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第12話 遥か昔の夢斬士



遥か昔の夢斬士

 

【フェルレトの街 夢宮陰楼(かげろう)の家 夜刻】


 1日中歩き続けて疲れた私達が、1日の最後に聞いた陰楼の話は、ユメギリ貮型が私の夢で、夢覚市へ今帰ってはならないのかが理解できる話だった。

 もしかしてコンツェルンと通信できないのは、この人がなにか関係している?


「陰楼さん、夢鬼理ネットワークへの対してジャミングについて、何か知っていますか?」

「ジャミング? なんだその言葉は? 俺はお前達の時代の遥か昔、夢覚(むざめ)の地の住人だ。その時代で今も俺は、夢喰(ゆめぐい)を討滅し続けている。だからこそ、お前達は夢斬士(ゆめぎりし)として、お前達の時代の夢覚の地を夢喰から護ることができているんだ。朝陽、お前はよくやったよ、まさか別の刻想器と契約して新しい夢斬士達の明日を迎える形を作ったのだから」

「それは、お父様が大切にしているあの夢宮の教えがあったからで、私とユメキリの力だけでは、夢鬼理ネットワークを作る事はなし得ませんでした」

「それだけで十分さ。俺がこの世界へ来てしまった理由は、人の夢の中で夢喰を討滅しようとした時、その夢喰がこの地へ続く穴を見つけて、逃げたからだ。

あと夢喰が逃げた原因も知っている。

夢宮の分家の血を受け継ぐ夢宮タケミツと夢鬼理ネットワークの要の1つ、ユメキリが用意した分家用の分体、ユメギリ貮型とやらが来たことで、夢喰が逃げ込む穴ができたのが原因だ」

「はい、それは私も知っています」


 私の返事に驚いた陰楼は、話の続きを語り始めた。


「お前が夢で見たユメギリ貮型の話の真相は、エルタティアの山頂へ貮型を投げたのは、タケミツではなく俺だ。

厳密には、タケミツが投げたユメギリ貮型を拾い、ヴェルハラ草原からエルタティアの山頂に向かって投げたのは俺ということになるな」



 陰楼の話によれば、タケミツとユメギリ貮型がヴェルハラ草原で、夢喰状態シャリアさんと夢喰状態の自称勇者と交戦開始した。

 タケミツの意識を乗っ取ったユメギリ貮型がシャリアさんと自称勇者を戦闘不能へと追い込んだ後、私と通信を始めた。

通信を終えたタケミツとユメギリ貮型は、言い争いを始めて、最終的にタケミツは、ユメギリ貮型を空へと投げたという。


「まあつまりだな、ユメギリ貮型は門を閉じていなかったのだ。

ユメギリ貮型だけでは夢喰対策はできん、キリがないからな、ユメギリ貮型を投げてしまった事で、タケミツは殺意の邪想の呑み込まれて、邪想の鎧を纏い、邪想の鎧の糧となる夢喰を狩り続けた。

そしてユメギリ貮型の言う腑抜けレベルとやらは、999ではなく、0になった……朝陽、この意味は分かるか?」

「はい、陰楼さん」




 ――タケミツ…………ユメギリ貮型を手放してしまったら、『どうぞ、僕を食べてください』と夢喰に言ってしまった様なものだよ……

 

 

「あわわ……朝陽様、陰楼様。シャリアは腑抜けレベル80とユメギリ貮型に言われましたが、0になるという事はどういうことなのでしょう?」

「シャリアさん、それはね」



 ユメギリ貮型の腑抜けレベルというのは、明日を迎える為の意思があるかないかのユメギリ貮型の独自概念。

 腑抜けレベルが高い程、自身で夢喰の力を滅した時に得られる邪想の力が増えるのだとユメギリ貮型が、腑抜けレベル100と私に対して断じた時に話してきた。

 つまり腑抜けレベルが高くても明日を救う意思さえあれば、腑抜けレベルは徐々に下がるとユメギリ貮型は言っていたのだ。

 腑抜けレベルがマイナスな人ほど、命ある者から明日を奪う者に対抗できるだけの強さがあるとユメギリ貮型は、幼き私へ話したのだ。

 つまり0になる事はあり得ないのだ、0を飛ばしてマイナスの数値となる、これが明日を迎える為の意思である…………


「ということなの、シャリアさん」

「あわわ……よく分からないですね」

「シャリア、お前が今、朝陽の武器の一つであるユメキリと契約できたのはなぜだ? お前は一度、夢喰に呑み込まれた存在だ」

「そ、それは、邪なるオーガなる夢喰の殺意ある邪な力から私を救ってくれた朝陽様の力になりたいという想いと私が帰れる故郷を私自身が夢喰から救いたいという想いが、私の心の中にあったからです」



