それぞれの春。
あれから半年ほど過ぎた。
お師匠さんは、傷の治療で温泉街に行ったままだ。
僕は桜姉ちゃんと共に、夏樹さんのお世話になっている。
夏樹さんは、僕を後継者にすると言って、いろんな事を教えてくれる。
ただ、酒を飲み過ぎた次の日は、一日中、頭が痛いと言っている。
飲み過ぎても頭が痛くならない薬を作ればいいのに。
僕の言葉に屈託なく夏樹さんは笑った。
春の風が若葉を揺らす。
温泉街への道は遠い。
雲海さんは、また旅に出たようだ。
一つ所にじっとしているのは性に合わないと言っていた。
将軍のお兄さんらしいけど、相変わらず胡散臭い人だ。
桜姉ちゃんは、平和になったんだからこれからは商売よ。と言って外国の言葉の勉強を始めた。どうやら外国と貿易をするつもりらしい。
本当は、外国のお菓子を食べたいだけだったことは、僕と二人だけの秘密だ。
岩之助さんはあの戦の後、夏樹さんに頼み込んで寺子屋と剣術道場に通わせてもらっている。
いつか、桜さんに振り向いてもらうんだと言って、桜姉ちゃんに嫌な顔されてた。
でも本当は、お師匠さんに認めてもらうのが一番嬉しいみたいだ。今でも、戦の時に褒められた話を聞かされる。
武虎さんは、軍功を上げて出世した。
忙しくて、剣を振る時間がなかなか取れないと愚痴っていた。
でも、お師匠さんにいつか勝つつもりでこっそり練習してるのを僕は知っている。
僕はこれから何になりたいのか、まだわからない。
ただお師匠さんの鍋が食べたくて、この短い旅を早く終わらせようと、早足で歩き続けている。




