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第12話


 第12話 遙か数百年昔の夢斬士(ゆめぎりし)



【フェルレトの街 住宅街 8回目の夜刻】



「朝陽、お前はまだ警戒しているのか?」


「勿論よ! こんなありえない話、信じられるわけないでしょ」


「ふっ、まあいい。着いたぞ」


「着いたって……ここは?」



 ――広そうな煉瓦造り(れんがづくり)の家?



「ここは俺の家だ! 二人共、早く入れ!」



 ◇夢宮陰楼の家内◇



 ――また中も広い……じゃなくて! なんでエクスアリアに家があるのよ!


『朝陽よ。陰楼が持つ刀の一刀から、白き明日を救う力を感じる、もう片方の一刀からは、それ以上の力を感じる』


「やっぱりお前の刀も口を開くのだな……、ほら、そこの卓の近くに腰掛けがあるから、そこで待ってな」



 ――これはテーブルと椅子? ……でもやっと座ることができた。



「朝陽様。あの方は朝陽様のお知り合いですか?」


「うーん……向こうは知っているみたいだけど、私は初めて会う人だよ」


《「ふっ。俺は一応、お前と同じ夢宮の名を持つ者だがな」》



 ――えっ? さっきと違う格好……、白い長羽織(ながはおり)?



「ふぅ……、やはりこれが一番、心休まるな」


 ――真正面で見ると、やっぱり私の顔に似てる。



「ん? 俺の顔に何か付いているのか?」


「いえ、……あなたは、あなたは本当にご先祖様ですか?」


「そうだ。先にも言ったがお前のその力……、それは元刻想器と契り交わし得た力、違うか?」


「なぜ、それをあなたが――」


『朝陽よ、それは我から話そう』


「よかろう。お前の名前はなんだ?」


『我の名は、かつて想いを叶えし刻想器だった夢鬼理。幼き刻の夢宮朝陽と刻想の契りを交わしたモノ』


「やはり、な。ではこの刀を見るがよい! これが俺が持つ明日を救う力だ」



 ――白き柄(つか)、長き漆黒の刀身……、刀身を漆黒を照らす白き輝きを放つ刃の刀、これも明日を救う力……。



「俺と契(ちぎ)りを交わした、想いを叶えし刻想器だったモノである刀の名は、鬼理刻(キリコク)。お前と同じだ、夢鬼理」


『陰楼よ。夢鬼理である我は我。鬼理刻は鬼理刻、想いを叶えし刻想器は刻想器、我は鬼理刻でない』


「ふっ、はっはっはっは! 鬼理刻も同じ様な事を言っていたな」



 ――だからユメキリは刻想器だったモノと自分で言っていたのね。



『陰楼よ。お前はなぜ、朝陽の事を知っている?』


「朝陽を知る理由か? ふっ、夢宮タケミツが握っていた刀の名は夢斬貮型(ゆめぎりにがた)……、これが答えだ」




 ――その名前を自称夢宮の先祖がなんで知っているのよ! まさか!

 


「私がこの世界に来た時、夢鬼理ネットワークシステムに対してジャミングをかけたのは、もしかしてあなたですか?」


「ふっ、そんな訳あるまい。第一、俺はお前の生きる夢覚の地の知識は知らぬ。それ故、未知のからくりの名を発せられても、俺は理解はできぬ」


「理解できない、ですか……、でも貴方はタケミツと夢斬貮型に会っているのでは?」


「だからなんだ? 遙か数百年前の夢覚の地にそんなからくりがあるわけあるまい。だからお前と夢鬼理の作りし、あのからくり対し、細工ができるわけもあるまい」



 ――確かに……、数百年前の夢覚市と私達の夢覚市が同じだったらおかしいわね……。



「ではなぜあなたがタケミツと夢斬貮型を知っているのですか?」


「それはだな。タケミツと夢斬貮型とそこのエクスアリア族のシャリアが剣を交え終えた場に遭遇したためだ」



 ――あの朝陽ルームで見たタケミツの後ろにいた女の子はやっぱりシャリアさんだったのね。


「あわわ! シャリアがそこにいたのですか? 記憶があまり残っていないのですが……」



「お前はあの刻、夢魔……いや夢喰が遺す殺意の邪想に呑まれ始めていたからな」



 ――夢魔? でもすぐに夢喰と言い直した……。



「夢斬貮型は、シャリアさんの夢領域(むりょういき)ゲートを閉じたのではないのですか?」


「げーと? ったく、また未知のからくりの名を言いやがって……、まぁシャリアの心中へ続く、深淵(しんえん)の門を、夢斬貮型は閉じていなかったのだろうな」



 ――夢領域ゲートじゃなくて深淵の門? 



