05. 生き延びろ
数日後。
グレイはレイヴンと入れ替わる形で、正式にコード・リーパーとなった。
史上最年少。
しかし、その肩書きを祝う者はいなかった。
「レイヴンの気の迷いだ」
廊下ですれ違った男が笑う。
「そのうち死ぬさ」
隣の男も続いた。
グレイは立ち止まらず、聞こえていないふりをする。
そうしなければならないほど、その言葉は何度も聞いた。
──レイヴンが残したライセンス。
それがなければ、自分は何者でもない。コード・リーパーですらなく、ただ人を殺せるだけの子どもだ。
だから考えない。考えれば、あの日に戻ってしまう。
──レイヴンは自分のために残した。
そう思うことにした。そう思わなければ、あの日の選択を受け入れられなかった。
問題は別にあった。仕事がこない。
コード・リーパーは任務をこなして報酬を得るが、依頼がなければ生活できない。
だが依頼主も組織も、グレイを信用していなかった。実績がない、若すぎる。ライセンスの取得経緯も特殊すぎる。誰も仕事を回したがらない。
──ならどうするか。
答えは簡単。誰かが受けた任務、誰かが追っている標的、誰かが集めている情報。それらを調べ上げ、先回りして片付けた。
敵の拠点を潰し、標的を確保する。証拠を持ち帰る。そして何事もなかったような顔で報告書を提出する。
当然、縄張りを荒らされたと怒る者もいた。
だが結果だけは否定できない。グレイが片付けた任務は、確かに成功していた。
少しずつ、本当に少しずつ、名前が知られるようになっていく。
その代償として、身体は傷だらけになった。
生き残れたのが不思議なくらいだった。
自分自身を消耗品として使い潰す。それが当時のグレイだった。
それでも、立ち止まる理由はなかった。
立ち止まれば、思い出してしまうからだ。
血の匂いも、最後の温もりも、あの日の言葉も。だからがむしゃらになって日々を生きた。
──生き延びろ。
まるで、今もそう言われている気がした。
【continue…】




