秋風。
秋の涼しい風が、鍋蔵の頬を撫でる。
雲長の墓前。
技王と、縄で縛られた子龍。
子龍は顔を上げることができず、ただ俯いている。
あの戦の後、子龍は投降した。
望みは兵たちの身の安全だけ。
佐之助は、ただ頷くだけだった。
「父にも等しい男を殺した。俺の首を刎ねろ。」
その言葉には佐之助は首を振る。
「お前は、今から償うために生きていけ。」
佐之助の言葉に項垂れる子龍。
都軍は技王の国を併せ、その兵力を持って雷国の侵攻軍を一掃。
この国は、しばしの平安を取り戻した。
「子龍、これからは雲長の代わりに俺を支えてくれ。」
その言葉に、子龍は涙する。
鍋蔵は、二人の様子を少し離れて見守る。
雲長が、この二人を見守ってくれるだろう。
優しい風がすすきを揺らしていた。
佐之助は、相変わらず忙しい日々を過ごしている。
泰山の右腕として、国全体を見る役割だ。
特に今は技王の国をどう扱うか。
慎重な判断が必要な時期だ。
「そろそろ俺一人では限界だな。」
最近では、見どころのある若い兵を連れて仕事の様子を見せている。
佐之助の代わりができる優秀な若者は、何人いても困らない。
「あいつがいればな…。」
出かかった言葉を佐之助は飲み込む。
済んだことだ。考えるのはやめよう。
さて、今日こそは早く帰って、子供とご飯でも食べよう。
佐之助は、気持ちを切り替えて、書類の山に向かい合う。
雲海は、泰山の屋敷で池の鯉を眺めている。
「お前、いつまでここにいるつもりだ?」
泰山の言葉に雲海は振り向く。
「冷たい奴じゃな。もっと兄を敬え。」
泰山は笑う。
「色々めんどくさくなって逃げた男が何を言っておる。」
泰山はため息をつく。
「お陰で、面倒臭いことは全て俺だ。国だの家だの政治だの。」
「お前は俺より優秀だからな。上手くやってくれ。」
泰山は、何をやっても兄に敵わなかった子供の頃を思い出す。
「陰で色々やってくれていることは知っておる。この前の貸しは無かったことにしてやる。」
吐き出すような泰山の言葉に、雲海は大笑いする。
静かな水面を揺らすように鯉が一匹跳ねた。