「それと。俺が生きる夢覚の地で、彼奴等夢魔いや夢喰……」



 ――また夢魔と言いかけて、夢喰と言い直してる。



「……から夢覚の地の明日を護る術。これもお前が生きる時代の夢覚の地へ続く、一つの因果でもあるのだ」



 ――この人の話が嘘だったら、私は夢宮の名を持つ人間ではないし、明日を救う夢斬士でもない、か。



「お前と夢鬼理が作った新しい夢斬士達を支えるからくり以外で、人の深淵の門から心中に棲みし彼奴等夢喰共を討滅する力、それがこの鬼理刻刀だ」


「鬼理刻刀ですか?」


「俺がタケミツとシャリアが剣を交え終えた場にいたのも、鬼理刻の力によって、この地にたどり着いた」


「えっ? 鬼理刻の力を使ってですか?」


 ――システムも無い時代の夢斬士が、どうやってこのエクスアリアに来たのかしら。



「ああ。この地に来た刻も住人達の夢領域で、彼奴等の討滅していたのだ」



「住人さん達の夢領域からどうやってエクスアリアへ来たのですか?」



「ふっ、住人の一人の夢領域に突如、穴が空いた」


「夢領域に穴が空いたのですか?」


「ああ。その穴へ夢喰が逃げ先……、それが刻流れしこの地だった」



「夢領域に空いた霧の穴……、もしかして」


「うむ。本来ならば、この地に生を受けた者以外はこの地に存在してはならん異物……、お前と夢鬼理が作りしからくりを使い、タケミツがこの地へ来る刻にできた穴。それが住人の一人の夢領域と繋がった事、それは俺にも分からぬよ」



 ――タケミツが夢斬貮型を使ってエクスアリアに来てしまった結果、穴が空いた……、夢喰はその穴を使って……。



「要はタケミツと貮型は夢宮の掟破りだよ」


「はい。私も……昨日、力に溺れ、掟を破りました」


「あの夢喰野盗の一件か? 確かにお前も掟を破りかけた」


「はい……」


「だが、お前の隣に座るシャリアの明日を救った結果、お前は力に溺れなかったのであろう?」


「はい! 朝陽様がシャリアの明日を救ってくれたから、シャリアは朝陽様の隣にいるのです!」


「うん……うんありがとう、シャリアさん」



 ――シャリアさんがいてくれて、本当に良かった。



「うむ、他に聞きたいことはあるか?」


「タケミツと夢斬貮型は今、どこに?」


「ふっ……腑抜けれべるー、お前はこの言葉を知っているな?」


「はい、それは夢斬貮型が勝手につける称号みたいなものです」


「あわわ、シャリアも夢斬貮型に腑抜けれべるー80と言われました! 腑抜けれべるーとはなんですか?」


「それはね。夢斬貮型が明日を望むか望まないか、を勝手に決めつける称号、かな」


「あわわ……、シャリアは明日を望んでいたのに……」


「シャリアよ。夢喰が遺した殺意の邪想を受け、腑抜けれべるーを弄られていただけだ」


「陰楼様、それはどういう?」


「夢鬼理よ。シャリアの腑抜けれべるーは分かるか?」


『我は夢斬貮型ではないが……、シャリアよ。これが今のお前の腑抜けレベルだ』



【腑抜け測定結果】

【シャリア・エクス・ア・ロッテ 腑抜けLV:-1000】



 ――えっ? -1000? ありえないでしょ!



「あわわ、ー1000? これは……」


「シャリアさんは腑抜けじゃない」


「シャリアは腑抜けじゃない、シャリアは腑抜けじゃない!朝陽様、ありがとうございました!」



 ――すこぐ喜んでる、良かった。



「うむ。夢斬貮型の知識では、腑抜けれべるーは0にはならぬらしいが、それは真か?」


「そうです。たとえ腑抜けレベルが高くても、明日を迎える意志さえ……じゃなくて! なぜ貴方がそれを知っているのですか!」


「ふっ、夢斬貮型を触ったからだが」



 ――夢斬貮型を触った? まさか!



