4. 海斗▪かいと▪
おかしな夜だった。
私はタキガワくんの仕業なんじゃないかと
思ってしまっていた。
彼が面白がって
イタズラしてるんじゃないかと。
まだ、旅立ったばかりだし、
さっき、お通夜で最後のお別れを言った時、私たち3人の姿を見て、
いつものように、
ついてきたんじゃないかと、思っていた。
なんだか、近くにいるような気がする。
さっき、私に声をかけてきた外国人が
名前を言って、
握手して下さい。と言ったから握手をした。
なんだか、国際的。
そしたら日本人の彼が、
僕も、と言って
いちばん、とおくの席から
手をさしだして来た。握手をした。
私の手を見ていた。といった。
その時、私は不思議に思った。
私も自分の手のことばかり考えていたから。
ここに来てからずっと、タキガワくんの
手のぬくもりを思い出そうとしていた。
日本人の彼が、話しかけてきた。
ピアノをやってるの?
手をみるとわかる。といった。
また、私の手の話をしている。
私の手が気になってるみたいだ。
あんなに遠くの席から見てて、
そんなことがわかるの?
私の手の話ばかりしているのが
少し気になった。
けど、ほっといた。
タキガワくんのことを
考えていたかったから。
私は酔った頭でぼんやり思った。
やっぱりタキガワくんの仕業でしょう?
映画のゴーストみたいに、
今、あの日本人の彼のカラダを使って
最後にもう一度
手をつなぎにきてくれたんでしょう?
彼に何かイメージを送っているんでしょう?
そうでしょう?
彼との握手はタキガワくんとは違ったけど、優しい感じがした。
あの春の夜のことを思い出していた今夜、
偶然出会ったばかりの彼と握手をしたから
そんな風に思い込みたかったのかもしれない。
いよいよ時間が遅くなってきたから、
帰ることにした。
それを告げると、日本人の彼から
電話番号を教えて
と言われた。
教えるつもりはなかった。
警戒していた。
よく聞こえなかったふりをして、
出口に向かって歩いた。
いつの間にか携帯電話を手に持った彼が、
出口近くに立っていた。
困った。
彼の番号を聞いて、
後で、かけるといったけど
今。 という。
その強い意思というか、
逆らえない何か、
力のようなものを感じて、
その場で、かけてしまった。
かかってきても出なければいい。
私の番号がわかると彼は安心したように
携帯の画面を見てた。
海斗 ▪かいと▪
と名乗った
(つづく)




