第8話
第8話 異世界を廻る旅 後編
【ヴェルレストの村 7回目の朝刻】
――にしてもヴェルレストの村は広いなー、私の部屋から村長のアイリアさんの家まで、かなり距離あるし……、ん? あれは?
「あっ! 朝陽様、おはようございます!」
「朝陽殿、おはようございます」
――シャリアさんとアイリアさんが外で待ってくれてる。
「待たせたみたいでごめんね、シャリアさん、アイリアさん」
「大丈夫ですよ、朝陽様! 今から長い旅になるのですから」
「そうですよ朝陽殿。お気になさらず」
「でもアイリアさん。ヴェルハラの森から抜けた後、まずどこに向かえば良いのかな?」
「そうですね、朝陽殿……。先日刻前、朝陽様にお渡したエクスアリアの地図を見せていただけますか?」
「分かった。はい、アイリアさん」
――地図に手を翳してる、えっ? 文字が浮かんできたみたいだけど、文字が読めない!
「この印の場所は、地の聖なる力を操るスレイアアリアの民と呼ばれる者達が暮らす都。東の地然街エルタティアと呼ばれております」
「東の地然街エルタティアだね、ありがとうアイリアさん」
「いえいえ、それとこれを」
「これは、手紙?」
「そうです。エルタティアに着きましたら、この手紙を我の友であるエルタティアの長へお渡しください」
「うん、分かった」
「その手紙には朝陽殿の目的、夢喰等情報を記してありますので、我の友が読めば必ずや、朝陽殿に力を貸してくれるでしょう」
「ありがとう、アイリアさん。短い間でしたが、お世話になりました」
「こちらこそ、ありがとうございました。朝陽殿、シャリアをよろしくお願いします」
「うん、分かった!」
「女神エクスアリアの御加護が朝陽殿を導きますように……、シャリアよ! 朝陽殿の盾となるのだぞ」
「はい、アイリア様!」
「行くよ、シャリアさん!」
「はい。朝陽様!」
【エクスアリア ヴェルハラ草原 7回目の朝刻】
――さすがファンタジーな現実世界! ヴェルハラの森を抜けた先に広がるのは、緑の自然な光景! 当然だけどアスファルトもビルも無いし、旅人というか冒険者っぽい格好した人達が歩いてるし。
「朝陽様、前方からヒューマアリアの男が来ますよ」
――ほんとだ、かなり青ざめた顔してるけど、一体どうしたんだろう。
「――――! ーーーー? ーーーー!」
「え? なに? もう一回言って」
――『ユメキリ、この人はなに言ってるの?』
『朝陽よ。これはエクスアリア語とはまた異なる言葉のようだ、言語解析をするか? シャリアもユメキリIVに頼むがいい』
「分かりました。ユメキリIVさん、お願いします」
【ユメキリとユメキリIV型が東ヒューマアリア語を解析しました】
「おい! 聞いているのか? この道の遥か先で、旅人を狙った冒険者崩れの野盗が出没しているらしいんだ! そいつらは訳のわからない異国の言葉を喋りながら、命も奪ってくるらしい! アンタら二人だと危ないから、大人しく別の道を探した方がいいぜ!」
――野盗? 訳の分からない言葉?
《「ちゅ、忠告はしたからなーーー!」》
「あっ! ちょっとー! ……訳の分からない言葉を喋る命を奪う野盗ね……。まぁ大丈夫でしょ、行こう! シャリアさん」
「はい、朝陽様!」
◇数刻時間後……◇
――大分長い時間歩いた気もするけど、人の気配が少なくなってきているような気もする……。
『朝陽、シャリアよ。お前達は一体どこまで歩くつもりだ?』
「ユメキリ様。どこまで歩くとはどういうことでしょうか?」
『シャリアよ。このまま休みなく歩いて、エルタティアに着くつもりか、という意味だ』
「うん! 私達はそのつもりだけど、何かおかしい?」
『朝陽よ。我は朝陽が決めたのであれば何も言わないが……ただ気をつけてな』
――ん? ただ気をつけてな? ……ユメキリらしくない。
「ユメキリ様にとって、朝陽様は大事な方なのですね?」
『左様だ、シャリアよ。我は、幼き朝陽と約束約束したあの日から、朝陽と我は一心同体なのだ。朝陽の明日を迎える為なら我はなんでもする』
「さすがユメキリ様ですね。シャリアも朝陽様の盾として、ユメキリ様と同じぐらいの盾となれるように頑張ります!」
『うむ。ところでシャリアよ、朝陽と旅を始めたことに後悔はないのか?』
「ありません! シャリアにはユメキリIV型さん、シャリアの故郷にはユメキリII・主型さんがいます。だからヴェルレストの村の民とは離れていても、想いは繋がっているのです」
『左様か、シャリアよ』
