10. タキガワくんとストーカー
そんな日々の中で、駅や電車で、
たまに会うタキガワくんが、
話しかけてくれたことが
嬉しかった。
少し元気が出たような気がする。
ひとりでいたかったはずなのに
彼が話しかけてくれたとき、
少し安心できたのかもしれない。
閉ざしていた心は、
少しだけ素直な気持ちを
思い出していたのかもしれなかった。
私が何を話したかは全然覚えてないけど、
彼はよく笑ってた。
可笑しそうに笑ってた。
だから私もつられて笑った。
電車の中だったから声を出さないように
笑うのに苦労してお腹が痛かったね。
新宿に着くまでの30分のおしゃべりだった。
だいたい彼は、このあと、
地元の友達と飲みに行くって言ってた。
飲めないんだから、飲みすぎないでね。
というと、
あねごみたいに飲まないから大丈夫だよ。 と言って出かけていった。
タキガワくんの話は、
ホントなのかウソなのか、
時々、作り話っぽく聞こえた。
あるウソっぽい話として、
友達の元カノが、
元カレにストーカーされていて
困っているから
そのストーカーをストーカーして
証拠をつかんで止めさせる。
と、熱く語ったことがあった。
私はあまり良く理解出来ず、
元カノの元カレっていったらその友達?
友達がストーカーになっちゃったから、
やめさせるってこと?
それとも、タキガワくんは
友達の元カノを好きになっちゃったの?
会話はちぐはぐしてしまうから
それが可笑しくてふたりとも笑ってた。
よく聞いてみると、
友達の元カノに新しい恋人が出来たけど、
その新しい恋人ともすぐに別れて、
また別の恋人が出来たらしい。
元カレは彼女のことを忘れられず
ストーカーみたいなことをしている。
という話だった。
そのストーカーをストーカーしてるのが
元の元カレでタキガワくんの友達。
ということだった。
あまりよくわからない話だったけど、
彼はそれを手伝うというので
私はあきれて彼女のことが好きなの?
ときいてみた。
彼は、
彼女には会ったことない
といったから、
それじゃ、タキガワくんには
関係ないじゃない。
そんなことして危険はないの?
逆恨みとかされたら大変だから
やめときなよ。
警察に届けるとか。
と、大人として一応言ってみた。
彼は少しおとなしくなって
でも友達が手伝ってって言ってるから・・。と言ったから
困っている友達を放って置けないんだな。 と思って
ふたりとも危なくないようにしてね。
何かあったら周りの人達も困るでしょう?
と言っておいた。
新宿駅に着くと
それじゃ、お疲れー、
と言って、先に電車を降りていった。
(つづく)




