トークするポークたち
「バンド名はどうする?」
すぐに良い名前は浮かばなかった。
「しばらくの間考えてみたら?」
「大事な話をする時、アイデアを出したい時、よく行く店があるんだ」
トニーの馴染みの店に向う途中。
バンドに相応しい名前を考えた。
「思いついたぜ!」
「思いついたか!」
その日の午後。俺達4人は、アストンの安っぽい不潔なカフェにいた。
皆俺がバンド名を口にするまで。
ギークの土産話に釘付けだった。
ギーク・チェスター。
この2ヶ月間ドイツにいた。
ある日「ドイツでジミ・ヘンドリックスがライブをやる」そう聞いた。
居ても立ってもいられず。
上司に何とか頼み込んで。
3日間の休暇を貰った。
しかし彼に貯金はなく。
財布の中を数えても。チケット代。
そして片道分の旅費しかなかった。
それはまさに聖地巡礼の旅。
ジミ•ヘンドリックス。
彼は俺たちにとってGOHTであり、GODと呼べる存在だったからだ。
「無事にコンサートは観れたが…帰りの旅費がなくてね」
ギークはヒッチハイカーとなって。ドイツからイギリスへ帰国した。
「2ヶ月後に出勤したら…クビになってた、無職さ!」
ギークは指で喉をかき切る仕草。
でもその声はさばさばしていた。
「ま、当然さ!微塵の後悔もないね…なにしろ!あの!!ジミを観れたんだから!!!」
「俺…生で彼を見た事ないよ!」
「やっぱり彼は凄いか?!」
ビルも!俺も!興奮して。
彼の顔を覗き込んだ。
トニーはいつもと変わらない。
冷静に紅茶を口に運んでいた。
「ジミは凄かった!凄かったぜ!確かに!あんな風にギターを弾くやつを…俺は今まで見た事がない!」
教会画の聖者のように。
彼は瞳を閉じて言った。
「今まで俺が見た中で、生涯で2番目に素晴らしいコンサートだったよ!」
「2番目?」
「1番はクリームだよ」
トニーがカップを置いて。
ギークの顔を見つめた。
「ジミは確かに凄い!クリームのエリック・クラプトンも、ジミの影響を受けて.、あんな風に奔放に、枠にとらわれないギターを弾きたいというのは分かるんだ。クリームでは、実際それをやっていた。ジミのライブというかバンド…エクスペリエンスな。俺は、ジミのワンマンバンドだと思う。しかし、クリームにはせめぎ合いというか…戦いがあるんだ!ジンジャー・ベイカーと、ジャック・ブルース…そしてエリック。3人しかいないけど、一体感というのかな…」
「グルーブ」
「そう!トニー!それなんだ!バンドの音のうねりが、客席全てを巻き込むような。あーゆうのがやりてーよな!」
「ギーク」
トニーはいつも笑わない。
「なんだよ!トニー」
「お前の事を俺は…へんなやつなんて言ってしまった…すまない!」
「ギークだからな」
「お前は男の中の男だよ」
「そうなのか」
「お前はこの世界にいるべき人間だ!ぜひ俺達と一緒にやってくれ!そして必ず!必ず!成功しようぜ!」
「ありがとう」
「今のは本当に嬉しいぜ!」
トニーは頷いた。
「生涯いちかも」
「マッドもな!」
俺のは多分ついでだ。
「俺も入れてくれ」
ビルが慌てて会話に入った。
バンドの船出に問題なく。
順調で最高だった。
「で、バンド名なんだけど」
「聞かせてくれ」
彼らの顔をひとまずは見回して。
発表した。
「トーキング・ポークスだ!」
「最低だ」
まあ聞け。
「なんだって!?喋るブタだって?お前がぶひぶひ歌うつもりか?」
聞いてくれ。
「ぶひぶひ歌ったら…即解散だ!その後で、お前をバーベキューにして、客に食わせるか?」
お願いだ。
「少し考えた方がいいよマッド!」
早くも不協和音。
いや俺以外結束。
絆はかたく結ばれた