「まさか、夢で見た雪山に夢斬貮型が刺さっていたのは?」


「ふっ。ゔぇるはらー草原から刀を投げる時、柄を握るのは当然だろ」


 ――はっ? ヴェルハラ草原から雪山なんか見えなかったのに……この人、あり得なさすぎ!



「腑抜けれべるーは0にならんのだろう? でもそれは明日を望む者達の事、では明日を捨てた者がいたら?」


「明日を捨てたら明日が無くなるから0、それは夢喰達に『明日を捨てたました、貴方達の餌になります』と言ってしまうのと同じ……」


「明日を捨てたタケミツは夢喰と化し――」



《ぐー! ぐー! ぐー! ぐー!》



 ――そうだった……私もシャリアさんも昨日から何も食べてない……、お腹空いた……



「はっはっはっ! 話はここまでだな。ああ……そうだ、お前達へ渡す物があるのだった、まずはこれだ」



 ――えっ? この布袋はもしかして……



「これは特夢位の討滅依頼が出ていたギルドの報酬……、お前が滅し、シャリアが生き残った盗賊共を夢喰から救った報酬」


「ありがとうございます」


「うむ。それと生き残りの盗賊共からお前達に伝言を預かっている」


「仲間を斬り滅した私を許さない……ですか?」


「なにを言っているのだ。生き残った盗賊は感謝していたぞ、『あんな力に呑まれたのに人を辞めずに済んだ、明日からは真っ当な冒険者としてやり直す』とな。だがそいつらに罪を償ってからなと言っておいたがな」



「そうですか……でも結果的に盗賊を救ったのは、私じゃなくてシャリアさんが――」


「朝陽様、それは違います! シャリアは朝陽様に明日を救っていただいた、だからシャリアは、生き残りの夢喰だった盗賊達の明日を救えたのです! それは朝陽様が盗賊達の明日を救った事と同じではないしょうか!」


「シャリアの言う通りだ。シャリアの明日を救ったからこそ、お前は力に溺れる事なく、隣にシャリアがいる。そしてお前は今もこの地で生きているのだ。お前は立派な夢宮一族の夢斬士だ」



 ――『明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ』の掟、私が明日を迎えられる理由なんだ……。



「はい……ありがとうございます、シャリアさん、陰楼様」


「泣くな、朝陽!」


「はい……陰楼様」


「あと……俺は、様付けで名を呼ばれるのが苦手だ」


「はい……陰楼さん」


「うむ。二人共、飯でも食ってこい! その前にこのギルド冒険者証も二人に渡しておこう」


 

 ――これがギルド冒険者証明証? ご先祖様から貰うなんて、すこし複雑な気分……。



「しばしの間、この街にいるがよい。特夢位等の夢喰に関しての討滅依頼を受けても構わん」


「はい、分かりました、ありがとうございます!」


「それと、ギルド支部2階の一部屋をお前達が使える様にしておく、拠点の一つするがよい」


「ありがとうございます、陰楼さん」


「陰楼様、ありがとうございます」


「うむ。引き留めて悪かったな、飯行ってきな」



【フェルレトの街 商業域 8.5回目の深夜刻】



「良かったですね、朝陽様」


「……そうだね」


「朝陽様、どうしたのですか?」


「いやー、お腹がペコペコだから何を食べようかなー、てね」


「ぺこぺこー? ……もう朝陽様ったら!」


「冗談だよ、シャリアさん! シャリアさんのおかげでお金も何とかできたね、ありがとうシャリアさん」


「あわわ……このタイミングで言われてしまうと返事に困ります」


「ごめんごめん、着いたよ! シャリアさん」



 ――このお店からやっぱり良い匂いがするー! なにを食べようかなー!



 第12話 遥か数百年昔の夢斬士 完。


 第12.5話へつづく!

お読みいただきありがとうございました。

 *2026年4月25日(土) 内容の再構成改訂を行いました。

 *2026年9月3日(木)一部内容の改訂を行いました。


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