「そうですよ! それとシャリア自らが、朝陽様の旅の近衛として同行を申し出たのですから、だから後悔はないのです!」
「シャリアさん、ありがとね」
「いえいえ朝陽様、とんでもないです!」
シャリアさんとは最悪な出会いから始まった関係だけど、一緒に旅をしてくれるなんて、心強い味方だ。
「朝陽様、前方に何か見えます! あっ、あれは!」
「え? なになに? はぁ、人通りが少なくなったのはアイツらの仕業か」
――『こんな所にまで、血の匂いが漂ってる……、ユメキリ、解析をお願い』
『数が多いな朝陽、解析開始……』
「行くよ、シャリアさん」
「はい、朝陽様」
【夢宮朝陽がユメキリバトルスーツと夢鬼理夢斬士刀を装備、前方対象の解析が完了しました】
――この野盗達を素通りできれば……、武装解除して東に進むだけ……。
「おい、オメェら! こんな所に黒い長髪の良い香りがするヒューマアリアの女と金色の耳が尖ったエクスアリア人の良い女がいるぜー! おぉーい、高そうな剣と弓もあるじゃねぇか! なぁ俺達にくれよ!」
「だから? 邪魔なんだけど」
「あっ? 《「お前は夢覚市の!』》ヒューマアリア人の女の癖に俺達に楯突こうってか? 《『なぜここにいる!」》、オメェらを殺めてやっても良いんだぜ! ヒャハハハァ!」
「……はぁ、しゃーないか」
――この野盗の声に被さっている声……、面倒くさいなー。
「マントを放りやがったぜ! さぁて……どんな《「貴様、やはり夢覚市の夢斬士」》良い女が……」
「ご名答、夢覚市からお前達を追ってくるとは考えてもいなかったでしょ? 甘いわよ!」
「あっ? 何言ってんだオメェは!《「ウルセェなァァァ!夢覚市の夢斬士は!」》オメェ、良い度胸してるなァ! ヤロウどもーやっちまえ!」
――はぁ、かなり侵食されてる。
【夢宮朝陽とシャリアが夢喰シーフ型10体と交戦を開始しました!】
――元冒険者っぽいシーフの夢喰なのに、剣捌きがなってない! 遅すぎる!
「ヒャハハハァァ! こっちの方が数が多いんだぜー! 《「いくら夢覚市の夢斬士でも勝てねぇーよ!」》早く、お前で楽しみたいぜー、興奮してきたヒャハハハァァ!」
――キモっ! でも確かに数なら向こうが有利、でも私にはシャリアさんがいる!
「シャリアさん、遠距離からお願い!」
「分かりました、朝陽様!」
「はぁ? その武器、《「夢斬士の武器を持つ異世界人だと?! オメェ、どこかで見たことあるな……、そうか! あの森にいたエルフ族とかいう女か!」》を寄越せー!」
「エルフ族? アンタ、自分で何を言っているか分かってんの?! この世界にエルフはいないでしょ!」
「そうです! エルフという謎の種族はこの世界には存在しません! あなた達が邪なるオーガに取り憑かれているのならば、シャリアと朝陽様が討滅する!」
【シャリアの夢鬼理カウンター想昇中……】
「これでもまだ私達を倒せる、とでも?」
「ここは夢覚市じゃねぇから! テメェを斬ったらテメェは消える!」
――夢喰の声が消えた、これはもう……。
「はぁ……、ついさっきまで夢喰の声だったのにね」
「ヒャハハ! 俺様達は夢喰シーフ様だぁ! 夢覚市の夢宮朝陽!」
「アンタがその声で放った、夢覚市という言葉はこの世界にはない言葉……、だからもうアンタ達は滅するしかない!」
「ヒャハハ! 俺様達は夢喰の人間様だぞ! 夢斬士の刀で人間様を斬れんのかよ!」
「それはどうかしら……ね!」
【夢宮朝陽が夢鬼理滅刀を装備しました】
「夢鬼理滅刀斬!」
「ヒャハハ! 夢斬士が人を斬っ………」
――まずは一人! ……夢鬼理滅刀が重い!
【夢宮朝陽が夢喰シーフ型1体を滅しました!】
「夢斬士が人を斬れるのか? 明日を奪うために斬るお前達と明日を護るためにお前達を斬る夢斬士は違うのよ……、夢鬼理滅刀斬!」
「ヒャハ――」」
【夢宮朝陽が夢喰シーフ型1体を滅しました!】
『夢鬼理発滅動! 夢鬼理滅……滅……殺……滅殺!』
――左手が勝手に動いてる?! 私が呑……てれ……?
『夢鬼理滅……滅……滅……殺……滅殺!』
《「朝陽様! 朝陽様ー!」》
シャ――……ヒャハハ!
第8話 異世界を廻る旅 後編 完。
第9話へつづく!
お読みいただきありがとうございました。
*2026年4月20日(月)内容の再構成改訂を行いました。
*2026年8月30日(日) 一部内容の改訂を行いました。
*2026年9月8日(月) 一部内容の改訂を行いました。