 シャリアさんがあの時、何を想ってユメキリと契約できたのかをちゃんと理解してくれていて良かった。

 だからこそ、昨日のあの言葉で私は殺戮の鬼にならずに済んだのだ。

 シャリアさんの答えにユメキリが言葉を返した。


 

 『左様だ、シャリア。我、ユメキリの分体であるユメキリIV型は、シャリアのその想いに応えて力を与えたのだ、だから今のシャリアは腑抜けレベル80ではない、安心するがいい』

「はい、ありがとうございます! ユメキリ様」



 シャリアさんとユメキリのやり取りを見ていた陰楼は、笑みを浮かべながら2人の様子を見ていた。

 しばらくして、真剣な顔に戻った陰楼は、昨日の私が滅した夢喰シーフ型の話をしてきた。


 「朝陽、昨日、お前が滅したあの夢喰と化した盗賊達は、ギルドの討滅対象だった。シャリアが救った生き残った盗賊達もすぐにギルドへ出頭してきた」

「彼ら達はなんと言ってきたと朝陽は思う?」

「許さないですか?」

「いいや。彼女達が救ってくれたお陰で、誰かの明日を奪う事はやめて、冒険者として真っ当に生きると、言ってきたのだ」

「ま、罪を償ってからなと言っておいたがな、朝陽、お前の選択によって、救われる者達がいる。

明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ。

力に溺れなかったお前は立派な夢宮の夢斬士だ。

本来俺が会う事ができない未来の夢斬士であるお前が、エクスアリアの地でやろうしている想いの絆。それがお前の夢鬼理ネットワークだ」

「はい……ありがとうございます……陰楼様」

「やめろ! 俺は様付けで呼ばれる事は嫌いなんだ、それと泣くな、朝陽。お前には仲間がいる」

「はい、陰楼さん」

「いいか? エクスアルディアギルドの通常の依頼は他の冒険者達がやる。

お前達2人は夢喰が関わる依頼だけ受けるがいい。

それが、エクスアリアの地を旅する夢斬士の朝陽と仲間のシャリアへ、ギルド幹部の俺がしてやれることだ」



 そう言ってきた陰楼は、私とシャリアさんへギルド登録証を渡してきた……異世界の身分証明証を私の先祖自身に渡されるという、かなり複雑な気分であった。

 しかし夢鬼理ネットワークをエクスアリアで構築していく為には、この世界で夢斬士として活動しながら信頼を得ていかないといけない。

 夢覚市の夢斬士達が、今まで活動して来れたのも、陰楼が居なくなっても、夢喰から人々を護れる様に夢鬼理ネットワークと同じ様な仕組みを作ったからだと私は推測している……

 結果的に私が今、夢斬士として明日を救う力を持って生きている事自体が、陰楼が作った仕組みが夢宮一族の夢覚市を裏から管理している事への答えなのだ。



「とりあえず、今日は疲れただろう? ギルド支部の上階をお前たちの拠点として解放しよう……それとあの討滅対象だったシーフ達への報酬を渡そう……飯でも食べてくるといい」



 陰楼から報酬を受け取った私達は、フェルレトの街の食堂へ向かうことにした。


「良かったですね、朝陽様」

「…………そうだね……」

「どうしたのですか? 朝陽様」

「お腹空いたからさ、何を食べようかなと迷ってた」

「もう! 朝陽様ったら!」

「冗談! とりあえずお金、なんとかなったね」

「ありがとね、シャリアさん」

「あわわ……このタイミングで言われてしまうと返事に困ります」

「ごめん、ごめん、行くよ! シャリアさん」


 こうして私達は、ファンタジー世界のギルド登録が終わりと街のご飯を食べに行くことができたのだった。


 12話

 遥か昔の夢斬士 完

 13話へつづく!

 

最後までお読みいただきありがとうございました。


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