ境界線 7回目の夕刻】



 夢宮朝陽……いや夢鬼理滅刀(ユメキリメットウ)の私は、目の前にいる野盗に化けた明日を奪う夢喰(ゆめぐい)を滅するために、明日を奪う左腕で私を握っている。



《『夢鬼理……滅……滅……滅殺!』》



 ――……滅殺! 滅殺! 残る獲物は8人、滅殺!



「ヒャハハハ! 夢宮のお姫様が人を殺めたぞ!」


「うるせーよ! 夢鬼理ー! 滅刀斬!」



「ヒャハハ――」



【夢喰シーフ型を1体滅しました!】



「ヒャハハ、ていうか雑魚夢喰如きが、なんでー私が夢宮のお姫様だと知っているのかしらねー? あははは! そうだーアンタ達は夢喰、だからアンタ達の明日を奪ってもいいんだよ! 夢鬼理滅刀斬!」


「あー、お前もこっ――」



【夢喰シーフ型を1体滅しました!】



『夢鬼理滅滅滅滅滅殺! 滅殺完了!』




 ――……やめろ!《ひゃははははは、私を抜いて斬ったのはお前だろ! 夢宮朝陽! あと六人!》



『夢鬼理滅……滅……滅……滅……滅殺!』



《『朝陽よ! 聞こえぬか、我の声が!』》



 ――ユメキリ? 《ひゃはははは! 私を抜いて斬ったのはお前だ! 夢宮朝陽! 侵蝕完了まであと少し』




『夢鬼理滅滅滅……滅……滅殺!』



「ヒャハハ、こっち側に来たー!」



 ――耳障りな声! 夢鬼理滅殺!



「夢鬼理滅刀斬! 夢鬼理滅刀斬! 夢鬼理滅刀斬!」



「ゆめ――」



【夢宮朝陽が夢喰シーフ型1体を滅しました!】



 ――……『ひゃははははは! あと五人……夢喰は斬る!』



『夢鬼理滅滅滅滅殺! 夢鬼理滅滅滅滅滅殺!』



 ――明日を奪う鬼は斬ってもいい! それが夢鬼理滅刀の私と夢宮の使命! ひゃははははは!



『夢鬼理滅滅滅滅滅殺!』



《『朝陽よ! ……この腑抜けが!』》



 ――腑抜け? 『マタナニカノコエガキコエテキタ! デモユメキリメットウザンデー、メッサツ! ヒャハハハ!』



『夢鬼理滅滅滅滅殺!』



【夢宮朝陽が夢喰シーフ型1体を滅しました!】



「ユメキリメットウノ、ワタシノナハ、ユ――」



《「朝陽様! それ以上はダメ! 戻れなくなる!」》



「ア? シャリア? ワタシハメットウ、ヒャハハハ!」



 ――私は明日を救う力を持つ者!《ダマレ!ユメキリメットウヲヌイタノハオマエジシンダ!》



『夢鬼理滅滅滅滅殺!』




《『朝陽! 夢宮朝陽! あなたはエクスアリアを明日を救う力を使い、明日を奪う邪なるオーガの夢喰から、明日を救い護るための旅を始めたばかりではないのですか! 今の朝陽が握るその手で握る力は、本当にエクスアリアの明日を救う力なのか!》



「エクス……アリア……の明日を救う?」



《「フッ、朝陽様……仕方ないわね! 夢殺ノ滅想穹! ハァ!」》



【シャリアが夢殺ノ滅想穹《むさつのめっそうきゅう》を放ちました!】



「ムザメシデ〜! ハーレ――」



【シャリアによる夢喰シーフ型残り四体の討滅を確認、夢領域ゲート閉鎖完了!】



《夢鬼理滅滅滅滅滅殺完了! ヒャハハハ! 夢宮のお姫様が明日を奪う力で人を殺めたぞ!》



 ――違う! 私は……私は明日を救う力を持つ夢斬士の夢宮朝陽だ!



『朝陽よ。やはりお前は、奪ってから護る事、最初から護る事の意味をやはり理解していなかった様だな』


「ユメキリ?」


『正気に戻ったか朝陽よ』


「えっ? 私は何をして……いた?」



 ――明日を奪う殺意の邪想と夢鬼理滅刀の力に呑まれてしまった、私の腑抜けが!



