スピンオフ第3話・タカセはキューピッドになりたい。
聖都市のショッピングモール。
レインとタカセは、エミリへの贈り物を探すため、雑貨屋を訪れていた。
「実用性のある物を選んでみよう。エミリの好みはわかるか?」
タカセに尋ねられ、レインは腕を組んで考え込む。
「んー……そういえば、店にすずらんの花が飾ってあったな。好きで飾ってると言っていた」
すると、タカセはありもしない眼鏡をかけ直す仕草をした。
「選ぶ物が見えてきたな。真実はいつも一つだ」
「お前、楽しんでるだろ」
その時だった。
「あっ、タカセだ〜!」
下校途中らしい女子高生たちが、タカセに向かって手を振った。
タカセも無言で手を振り返す。
「きゃー! 神対応!」
黄色い歓声を背に、レインは小さくため息を吐いた。
「……コード・リーパーも大変だな。俺はようやらん」
「今は任務中じゃないからな……グレイにも、愛想よくしろと言われている」
「タカセ〜、指ハートして〜!」
タカセは黙って指ハートを作る。
「きゃー! 可愛い〜!」
歓声がさらに大きくなる。
その様子を見ていたレインは、呆れたように目を細めた。
「お前、適応力高すぎんだろ」
「これも職務だ」
タカセは至って真面目な顔で答えた。
「……職務ねぇ」
レインは、先ほどまで歓声を上げていた女子高生たちを横目で見た。
コード・リーパーは、国家に認められた殺人許可ライセンスを持つ者だ。
裏社会の脅威から市民を守る一方で、その活動は世論にも左右される。どれほど優れた実力があろうと、市民の信頼を失えば、彼らの立場は揺らぎかねない。
近頃ではダークヒーローなどと持て囃され、若い隊員にはファンクラブまであるらしい。
「……お前も大変だな」
「何がだ?」
「いや。俺には無理だと思ってな」
「慣れればどうということはない」
「慣れたくねぇよ」
レインは呆れたように肩をすくめた。
*
一方、その頃。
エミリもまた、店の買い出しのためにショッピングモールを訪れていた。
(──コーヒー豆と、ミルクが足りなかったから……)
買い物リストを確認しながら店内を歩いていた、その時。
けたたましい警報音が鳴り響いた。
「強盗だー!!」
エミリの目の前を、武装した強盗犯が駆け抜けていく。
その後を追いかけるように、店長らしきおじさんが慌てて飛び出してきた。手にはリモコン。さらにその後ろから、若い従業員が血相を変えて追いかけてくる。
「店長! 絶対に! ボタンを押したらダメです! それ、モール全体の施錠ボタンです! お客様が閉じ込められちゃいます!」
「えっ!?」
エミリは、目の前で繰り広げられる光景をそわそわと見守っていた。居ても立っても居られず思わず声を上げる。
「あ、あの! 私、警察を呼びますから……!」
エミリは慌ててスマホを取り出す。
「ありがとうございます! 女神!」
店長が感激の声を上げた、その時。
つるっ。
店長の手から、リモコンが滑りかけた。
ポチ。
「「「あ」」」
「店長ーーーーー!!」
「テヘ」
【緊急施錠装置発動。緊急施錠装置発動】
無情なアナウンスが、ショッピングモール全体に響き渡った。
──こうして、居合わせた客も従業員も、もれなく全員、閉じ込められることとなった。
*
タカセは考え込む。
「タイトルと展開に齟齬がないか?」
レインはタカセの肩をポンと叩いた。
「諦めろ」
(つづく!!!!!)




