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27 女性騎士団員

 ヴァレリオの髪を切り落として四ヶ月、ルーチェは元の第三騎士団に戻ることになった。

「お世話になりました。これ、ほんのお礼です」

 ルーチェはグイドとヴァレリオに感謝の気持ちを込めてお礼の品を手渡した。

 グイドには、第二魔法騎士団の紋章を刺繍したハンカチを、ヴァレリオには髪紐を。どちらも魔力は濃く、ささやかな繕い魔法がかすかに滲むようにかかっていた。

 ハンカチをゆっくりと広げたグイドは、その刺繍の精密さと、じんわりと広がる心地よい繕い魔法に

「これはすごいなあ…。ふーん」

と言うと、そっと糸に触れ、にっこり笑って

「ありがとう」

と礼を言った。

 ヴァレリオは軽くうなずいて礼を示し、ポケットにしまい込んだ。

 グイドはハンカチを額に入れて部屋に飾り、それを見つけたフィデンツィオが刺繍の出来映えに譲ってほしいとしつこくしつこくせがんだが、今回はグイドは譲らなかった。


 ルーチェが戻った第三騎士団では、各自の私物の管理を他人に任せることが厳しく禁止されるようになっていた。特に、繕い物は洗濯屋に出すように、とはっきりと言明されていて、それが戻ってくるルーチェに仕事を回すなと言うことを示しているのは、誰の目にも明らかだった。

 もちろん男女を問わず下っ端として修練会の朝の準備や、出撃の際の報告書の作成など、やるべきことはやる。しかし、一人で繕い物を引き受け、革靴や防具を磨いていたあの頃に比べると、その負担はずいぶんと軽くなっていた。

 場合によっては第三騎士団は男子のみの団とすることも検討されていたが、それは魔法をもたない庶民の女子が王都の騎士団に入れないということを意味する。騎士団にとっても性別を問わず優秀な者を確保したいところであり、職場改善は急務だった。


 月に二回、第二騎士団のアルバが女性団員に不当労働をさせていないか、各騎士団を見回ることになり、第三騎士団だけでなく、他でも嫌がらせやセクハラまがいのことが見つかり、各団で処罰や指導が行われた。


 アルバには見回りの後に手合わせしてもらえることになり、剣だけでなく、腕力差がある者と素手で戦うときの有効な格闘技も教えてもらった。

 稽古の後、アルバの袖のほつれを見つけ、お礼かたがたその場で軽く繕ったところ、二週間後、アルバから礼を言われた。

 魔物討伐に向かった先でへまをした後輩を守るために無理をし、魔物が吐いた炎が横をかすめた。周りにいた者は服や髪を焦がしたにもかかわらず、アルバだけが無事で、あの日繕われた糸だけが黒く焦げ落ちていた、と言うのだ。

「どう考えても、あれは繕い魔法の力だと思うのよね」

と言われても、ルーチェ自身はよくわからなかった。魔法をかけて繕ったわけでもなかったし、かかったところで、些細な魔法しかつけられない。

 しかし、アルバは確信していた。

「この力が広まったら、また繕い物を頼む連中が増えるわ。あれだけの守りがあれば、安心して討伐に向かえるもの。でも、あんな奴らに繕わなくていいわよ。あなたは騎士団員として十分優秀なんだから。…あなたの力、大事にしなさい」

 アルバにそう言われて、

「はい。…他の男の人には繕い物をしないことになっているので…」

と話すと、アルバはふうん、と目を細め、指で「2」を作った。

「…例の、副団長?」

 ルーチェが小さくうなずくと、

「やーっぱり噂通りね。やんなっちゃう。こんだけ剣を教えてあげてるんだから、いい人がいたら紹介しなさいよ」

 アルバは口調はきつめながらも、ニヤニヤとした笑みを浮かべていた。

 ルーチェはふと、二人の兄のことを思い出し、

「同じくらいの年と、年下と、どっちがいいですか?」

と聞くと、途端にアルバは冷やかしをやめ、にんまりと笑って、肩を組んできた。

「ゆっくり話そうか」

 その日は二人で飲みながら、どっちの兄を紹介するか語り合った。


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