第10話 フェルレトの街とエルタティアの貮型 前編
第10話 フェルレトの街とエルタティアの貮型 前編
【エクスアリア大陸 東エクスアリア草原 夜刻】
【洞窟野営ポイント】
ヴェルハラ草原での夢喰と化した盗賊達との戦闘の後、私達は東の都エルタティアを目指し歩いていた。歩き続けた事で、あっという間に時間は過ぎて、エクスアリアは夜の世界へと姿を変えた。
「よし! シャリアさん、今日はここまでにしよう!」
「はい、朝陽様」
「ユメキリ、野営するからお願い」
『朝陽よ、了解した』
【夢鬼理ガジェットから野営設備を召喚しました!】
夢鬼理ガジェットから野営設備を出してもらった私は、シャリアさんに手伝ってもらい洞窟内にテントを設置した。
「あわわ……これは小さな家……」
「あ……これはね……テントという道具だよ」
「外に出たまま寝るのは危ないから、この中に入って寝るの」
「そうなのですね、私達エクスアリア人が野営する際は、木の上で休みをとっていましたので……」
「あははは、それで休み取れてたの?」
「あわわ……エクスアリア人はそれが日常でしたので……お恥ずかしいです」
「まあ、私達の世界は、便利な道具がいっぱいあるからね」
「そ、そうなのですか? 一度見てみたいです!」
「ダメだよ、シャリアさん、あなたはこの世界の住人……でも私の家の中だけなら大丈夫かもね」
「はい! いつか朝陽様の世界に……」
「うん、シャリアさん」
本来ならこんな約束をしたらダメなのは分かっている。でもシャリアさんが居なければ私は今頃…………
『朝陽よ、言ってしまった以上、過ぎたことだ……』
「うん、分かってる、ありがとうユメキリ」
『礼には及ばん……さあ休むが良い』
「おやすみなさい…………」
「朝陽様……おやすみなさい」
旅の初日で疲れた私たちはテントの中で、眠りについた…………
【3時間後】
眠れなかった私は今、洞窟の外でトレーニングをしている……夢斬士である前に私は一人の人間だ。
【トレーニングブレードを装備しました!】
「はい! ハァ! はい! ハァ!」
日々の鍛錬を怠っていては、いざという時……またピンチになってしまう。
「せい! ハァァァァァ!』
【トレーニングスレイヤーを発動しました!】
ボスッ!
「…………ふぅ、疲れた」
バサッ!
疲れた私は、夜中の誰もいない電気の灯も無い、月らしき光が照らす真夜中の草原へ背中を預けた……
「星が綺麗……夢宮コンツェルンビルの屋上から観てた星空とまた違う綺麗な星空ね」
高層ビルが建ち並ぶ夢覚市とただ自然が広がるエクスアリアの地。
「スマホ、持ってくれば良かったよ」
すぐに帰れるから良いやと思って、スマホを持って来なかった事を後悔した私は、草原の上でゆっくりと目を閉じた……
【朝陽の夢の中】
雪が積もる山の頂と思われる場所に光を放つ刀が突き刺さっている……それは旅の目的の1つである片割れだった。
『あっ! そこにいたか! 夢斬貮型…………』
私の存在に気づいた夢斬貮型が、夢の中から語りかけてきた……
『すまぬ……朝陽、あの腑抜けを教育する為にこの世界を選ぶべきでは無かった。腑抜け……タケミツはもう既に……夢喰……の……王に……』
夢喰の……王?
そんな……あり得ない、夢宮の人間である仮にも夢斬士であるタケミツが、それが本当なら私がすべきことは1つだけ、でも……
『えっ? ちょっと待ってよ! 夢斬貮型!』
『朝陽……今は夢覚市へ帰ってはならぬ……』
『本当、訳わかんない事ゆうよね、ユメギリ貮型はさ、誰のせいでこうなったと思ってるわけ?』
『…………チッ、すまん』
『舌打ちすんな! いつも言ってるでしよ!』
『久しいな……その言葉……あの日、朝陽と会話を終えてタケミツに空へと投げられた我は、このエルタティアの地の頂に辿り着いた……それから……年はいる……でも我の力はもう底を尽きそうだ……』
エルタティアの雪山の頂にいる夢斬貮型を早く回収してあげないと……
『朝……様、朝……様、朝陽様!』
シャリアさんの声が聞こえた……私はゆっくりと目をあけた……
「あ、お目覚めになられましたか? 朝陽様」
「……シャリアさん?」
「はい、世が明けましたよ、朝陽様」
「え? 世が明けた?」
「はい! 世が明けました!」
そんなに私は眠ってたのか…………でもなんか心は安らいだ気がする。
「シャリアさんはよく眠れた?」
「はい! てんとーと温かい掛け物のおかげでよく眠れました」
「それは良かった、じゃあシャリアさん、片付けた後……出発するよ」
「はい、朝陽様」
野営設備を夢鬼理ガジェットへ格納した私は、エルタティアの街を目指してシャリアと出発をした。
【エクスアリア大陸 東ヴェルハラ草原】
【フェルレトの街近郊 夕刻】
野営ポイントを出発した私達は、地図を頼りにエルタティアを目指して、魔物を倒しながらひたすら東を歩き続けた……
歩き続けて数時間後、周囲が薄暗くなり始めた頃……私は今日見た夢の話をユメキリにした。
「ねえ、ユメキリ」
『なんだ朝陽よ、朝陽の夢のタケミツと夢斬貮型のことか?』
「そう、ユメキリがこの地に来た時、時間のずれの話をしてくれたでしょ?」
『朝陽よ、我とコンツェルンの夢斬参型との通信は完全には遮断されてはいない。だから夢斬貮型とタケミツと違い、向こうの時間はそんなに時を紡いではいない、心配するな』
「えっ? ユメキリは向こうの日付が分かるの?」
『正確な日までは解らぬ、でもまだ8月だ』
「まだ8月……良かった……向こうへ帰った時のこと考えたらと思うとね」
『朝陽よ、帰れた時の時間のことは帰れた時に考えたらよい』
そう、ユメキリの言う通りだ。
帰った時の事は帰った時に考えれば良い、今の私がすべき事は、仲間であるシャリアさんとエルタティアの街へ行くこと。
そんなことを考えていたら、何かを発見したシャリアさんが前方を指差ししながら、私に話しかけてきた。
「朝陽様! あれは……街ですかね?」
「……あっ、街だ!」
『解析開始……朝陽よ、あの街はフェルレトの街というらしい、歩き疲れただろう、今日は宿に泊まるか?』
「うん! お腹も空いてきたし、行こう!」
「はい、朝陽様」
一日中歩き続け、お腹も空き、疲れた私たちは、今日の旅はここまでにして、フェルレトの街へ立ち寄ることにした……
後編へつづく!
最後までお読みいただきありがとうございました。




