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5. 不可解な携帯電話



駅でふたりと別れるときに、


さっきの人、電話かけてきますよ。

危ないですよ。

削除しておいたほうがいい。


と言われて、


私はその場で携帯電話を取り出して、

3人で、画面をのぞきこみながら 

さっき登録したばかりの

海斗の電話番号を削除した。




翌日の夜、着信があった。 

履歴をみると、海斗 とあった。


昨日、削除したはずなのに履歴に名前?


かけなおすつもりはなかった。


その翌日も履歴に 海斗 とあったけど

かけなおさなかった。


電話の理由がよくわからなかった。


なんだか作り話みたいなことを言ってたし、 危険な人たちかもしれないから、

警戒していた。


いったい私に何の用があるというのだろう。


でも、新宿での夜にタキガワくんの

仕業なんじゃないかと思ってしまったから

何か意味があるのかもと、

私は少し迷いはじめていた。


私の手を気にしているのも気になった。


いや 、 でも・・・。


ことわるなら、早いほうがいい。


そう思って、今度、タイミングがあったら 電話に出ようと決めた。


また、翌日も電話があった。 


今度は、夜、少し遅い時間で、

電話に出ることができた。


電話の向こうは

盛り上がっているみたいだった。


つながった電話に、

彼はとても嬉しそうな声で話した。


今、新宿で飲んでるからおいでよー。 

と私を誘った。


もう寝るところだったし、

こんな時間にいきなり誘うなんて、

行けるわけないし、

その突拍子も無い誘いに

本当は吹き出してしまいそうだったけど 

ことわるつもりでいたから

笑わないように注意して、わざと冷たく 


無理。  とだけ言った。


盛り上がっていた彼の気持ちが、

みるみる沈んでしまい 

悲しそうな声になってしまった。


最後は聞き取れないくらい

小さな悲しそうな声で電話は切れた。


電話を切ったあと、私は少し胸が痛んだけど 実際に会うのは、ちょっと怖かったから

仕方がない。と思った。


ベッドに入った。


彼を傷つけてしまったようで

なかなか眠れなかった。


翌日からは電話はこなくなった。 

すっきりするかと思っていたのに

海斗の悲しそうな小さな声が耳に残って


胸が痛かった。


もう少し違う言い方をして、

ちゃんとわかってもらえばよかった。

と後悔していた。


翌日もその翌日も電話がないから、

もう、かかってこないと思った。


言い方が悪かったことは

あやまりたいと思って、最後に電話した。


タイミングが合わないみたいで、

かけたり、かかってきたりで

何日か過ぎてやっとつながった。


私は仕事を終えて、家に帰るために

歩いているところだった。


彼は、

やっとつながったね。と

とてもうれしそうに言った。


いつ会える? 今夜? それとも明日?明後日?  


悲しそうな海斗は消えて

また、盛り上がっていた。


私は、

あやまりたかった。という

電話をかけた理由を話し、


今、ちょっと時間がとれないから。


と、会うつもりの無いことを  

今度は 優しく、やんわりと伝えた。


やんわりすぎるのか、

アメリカ暮らしが長いせいで、

この日本語の微妙なニュアンスが

伝わらないのか、

彼は予定を合わせる話ばかりする。


私は 会いたい理由を聞いてみたけど、

新宿で一度会ったからいいでしょう?

とよくわからないことをいう。


何かのセールスや勧誘だと面倒だと思って

それを確かめると

そういうのじゃないと言う。


でも、会うのはちょっと無理だから。

と言うと、

また、弱々しい小さな声になってしまって


かわいそうだと思って会って・・・


というようなことをいって、

最後はまた聞き取れなかった。


私はそれ以上、何も言えなくなってしまってメールのほうがことわりやすいと思って、

アドレスを教えて電話を切った。


メールはすぐに来た。


歩きながら、 タキガワくんのことを

思い出していた。

あの時とよく似てる・・・。



-10年前-

地元の友達と飲みに行くから友達と来て

という誘いだった。


タキガワくんとは

ひと回りも年が離れているから、

さすがに、それは、と断ったのに

何度も電話がかかってきて、


いつにする?とか、

どこにする?とか、

友達何人連れてくる?とか、

俺はGWがいいんんだけど、とか、

私の話を聞いてないみたいに

話を進めてくるから、

少し、面倒になって


じゃあ、もう、わかった。

と言ってしまったことがある。



海斗も同じ。

断ってるのに、

どんどん勝手に話を進めてしまう・・・

この感じ。


いつにする?


というメール。


さっきの電話の私の話を

全然、聞いてないみたいに

断られるかもしれないという不安は

全く無い、無邪気なメールに対して

どう返したらいいのかわからず、

戸惑ってしまっていた。


そんなに私に会いたい理由は?


目的は何なの?


会社をやっているといっていたから、

何かのリサーチとか?


歩きながら、海斗のことで

頭がいっぱいになってしまった。


断りやすいようにアドレスを教えたけど 

どう返していいか、わからなくなって


歩きながら、あれこれ考えているうちに

少し、面倒になり 

わからないことは直接会って聞いてみようと 会うつもりになっていた。


私の気持ちがいつのまにか

自然と変わってしまった。


不思議な気分だった。


海斗とは予定を合わせるために

その夜、何度かメールのやりとりをした。


翌日、出社すると、私へのメールが

届かなくなってしまっていることを

知らされた。


家族や友人からも、電話がかかってきた。


ここのところ迷惑メールが

ひどくなってきたので

メールフィルターを何日か前に設定したからそのせいだと思って設定をやり直した。  


海斗とだけはトラブルがなかったことを知り 不思議に思った。


海斗とは

予定を合わせて待ち合わせをした。


(つづく)

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