↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/50

スピンオフ第2話・エミリは会いたい。


 聖都市の街は、今日も賑やかだ。


 子どもたちの笑い声。商人たちの活気ある呼び声。

 石畳に囲まれた花壇では、色とりどりの花が風に揺れている。


 古びた木の扉に、小さな看板。

 バー喫茶Dickeybird は、そんな街の一角にひっそりと佇んでいた。


「──はぁ」


 エミリはカウンターに腰掛け、窓の外を眺めながら、ため息をひとつこぼした。


 Dickeybird。


 どこかの国の言葉で、「小鳥」という意味らしい。


 子どもに語りかけるとき、大人たちが使う呼び方。そんな話を、昔聞いたことがある。


 窓の向こうには、ゴシック様式の建物が並ぶ穏やかな街並み。

 その先には、この街にあって異質な、白い建物が見える。


 ラボ。


 知らない者はいない。


 コード・リーパーと選ばれた研究者、そして、ごく一部の人間だけが足を踏み入れることのできる特別な場所。


 今日の彼は、何をしているんだろう。


 また危ないことをしているのだろうか。

 それとも、研究の仕事で忙しくしているのだろうか。


 助けてもらったあの日から、エミリはレインのことが気になっていた。


 けれど、それは怪我の具合が気になるだけ。


 そう。それだけ。


「──気軽に、会いにいけないよね」


 エミリは、もう一度ため息をこぼした。


 ・


「まず、感謝の気持ちを伝えるには、誠意が必要だ」


 タカセは真剣な顔で言った。


「……ああ」


「次に、相手に喜んでもらえるものを考える」


「……そうだな」


「最後に、相手が今後も安心して生活できるよう、継続的な支援を提案する」


「待て。最後のは何だ」


「困ったことがあれば、いつでも相談してほしいと伝えるんだ」


「……普通だな」


「俺なら、警備体制の確認と緊急時の連絡手段も整えるが」


「タカセ。また脱線してる」


「悪い」


 タカセは素直に謝ると、手元のティーンズ雑誌に視線を戻した。


「……『女性の話を聞くときは、相手の目を見て、共感を示しましょう』だそうだ」


「それくらい普通にやるだろ」


「『相手の髪型や服装の変化に気づき、褒めることも効果的』」


「……髪型?」


 レインは、ふとエミリの顔を思い浮かべた。


 柔らかくまとめられた髪。笑うと細くなる目。店内の絵を眺めるときの横顔。


(……褒めたらいいんだな)


「……可愛い」


「レイン。心の声が漏れてるぞ」


「……」


 レインは黙り込んだ。


 しばらくして、タカセが雑誌を畳む。


「こうして考えるより、先に行動したほうがなんとかなることも多い。レイン、お礼の品を探しに行くぞ」


「珍しくまともだな」


「任せてくれ」


 タカセは自信満々に立ち上がった。

 そんな彼の顔を見て、レインはほんの少しだけ眉をひそめる。


 ──やっぱり、嫌な予感しかしない。


 二人は街へと繰り出した。


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。