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14/21

14. 横浜とあねごたち



海斗にメールした。


恵比寿での夜に、

ご馳走になってしまったから

お返しするつもりで次の約束をした。


メールのやり取りをして

予定を合わせようとしたけど

今週も来週も予定が合わないから 


またあとでメールするね。


と私に返したしたまま、

もう何日も連絡がない。


あとで。

といったら普通はその日のうちだと

思ってたけど、

彼の場合は違うらしい・・・。

そうとう忙しいらしい・・・。


仕事のために来ているんだから

当たり前だけど、

疲れてるだろうなぁ。

と思った。


仕事が忙し過ぎて、誰かに会う暇もない。


そんな頃の自分を思い出していた。


疲れて、でもやらなくちゃいけないことが

たくさんあって、 

終わらなくって、クタクタで。 


心も疲れてしまって、

自分がもうダメになってしまいそうで

怖かった。


その頃の私は、疲れて帰る帰り道で、

誰かに抱きしめてほしい。と 

そう思ってた。 

なぜだか、ある時、ふと、そう思った。


家族でもなく、恋人でもなく、友達でもなく 見知らぬ人でもない。


別の誰かに。

別の何かに。


誰を、何を求めているのか

自分でも、よくわからなかったけど

安心できる誰かに、何かに、


強く抱きしめてほしいと想っていた。


もし、そうしてもらえたら、

また、がんばれそうな気がしたから。



その時、ある考えがうかんだ。


同じなの? 

海斗のひざ枕への憧れは、

あの時の私の気持ちと

同じなのかもしれない。


そう思った。



海斗からの連絡がないまま何日か過ぎた。



私は、久しぶりに飲みに行くことにした。


長い付き合いの仕事仲間たち。

 

横浜で集まってる。

というメールが来たから

電車を乗り換えて横浜に向かった。


彼女たちに、ここのところの私に起こった

不思議な出来事を話してみたかった。


なにより、経験豊富な彼女たちに、

ひざ枕について聞いてみたかった。



彼女たちは、今、私に起きている

不思議な偶然の話を

信じてくれたみたいだった。


まるで作り話みたいになってしまったから

ちゃんときいてくれる仲間たちがいてくれてありがたかったし、

私の状態もいつも通りだと確認できた。


もしかしたら、タキガワくんが

亡くなってしまった悲しみで、

少しおかしくなってるのかもしれない。

とも、思っていた。


タキガワくんが亡くなってしまった日に 

私は彼の夢を見ていた。 


スーツ姿の男の人が横たわっていた。

顔が見えなかったから

誰だか分からなかった。


知らない人だと思ったけど

なぜか気になって、

誰?と考えながらその姿を見てた。


でも、わからなくて、そのまま目が覚めた。


その瞬間に、もしかしてタキガワくん?

と彼の顔がうかんだ。


ゴールデンウィークが終わって、

少しした頃。

仕事に行く朝、

着替えながら、鏡に向かって、心の中で


タキガワくん? 

今日、夢に出たでしょう?


元気にしてるの?

と話しかけていた。 


もう、ずいぶん、会ってない。

私のことは、もう、忘れちゃったかな。

最後に会ったのは・・・。


今頃はかわいい彼女が出来たかな?




悲しい知らせが届いたのは、

それから2日後のことだった。


ちょうど夢を見たことで

どうしているかなぁ。

と思っていたところだった。


だからあかりちゃんから届いたメールを見て

しばらく動けなくなってしまった。

息がとまりそうだった。


それからは、

タキガワくんとの思い出や

忘れてた疑問や後悔が

いくつもいくつもうかんで来て

少し大変だった。 

それが止まらなくなってる感じだった。


だけど、なぜだか涙はでなかった。


そして現実を受け入れられないせいなのか

それほど悲しい気持ちに包まれなかった。


ある日、真夜中に部屋でDVDを見ていたとき私のカラダから 

何かがふっと出て行った気がした。

左肩のあたりからそれは離れていった。


私は、タキガワくん? 

もしかしてずっと一緒にいてくれたの?

