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9. 彷徨う心



お客様から会社にハガキが届いて

担当者がそれを読んでみたら 


対応してくれた人が

とても親切にしてくれたことに対する

お礼のハガキだったらしい。


そこにはタキガワくんの名前が書いてあったということだった。


彼は、朝のミーティングで、

先輩や上司に褒められて照れくさかった。


と照れくさそうに話した。


その時、みんなからも冷やかされて、

また、照れていた。


私は、どんな対応をしたのか知りたくて 


私をお客様だと思ってやってみて。

といった。


彼は、驚いて、一瞬、私を見つめて


無理、出来ない。


といって笑った。


暑かった夏が、

やっと終わろうとしていた頃だった。


駅までの帰り道、夜の風が気持ちよかった。




飲み会のあと、駅や電車の中で彼と会うと

言葉をかわすようになった。


ある朝、電車の中で、

はじめて声をかけてくれた。

座っていた私の前に、


おはようございます。


と言って、現れた。


私も

おはようございます。

と、挨拶した。



混んでたから、お互いに、静かにしていた。特に話さなかった。

でも、彼を見上げると、

優しそうに見ててくれた。


仕事の話や友達の話や

家族の話をしてくれた。


私を見つけると、話しかけてくれる

彼の気持ちがとても嬉しかった。


タキガワくんをはじめて見かけたとき、

元気がなさそうに見えたのは 

自分の元気がなかったからかもしれない、

自信ををなくして元気が出なくて

やっとの思いで毎日をやり過ごしていた。


元気の出ない日々がずっと続いていた

あの頃の私は、いつも、仕事の帰りに駅で、

ひとりになるとうつむいて、

零れ落ちてきてしまう涙を

誰かに見られないようにしていた。


その頃の私は、

誰にもかまってほしくなかった。


心を閉ざしていないと

いつでも、

泣き出してしまいそうな気持ちでいた。


崩れてしまっていたひとりの心は

彷徨っていたかもないけど、

もう、さみしくはなかった。


誰のことも求めていなかったし、

ひとりでいたかった。


もう誰も私にかまわず、

ほっといてほしかった。


心を閉ざしてしまったことで、

周りの人達から、励ましやなぐさめや

色々なことを言われたけど、


ただ、責められてるとしか

感じられなくなってしまっていた。


心の扉をほんの少しだけでも、

開けておかないといけないと頑張ったけど、


もう、心がもたないと思った時、

私は完全に扉を閉じてしまうことにした。


どんどん心が硬くなってしまっていくことはわかっていたけど、 

そうしていないと、

もっと弱くなってしまいそうで・・・。


もう、壊れてしまいそうだったから、

自分の心を守るために、閉ざした。


閉ざしたあとの私は、

自分が惨めで悲しかった。



ただ強くなりたかった。 


しっかりとした気持ちでいたころに

戻りたかった。


もう一度、強さを取り戻して、

優しい気持ちになりたかった。


(つづく)

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