ピータの才能
「さっきのギター凄かったな!」
パブで酒を飲みながら。
俺はギークに言った。
「フリート・ウッドマックの…グリーン・マナリシを聞いたんだ!」
グリーン・マナリシは英国のブルーズバンド、フリート・ウッドマックの1番新しい録音曲だ。
「ぶっとんだよ!」
フリート・ウッドマックのギタリスト、ピーターグリーンは、世間から緑神と崇められる。ブルースギターの名手だ。
おそらく、白人のブルースギタリストの中では、最高位に位置する存在。
60年代から、ブルースとラテンのリズムを融合させたり。とにかく革新的なアーティストでもあった。
アメリカと、本国イギリスでは、マックのアルバムは、ビートルズのアルバムの売り上げを凌いでいた。
しかし、ピーターグリーンは、ドラッグの過剰接種と、精神を病んでいた事もあり。マック全盛期に引退。
音楽の世界から姿を消した。
ギークがぶっばされた。
グリーン・マナリシ。
彼が最後に録音した楽曲であり。
それは既にブルースではなかった。
イントロから疾走する。リズムとリフ。相反するような、狂気に満ちたボーカル。楽曲の暗いうねり。
叩きつけるように弾かれるギター、
あまりに衝撃的だった。
「俺はひどくあの曲が耳について」
「さっきお前が弾いた曲は」
「あの曲のリズムから…ヒントを得た。まるで、軍隊が行進する時の靴音みたいだろ?」
ダダ!ダッダッダッ!
まさにそんな感じだ。
「すごく気にいったよ!」
「あの曲には…インスピレーションを感じさせる。何かがあるんだ!でも…」
俺たちのバンド。
暗礁に乗り上げてしまった。
ピーター・グリーンの置き土産。
今後の俺たちのバンドにとって、
重大なヒントが隠されていた。
ギークのプレイスタイルにもだ。
しかしダウンジング・ボーイズは、足元の金脈を見つける事が出来ず。
解散する事となった。
「ギーク!フアッキン•チェスター!」
パブのカウンターで飲んでいると、
背中越しに声をかけて来るやつ。
それは屈託のない明るい声だった。
「ロブか!元気だったか?」
ギークは振り向いて答えた。
「ぼちぼちだ」
「ロブ、こいつはマッドマ」
「本名でいい!」
「ピーター・クロスだ」
ギークに紹介されたロブ。まるで、ギリシャ神話に登場する神々の1人。そんな表現が大袈裟なら。
舞台から飛び出してきたロミオ。
とにかく美しい顔をした男だった。
「こいつはロバート・プラント。以前バンド・オブ・ジョイで歌ってた」
「見た事あるよ」
俺はギークと親しげに笑みを交わす。その青年の顔を知っていた。




