↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/11

TAKE 7 ここから

動き出す理由は、

特別じゃなくていいのかもしれない。


でも、いつでもいい、わけじゃない。


——


「おはようございます。」


「……おはようございます。」


「今日、チームでこの前の仕事のお疲れ会しようって話してるんです。」


「イサキさんもどうですか?」


「あぁ……今日はちょっと。

すいません。」


「そうですか……イサキさん、今回のプロジェクトリーダーでしたし、

ぜひ来て欲しかったんですけど。」


「……すいません。」


——そういえば、プロジェクトリーダーだったな。


今日は、報告書の提出か。


来てない人の分は……また俺が書くしかないか。


「はぁ……。」


自分の作業が進まない。

報告書に時間取られすぎるんだよな。


……。


18時を過ぎると、カシャカシャとうるさかったタイプ音が、

一気に静かになり始める。


そのせいで、紛れていた自分のタイプ音が耳に残る。


パタンっ。


ノートパソコンを閉じて、仕事を終えた。


18時半。


誰かに会っても困る……。


地元で誰かと飲みにでも行くかな。


駅に向かっている途中、

友人に連絡を入れようとスマホをいじっていた。


ふと、スマホから顔を上げた時、1件の店があることに気づいた。


こんなとこに店なんかあったんだな。


近づいて中を覗いていたら、店員らしき女の人と、

目が合ってしまった。


……これ入らないと、怪しいよな。


ドアハンドルに手をかけた時、

ベルを鳴らしながら、ゆっくり、店の扉が開いた。


カランカラン。


「あ、失礼しました。お声をおかけしようかと思いまして。」


「いえ、大丈夫です。」


これは……店員が話しかけてくる系の店かぁ。


とりあえず入って、すぐに出よう。


「いらっしゃいませ。どうぞ、お入りください。」


にっこりと笑った女性店員は、綺麗な人だった。


「はい、買うと決めてるわけではないんですけど……」


店に入ると、棚に手のマネキンが置かれていた。

さらに近づいてみると、棚ごとにプレートがかけられている。


プレートで気になったのは、


『インデックスリング』と書かれたものだった。


マネキンに指輪が嵌められているのは、人差し指。


「指輪に名前があるんですね。」


「はい、つける指によって違うんです。」


指輪は、若い頃つけることあったけど、つける指かぁ。


意味があるのか……。

聞くのも、ちょっとな。


「インデックスフィンガー。

この指には、特別な力がありそうだと、

選ばれる方もいらっしゃいます。」


店員はそう言って、手を伸ばしてゆっくり胸の辺りまであげると、

人差し指でリングの棚を指差した。


その指先を追いかけるように、

気づいたら、棚に目を向けていた。


「こうして、指を指すというのは、

気づかないうちに、自分自身や、周りを導いているのかもしれません。

不思議ですよね。」


つられた……?


「……この指輪、試してもいいですか?」


「はい、もちろんです。」


受け取った指輪を、右手の人差し指に嵌めた。


あ、人差し指に、指輪嵌めてたことあるな。


なぜか、昔撮った写真のことを思い出した。

人差し指に、指輪を嵌めた自分の写真。


まだ学生だった頃、ゼミのみんなで撮った集合写真だ。


なんで今、思い出したんだ。


あの時の写真、真ん中だったな……。


「あの、この指輪買います。つけて帰ります。」


「かしこまりました。すぐに準備いたします。」


今……か。


店を出たあと、すぐに時間を確認する。

18時33分。


まだ、やってるかな。


ん?

あれ、時間が……。

会社出てから数分しか経ってない……。


もっとここにいたよな……。


いや今は、間に合わなくなる。


駅とは逆方向へ引き返すように足を進める。


それでも、歩幅は少しずつ、大きくなっていった。


たった今から、できること。


指輪をした右手を、握りしめて。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。