18. 最後のデート
休みの日に浅草に行った。
恵比寿でごちそうになったまま
品川でもお返しできなかったから、
お礼に、浅草寺のお守りを渡そうと思った。
何か日本の思い出になるように
日本らしいものをがいいと思ったし、
この先もずっと彼の仕事が順調で
ますます発展していくことを祈って
お守りにしようと考えた。
地下鉄に乗って浅草に向かった。
雷門に着くと観光客でにぎわっていた。
そういえばタキガワくんと
浅草寺で待ち合わせたことがあった。
どうして雷門で
待ち合わせしたんだった?
混んでて、なかなか会えなかったっけ。
私はタキガワくんに話しかけながら歩いた。
待ってる間に、おみくじを引いたら、
凶だったよ。といって、笑ってたね。
お参りをして、タキガワくんと海斗、
ふたりの旅の無事を祈った。
おみくじを引いた。末吉。だった。
待ち人来る
よかったね。
海斗からの連絡を待っていたから。
お守りを選んだ。
色々種類があって
どれにしたらいいのか迷ってしまった。
どのお守りにする?
タキガワくんに相談した。
旅立つ前のデートをしている気分だった。
お守りをちゃんと渡せるといいね・・・。
海斗からの連絡はまだ途絶えたままだった。
品川で会った時、
来週からは九州と東北に行って
一度アメリカにもどって・・・。
というようなスケジュールを話していたけど こっちにもどったら、
連絡をくれるとも
言ってなかったから、
もしかしたら、
このまま会えないかもしれない。
タキガワくんの四十九日も、もうすぐ。
ふたりとも、遠くへ行ってしまう。
タキガワくん、
遠くに離れても
私のことちゃんと見ててね。
色々なこと、ちゃんとやるから
しっかり見ててね。
そう彼に頼んだ。
浅草から帰って休んでいた。
タキガワくんのことを想った。
入院したのはもうガンが末期で
治療が辛そうで苦しそうで
見ていられなかった。
お通夜の帰りに新宿で聞いた話を
思い出していた。
辛かったでしょう?
苦しかったね。
お見舞いにも行かずごめんね。
入院したこと知らなかったから・・・。
ほんとにごめんね。
あの日、タキガワくんの夢をみたよ。
何も言ってなかったけど、
もしかして私のところに寄ってくれたの?
私のこと覚えていてくれたんだね。
もう、忘れちゃってると思ってたよ。
私は、ときどき思い出してたよ。
思い出すたびに、
今頃は、かわいい彼女が出来たかな?
って考えてたよ。
今は楽になった?
もう苦しくない?
まだ少し疲れてる?
もしかしたら、
辛くて苦しくて
どうしようもなくなったとき
少し休みたくて、
私のひざを思い出した?
旅立つ前に少し休んでから行きたいの?
そう、話しかけると私の目から
涙があふれた。
こんなに涙が出るのは、
知らせを受けてから
初めてのことだった。
私は、タキガワくんがそばにいて
一緒に泣いているような気がした。
泣いてるの?
涙があふれて止まらなかった。
・・・もう 泣かないで・・・。
ここに、いるから・・・
いつでもここにおいでね
いつもそばにいるから
いつも待ってるから・・・。
悲しかった。とても。
だけど、
不思議なことに、
私の心は穏やかで、
優しい何かに包まれている。
(つづく)
【19話の完結まで、あと1話】




