第11話 フェルレトの街とエルタティアの貮型 後編
フェルレトの街とエルタティアの貮型 後編
【エクスアリア フェルレトの街 宿 夜刻】
私たちは今、フェルレトの街の宿屋にいる。
宿屋に着いた私たちに訪れた新たな問題それは…………
「はぁ、金がないだと? 金が無いなら帰った! 帰った!」
そう宿の主人に言われてから私は気づいた。
私にはこの世界のお金がなかった…………というよりもそんな事、考えてすらいなかった。
シャリアさんもお金と無縁の環境で育って来たから、勿論お金を持っていなかった。
――野宿か……宿があるなら宿で寝たい、どうしよう……
「ほら! 帰った帰った!」
バタン!
お金が無かった私たちは、宿屋の主人に追い出されてしまった……
「どうしよう……ユメキリ、あれは使えないよね?」
『左様、ここは日本では無いのだ、ガジェット内のYuMePay! は使えぬ』
「そうだよね、さてとどうするかな……」
この前の夢喰だった盗賊をシャリアさんが救った後、助けてくれたお礼と言って盗賊達は金品を差し出してきたけど、私とシャリアさんは断った。
でもその結果、ファンタジー世界! みたいなレンガで作られた家が建ち並び、大きな剣を持つ人、魔法使いが使う杖を持つ人等、誰が見ても強戦士だと分かる人達が行き交う夜のフェルレトの街に放り出されてしまった。
――いやでもあれは貰ってはいけない金品、だから後悔はしていない…………してはいけないのだ。
「となると、夢斬士として私が出来ることは……」
夢斬士としてお金を稼ぐ方法を考えていると何か見つけたのか、シャリアさんが声をかけてきた。
声をかけてきたシャリアさんの指を示した先には、ファンタジーの世界で定番のアレがあった。
「ユメキリ、翻訳お願い」
『朝陽よ、了解した』
【エクスアルディア文字を翻訳中…………】
【エクスアルディア文字の翻訳が完了しました!】
翻訳されたアレの正体である掲示板を見たところ、この掲示板はエクスアルディア王国という国が運営しているギルド組織、エクスアルディアギルド連盟が管理している掲示板だった。
「シャリアさん、エクスアルディア王国は何処にあるの? ここから遠いの?」
「朝陽様、大変申し上げにくいのですが……ヴェルハラの森を西へと進んだ先にある王国なのです」
「…………反対側か、でもまずはエルタティアを目指さないといけないけど…………その前にギルドへ行こう」
「はい、朝陽様」
私とシャリアさんは宿代を稼ぐ為、エクスアルディアギルドのフェルレト支部へ向かった。
【エクスアルディアギルド連盟 フェルレト支部】
「ほー、生で初めて見るけど、ここがギルドなんだ」
「はい、朝陽様。でも時間が時間なので、人は少ないみたいですね……」
時間が時間なだけに、フェルレト支部の中は、私が想像していたよりも静かなギルド支部の印象で、本当に仕事があるのだろうか? という疑念が残る場所だった。
ガチャ、カララン! カララン!
ドアによく付いている音が鳴る鈴の音と共に開いたドアから1人の女性が現れた。
私達に気づいたその女性は、私達へ声をかけてきた。
「あら、冒険者の方? エクスアリア人の女性とえ……と、ヒューマアリア人? の方でお間違いありませんか?」
「えっ? 私はニ……」
私が日本人だと女性へ言おうとしたらシャリアさんが私の口を咄嗟に塞いできて、代わりに女性の質問に答えた。
「はい、そうです! 私はエクスアリア人のシャリア・エクス・ア・ロッテとこちらは旅するヒューマアリア人の女性、朝陽・夢宮様です!」
「朝陽? 夢宮? 夢宮…………何処かで聞いた様な…………ま、いいや」
私の名前を聞いたことがあるのか、ギルドの受付の女性は、少しだけ言葉を詰まらせたが、直ぐに自身の自己紹介を始めた。
「初めまして、エクスアルディアギルド、フェルレト支部へようこそ、朝陽さん、シャリアさん」
「フェルレト支部の冒険者管理部の1人、エリディア・ヒューラです、よろしくお願いします、私の事はエリディアとお呼びくださいませ」
「朝陽です、よろしくお願いします」
「シャリアです、よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。朝陽さんとシャリアさん……早速ですが、お二人はなぜこんな夜遅い時間に当ギルドの支部の扉を開けたのですか? この時間は、成果報酬をお取りにお見えになられる方々が多い時間で、新規冒険者登録される方はあまりいないのですが…………」
「えっ……えーとですね、話は長くなるのですが……」
私がエリディアさんへ事情を話そうとした時、ギルド支部の奥からこの世界では見慣れない顔立ちをした20代後半と思われる1人の男性が現れた……
「おい、エリディア。さっき夢宮という名前が聞こえたが……」
「はい……こちらのヒューマアリアの女性の名前が、朝陽・夢宮さんです」
「こんな若い女の子が…………まさか夢斬士をやってるなんてな…………そんな警戒をするな、私は夢喰ではない」
「あなた、誰ですか? なぜ夢斬士の事を知っている?」
なぜか私が夢斬士であることを知る、長き刃刀を腰に据えた青年は、私が最も知るあの言葉を呟いた。
「明日を救う力を持つ者、力に溺れることなかれ」
なぜこの青年が夢宮の言葉を知っているのか?
私は疑念を抱きつつも、この男の言葉に対して、言葉を返した。
「その言葉は……夢宮の言葉」
「名前は朝陽だっけ? 俺の名前は夢宮陰楼……ちょっと場所を変えようか」
「エリディア、留守を頼む」
「かしこまりました、陰楼様」
「あ、そこのエクスアリア人の朝陽の仲間の君も一緒に来な」
「はい……分かりました」
ギルド支部から外へ出た私達は、夢宮の名前を語る青年の案内の元、フェルレトの街の郊外の青年の自宅と思われる中へと入った。
中へと入った私達へ、椅子に座る様に青年に言われた私とシャリアさんは、青年が座る反対側の椅子に座った。
椅子に座った私達に対して青年は、静かに口を開いた……
「単刀直入に聞く。朝陽、お前の持つその刀、元刻想器だろ?」
「なぜ知ってる?」
『朝陽よ、我が話そう』
「うん、分かった、お願い、ユメキリ」
『朝陽よ、了解した。では……陰楼はかつて我だった別の刻想器と契約した、最初の明日を救う者、違うか?』
「ああ、そうだ、ユメキリ。別のお前だった刻想器と俺は契約し、夢喰の力を制御して、想いの力と変えた最初の夢斬士だ」
「朝陽と同じ、夢を見ることが出来る夢斬士……厳密には違うがな」
夢喰の力を制御した夢を見ることができる夢斬士?
「どう言うこと?」
「簡単に言えば、こういう事だ……」
陰楼が私達に見せて来たのは一刀の刃、鬼裡刻刀と言う名前の刃だった。
「朝陽、これが夢斬士の始まりにして、明日を救う最初の力だ。お前が作った夢鬼理ネットワーク以外で人々の夢に入る方法、そしてこの世界へ来る方法……タケミツから世界を守る方法、それが元刻想器であり今は俺の契約者であり俺の刀、鬼裡刻刀だ」
もう1人の想いを叶える存在と契約した者は、夢斬士と夢宮一族の始まりと語り継がれている人物だった。
11話 フェルレトの街とエルタティアの貮型 完
12話へつづく!
最後までお読みいただきありがとうございました!
次話、第12話 遥か昔の夢斬士です!




