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ピーターと友だち  作者: 六葉翼
バミンガ厶編
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18/36

雨を見たかい



アストンの町の外れにある。

元コミュニティ・センター。

俺たちはその廃墟に集まり。


ひたすら練習に明け暮れた。


昼も夜も。


すぐ近くをA36高速道路が通っていた。


立体高速の1番上に、新設されたばかりのモータープールがあって。


それがバンドの音をかき消した。


ものすごい騒音だった。


この頃のアストン。町中至るところに、コンクリートが流し込まれていた。


そんな事今更しなくても。

町は最初から灰色だった。


バンドはひたすら終わる事がない、ジャムに日々明け暮れた。


俺が歌うべきパートが来ると。

トニーが目で俺に合図した。


歌詞なんてまだなかった。


その場で思いついた事を歌う。


ギークは最初苦労していたと思う。すぐにベースを買う金はなかった。


テレキャスターにベースの弦を張って代用した。


普通はギターにベースの弦なんて張ると。ネックが折れてしまう。


でもギークはお構い無しだった。


やっぱり音が走りまくっていた。


トニーはギークに言った。


「お前のランニング・ベースは面白い。でも、曲に合わせて効果的に使うべきだ。合図したら来てくれ!」


ギークは素晴らしいベーシストになる。それに時間はかからなかった。


そして彼は誰よりスターに見えた。


トニーの手際の良さときたら。常に先を読み。まったく無駄がない。


彼は、すぐにカーライルにあるペンタグラム時代のコネを使って。ライブ会場を押さえた。


アストンからカーライルまで。

高速で北へ200マイル。


トニーの錆びたボロボロのバンに、バンドの機材と楽器を積んで。


俺たちはアストンを出た。


バンのサスペンションは、とっくに壊れていて。車は崩壊寸前。


曲がり角に来る度に、俺達は車体がタイヤを削らぬように、全員で反対側に身を寄せた。


しかし無駄な努力だと知った。タイヤが焦げる。あの嫌な匂いが、車内に充満し。車外では火花が飛び散っていた。


果たしてタイヤはまだあるのか…

ものすごい音がした。


「溶接機みたいだ」


バンドルを握るトニーが呟いた。


笑えない。


途中からひどい雨になった。

ワイパーは作動しなかった。


「俺が運転変わろうか?」


ビルの言葉が恐怖に拍車をかける。


「マッドの怪談より怖い」



8時間後。全員無事でカーライルに着けた。奇跡だと思った。


雨が上がった。


バンは命運尽きて。

2度と動かなかった。


会場の前に貼られたポスター。


俺達は皆で見ていた。


バーミンガム出身のエキサイティングな新人!


トーキング・ポークス

(元ペンタグラムのメンバー含む)


最高にごきげんなバンド!

踊りあかそう!!


カウンティ・ホールにて


8月24日土曜日


午後7時30分開演


カーライル。

雨上がりの空。


空に虹が見れたらよかった。

けれど虹は架からなかった。


俺たちのバンド名。

今日のライブ告知。


それで充分だった。

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