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ピーターと友だち  作者: 六葉翼
バミンガ厶編
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19/36

アイアンマンと魔術師たち


最高のライブだった。


バンドは素晴らしかった。

観客も盛り上がっていた。


俺は大勢の客の前で初めて歌い。

ずっと緊張しっぱなしだった。


バンドが演奏中、トニーはギターを弾きながら。俺の耳元で囁くんだ。


「お前…正面の席の娘どうだ?」


「3列目の…右から2番目はどうだ?あの娘とやれそうか?」


いつもステージで、トニーはそんな事ばかり俺に言うんだぜ。


演奏が終わり客に手を振る。俺達の目の前に、突然体のやたらでかい、ニキビ面の男が現れた。そいつは、いきなりステージに上がって来た。


刑務所で、子供専門の性犯罪者をぼこぼこにしてた囚人と同じくらい、でかいやつだった。


「ずっと俺の女を見てたよな」


男が指したステージには、あまりに可愛くない女がいて、迷惑せんばんと言った顔で俺を睨んでる。


「俺は…お前の彼女なんて見てないぜ!」


男のツバが俺の顔にかかる。


「嘘つくな!俺はこの目で!しっかり見てたぞ!お前、彼女とやりてえのかよ!ええ!?このバーミンガムのくそ野郎!」


「お前の女は好きじゃないです」


そう言えば。


「俺の彼女がブスだっていうのか!.バーミンガムのくそ野郎!」


「やりたいです」


そう言えば。


「やっぱりそうか!バーミンガムの…」


どっちにしろ同じ事だ。


とっさに俺はトニーの声色を真似て。


「ギーク、お前ならどうだ?あの娘とやりたいか?」


「ええ!?俺?」


ギークに責任を擦りつけた。


「てめえか髭野郎!」


「待ってくれ!ビルお前ならどうする?」


「ええ!?」


「ちびすけ!」


ビルのところに向かおうとした。

男の前にトニーが立ち塞がる。


無言で男の胸を押した。


男はトニーの胸ぐらを掴むと、

顔にパンチを2・3発入れた。

ジャブのような軽いパンチだ。


トニーは男の胸ぐらを掴み返し。


男の顔に左の拳を叩き込んだ。

男は膝から崩れ落ちた。


際限無く拳が降り下ろされ。

まったく容赦がなかった。


男は床に倒れ込んだ。


トニーは男の尻を蹴り上げた。


「失せろ」


トニーの左手は指抜きが外れて。

それはえらい事になっていた。


「溶接してくる」


手袋をはめていたので。前列の客は、トニーがひどい骨折したと。

皆がそう思ったに違いない。


「つないでてくれ」


トニーは俺達に背中を向けて。

すたすたと歩き出した。


「マッド…何か曲を!」


ギークが俺に言った。


俺は客席に向かってマイクで叫んだ。


「鋼の男だ!トニーワイズマン!彼を称える曲を!えっと…そうだな…サバスのアイアンマンだ!」


「弾いた事ねえ!」


ビルがトニーのギターを手にする。そしてギークに耳うちした。


「ギーク…俺がギター弾くよ!合わせてくれ!」


よれよれのディズニーのテーマみたいな。アイアンマンが始まった。


ビルは超下手だった。

話にならないくらい。

下手くそなギター。


律儀にも曲が始まるまで待って。

トニーはステージから退場した。


皆に見えないように背中を向けて。


トニーは爆笑していた。


客席は大いに沸いた。


「バンド名なんだが」


リハーサルの休憩の時。

トニーが皆に言った。


「最低だと思う」


「どこがだよ」


俺は抗議した。


「最低は最低だ」


「理由などない」


「それじゃお前ら何か考えろよ!」


ビルが言った。


「ずっと考えてたんだけど…バーミンガムの魔術師《ウィザード》ってどうかな?」


くそ野郎じゃなくてか。


「サッカーチームみたいな名前だ。それにそんな名前じゃ音楽性が見えて…」


「豚肉よりはましだ」


トニーが頷いた。


「確かに!豚肉より魔法使いの方がいい!」


ギークも同意した。


俺は反対した。


しかしステージの件では借りがあった。しぶしぶ同意した。


Birmingham Wizzard


バンド名が決まった。

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