 『朝陽よ。夢宮家で代々受け継がれし、『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』の掟。お前の父である夢宮当代総帥は勿論、お前も夢宮一族の人間ならば必ずや教わる掟だ」



 ――明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ。



 ユメキリの明日を救う力を使う上で、お父様から最初に教えられた掟と約束。



《『朝陽。『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ……、この掟がお前自身を護り、お前が無事に明日を迎えるための道になること、これを忘れてはいけないよ』》



 ――お父様……、ごめんなさい! ……左手に赤い証。


『朝陽よ。お前は何故、このエクスアリアにいるのだ?』


「このエクスアリアにいる理由? 明日を救う力を持つ私が作ったシステムが原因で、この世界が夢喰に侵蝕され始めた責任を取るため……」


『責任か? 朝陽はその責任とやら、どの様に取るつもりなのだ?』


「それは……、この世界を夢喰から護るための仕組み、そう夢鬼理ネットワークVer.エクスアリアを作る」


『左様だ、朝陽よ。その責任を取るためには、明日を奪う事を優先してはならぬ』



【夢鬼理ガジェットに夢鬼理滅刀を格納しました!】




《「朝陽様!」》



 ――シャリアさん?



「朝陽様。エクスアリアの世界はあなたの世界ではないのです」


「私は夢覚市から来た夢宮朝陽……」



《パチーン!》



「えっ? シャリアさん?」


「シャリアが朝陽様の近衛を志願したのは、シャリアの明日を救ってくださり、その後短い刻を一緒に過ごしていく中で、このエクスアリアの世界で一人となってしまった夢宮朝陽の側にいる最初の理解する者でありたい、という想いをシャリアが抱いたからです」


「うんうん……シャリアさん、うん……ごめんね」


「だから朝陽様。もう涙を拭きましょう」


 ――シャリアさんの手、暖かい……。


 私は涙を流していたことすら気づかなかった……



「シャリアがユメキリカウンターを想昇している間、朝陽様はあの剣に握り変え、涙を流しながらも悦に浸る殺に呑まれたオーガと化した」


「うん……ごめん、ごめんね」


「シャリアは明日を救う力を持つ、朝陽様の盾を目指す者。だからこれからは、むざめしーにいたユメギリ士の夢宮朝陽ではなく、エクスアリアにいるユメギリ士の夢宮朝陽様として、エクスアリアの明日を救う旅をしませんか?」



 ――夢覚市から来た夢斬士の夢宮朝陽としてではなく、エクスアリアにいる夢斬士の夢宮朝陽として、明日を救う旅をする……か……、なんで私はエクスアリアにいるのに、夢覚市の夢斬士として無意識に行動していたんだろう……。


 

「……ありがとう、シャリアさん。あなたが側にいてくれなかったら、今頃私は見境なき明日を奪う殺戮者になっていたかもしれない」


「これから朝陽様はどうしたいのですか?」


「……私はエクスアリアを護るための仕組み、夢鬼理ネットワークVer.エクスアリアを作るための旅を続ける」


「はい、朝陽様」


「その旅が終わったら、後はシャリアさん達にこの世界の夢鬼理ネットワークVer.エクスアリアを託し、私は夢覚市へ帰る」


「はい、朝陽様」


「このエクスアリアの世界で作られた、夢鬼理ネットワークシステムは、この世界に棲み始めた明日を奪う夢喰から、エクスアリアの人達自らが明日を救い、護るための仕組みになる、それがエクスアリアの夢斬士だ!」


「はい! 今の言葉こそ、シャリアが近衛を志願した夢宮朝陽様なのです!」


「うん、ありがとう。シャリアさん」


 ――次に夢鬼理滅刀を抜く時は、明日を奪ってから護るのでなく最初から明日を護る為に握る時……。

 その時、私は明日を救う想いの力を載せた夢鬼理滅想刀(ユメキリメッソウトウ)として握る!

 


《『夢鬼理滅? 滅想滅想滅謝!』》


《『うん。こっちこそごめんね、夢鬼理滅想刀』》



 私達は再び、地然街エルタティアを目指し、東へ草道を歩き始めた。


 第9話 

 明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ 完。

 

 第10話へつづく!

お読みいただきありがとうございました。

*2026年4月20日(月) 内容の再構成改訂をしました。

*2026年8月30日(日) 一部内容の改訂を行いました。



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