と、話しかけていた。


ある朝、誰かに

肩を抱き寄せられているような感覚で

目が覚めた。 


覚めていたけど目を閉じたまま

じっとしていた。

私の左側から右肩に腕を回していて、

だんだん力が強くなった。

私は声を出さないで


心の中で、タキガワくん? そうなの?


と話しかけると、すうっと力が緩んだ。 


起き上がって部屋の中を見回したけど

いつもと変わりなかった。


でもそばにいるような気がして 

小さな声で


おはよー。と言ってみた。




そんな話を彼女たちにしたら


四十九日がすぎるまでは

まだ、旅立たないでいるよ。 


そばにいるよ。と


同じような出来事の話をしてくれた。


友人の一人が話してくれた。


友達のひとりが

何のまえぶれもなく、

突然、亡くなってしまったときの話で、

その悲しい知らせを

電話で受けているときに、

テレビから流れてきた曲があったらしい。

その曲は彼女が大好きな曲で

カラオケに行ったときは、

いつも、その彼にリクエストして

歌ってもらっていた曲だった。

滅多にテレビで流れる曲ではないから

それを聴いて、たった今、

その彼が自分のところに

お別れに来てくれたと思った。

という話だった。


私は、その話を聞いて、うなずいた。


偶然かもしれないけど、

テレビではめったに流れないその曲が

たまたまそのタイミングで流れるなんて、

きっとその彼が

最後に彼女に聞かせてくれたんだと思った。


別の友人も話してくれた。

彼女は、一年前に病気でご主人を

亡くしたばかりだった。

本当は、まだまだ、

悲しみから立ち直っていない。

普段は明るく頑張っている。

だけど、二人で会って話したとき、


楽しむ っていうけど、

どう楽しんでいいのかわからない。

この先、楽しいと思えることなんか

あると思えない。


と、辛く苦しく悲しい胸の内を

話してくれたことがあった。


その彼女が、最近、

新しく来た人と仕事をすることになって、

その人が、もうすぐ結婚するという

挨拶をした。と言うことだった。


そのお相手の名前が

亡くなってしまったご主人と同じなまえで、

使われている珍しい漢字も同じだった。


結婚式の日取りも同じだったと話した。


彼女は、その時、ただ驚いて、


自分を忘れないでって


ご主人が来たのかなぁ。と思った。

と話したけど、

私はそれは、ちょっと違うと思った。


彼女がご主人のこと忘れるはずないし、

それは、彼もよく分かってると思うから、

もっと別のことを知らせに来たんだと思う。


きっと、彼女のことが心配で、


自分はいつもそばにいるよ、

だから大丈夫だよ。


と知らせに来てくれたんじゃないかと思う。


そうみんなに話したら、

みんなも、きっとそうだと思うと

彼女を見た。


彼女は、

そうかもね

と言って、遠くを見た。


あとは、海斗の話もした。

みんなは、

タキガワくんが海斗に入ってるんじゃないかといった。

映画のゴーストみたいに。


私もそんなふうに考えてたから、

こんな偶然が重なったら

誰でもそう考えてしまうのが

自然なんじゃないかと少し安心した。


ひざ枕の話もした。

それについてはひとりだけ、

年下のその彼が、

ちょっと甘えたいんでしょう?

と言っただけだった。


意外だったのは、

私のほかにいた4人の彼女たちが


ひざ枕なんかしたことない~。

と口をそろえたことだった。


そして、誰かが、


もし、ひざ枕をしてきたら、

足がしびれるから、その頭をすぐ、どかす。


と言って、みんなを笑わせた。


この素敵なあねごたちのひざに

しばし安らいだ人が誰ひとりいないなんて。


私は少し酔ってきた頭でまた、

考えはじめてしまいそうになったけど 


そうしないで、移った話題についていった。


最後に頼んだ生グレープフルーツサワー。

あねごの一人が絞ってくれて、

私のグラスにいれてくれた。


帰り道、横浜をあるいていたら 

タキガワくんともこのあたり歩いたなぁ。


と思い出したことがあった。


(つづく)

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