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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第七章 最終章

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並び立つもの。

鍋蔵は、静かに歩を進めていた。

子龍の軍の篝火は、はるか後方。

月が中天に昇る頃が、決行の時だ。


音を立てないように、従う兵たちは鎧を脱いできている。

それでもみんな汗まみれだ。

「予定より早く目的地に着いた。今のうちに腹ごしらえをしておけ。」

さすがに鍋というわけにもいかず、皆黙って干し肉を齧る。


鍋蔵は兵たちを見回した。

皆、汗まみれだった。


佐之助が兵を出さなければ、

武虎が北を受け持たなければ、

小太朗が違和感に気づかなければ、

今ここには立っていなかっただろう。


鍋蔵は干し肉を噛みしめる。

固い。

噛み締めるほど旨みが出てくる。

不思議と一人ではない気がした。


月が中天に昇る頃。

鍋蔵たちは静かに敵国の軍へと近づく。

月明かりに照らされる敵軍は全身を覆う鎧が白く光っている。

全身に金属の鎧を纏っているのか。

鍋蔵は眉をひそめ、兵たちに小声で伝える。

「殴った方がよさそうだ。」

兵たちは足元から手頃な石や木を拾う。


一際目立つ軍旗が目に止まる。

敵将の位置はあそこで間違いあるまい。


それを確認した鍋蔵は、静かに告げる。

「行くぞ。」

兵たちは無言で頷いた。


暗闇に乗じての奇襲。

敵軍は慌てる。

しかも、僅か十名ほどの兵とは思うはずもなく、散々に乱れた兵たちは同士討ちを始める。


その隙をつき、鍋蔵は敵の大将と思しき黒い鎧の男へと迫る。

鍋蔵の木刀が唸る。

しかし、男は自らの剣で綺麗に捌く。


鍋蔵の耳には、周りの喧騒は届かない。

黒い鎧の男と鍋蔵の二人だけ、互いの剣だけが存在する世界。

数十合打ち合った。

鍋蔵の剣はまだ届かない。


鍋蔵が大きく息を吐く。


男は一旦間合いを開く。

そして、腰にぶら下げた小袋から黒い何かを取り出す。


戦場に響き渡る轟音と硝煙の匂い。


鍋蔵の左腕に、熱が走る。

遅れて滴る、温かいもの。


左手は使えんな。

鍋蔵は右手で木刀を持ち、半身に構え直す。


静寂。

風さえも止んでいる。


その時、北の方から鬨の声。

蹄鉄の音が遅れてやってくる。


「兄上、助太刀いたす!」

武虎を先頭に数十騎の馬が雪崩れ込んでくる。


武虎は、ヒラリと馬から飛び降り鍋蔵と並び立つ。

月が二人を照らしていた。

「遅いぞ。」

鍋蔵の言葉に、武虎はニヤリと笑う。

「狙って来たんだ。」

武虎の言葉に、鍋蔵もニヤリと笑う。


男は劣勢を悟ったのかじりじりと後退する。

敵軍の兵が男を馬に乗せ、一陣の風のように去っていく。


「追わずとも良い。」

武虎は短く言い、雄叫びをあげる。

味方の兵たちは、夜空に響き渡るほどの雄叫びをあげた。

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