違和感。
鳴り響く銅羅。
空を埋め尽くすほどの矢。
村を挟んだ両軍は互いに牽制するように、矢を射ている。
小太朗は生きた心地がしなかった。
子龍の軍からは途切れることなく矢が飛び続ける。
都の軍からはまばらな矢。
劣勢に見える都の軍。
「あれは連弩を使ってる。」
小太朗は思わず口走る。
「技王の作ったやつ?」
桜の言葉に、小太朗は頷く。
「小さい矢を沢山打てるように、作ってあるんだ。だから普通の矢より弱いんだ。」
小太朗は、何かがおかしいと感じながら言葉を続ける。
「だから怪我をすることはあっても、大怪我にはなかなかならないんだ。」
岩之助は、首を傾げる。
「なんでそんな矢を使ってるんだ。」
「多分、直接斬り合わないようにじゃないの」
桜は、答える。
「勝ちたいだけなら他の方法もあると思うんだ。」
小太朗は腕組みをする。
「勝つだけだったら、投石機とかもっと違うものを使うと思うんだ。」
小太朗は、子龍の陣の方を見る。
大体、山に挟まれた村を戦場に選ぶのはおかしいと思うんだ。」
小太朗は、何かを思いついたようだ。
「桜姉ちゃん、地図を貸して。」
桜は慌てて地図を取り出す。
小太朗は地図を広げながら呟く。
「なんで、こんなところで戦を始めたんだろう。」
岩之助が地図を覗き込む。
「技王の国と都の真ん中だからだろ。」
岩之助は、技王の国と都をまっすぐ繋ぐ線を指で描く。
桜は何か気がついたようだ。
「そっか、早く戦を終わらせるなら、街道沿いの広い場所のほうがいいよね。」
岩之助が、手を打つ。
「そのほうが、大軍同士で戦えるな。」
小太朗は頷く。
「もしかして、子龍って人は戦いたくないんじゃないかな?」
三人は目を見合わせる。
「おっさんに伝えなきゃ!」
桜は、都の軍の方へと駆け出した。
軍旗が密集している場所に、佐之助がいると見当をつけて走って向かう三人。
当然のように兵士に止められる。
「佐之助さんの知り合いなんだ。」
小太朗の言葉に、兵士は首を振る。
「子供はこんなところにいたらいかん。」
小太朗は、兵士に押し除けられそうになる。
岩之助は大声で叫ぶ。
「大事なことなんだ!通してくれ!」
岩之助は力任せに通り抜けようとするが、気がついた周りの兵たちが集まってきて、力ずくで抑えられる。
桜は必死に考える。
「そうだ。小太朗、手形を持ってたでしょ。」
小太朗は懐にしまっていた、通行手形を取り出す。
桜は、その手形を兵の一人に見せる。
「確かに、中村殿の字だ。」
手形の字を見た兵は、怪訝な顔で三人を見る。
疑り深そうな目をした兵の一人が、三人を佐之助のところへ案内する。
「佐之助さん。」
小太朗の言葉に佐之助は振り向く。
「こんなところで何をしている!」
鍋蔵もその声を聞きつけてやってくる。
「どうしたんだ。ここは危ない、早く避難しろ。」
佐之助は、三人を連れてきた兵へ声をかける。
「こいつらは怪しい奴らじゃない。警戒してくれてありがとうな。」
小太朗は、地図を取り出し佐之助と鍋蔵に説明を始める。
「…確かにな。」
鍋蔵は、頷く。
「戦場の気を見ると、確かにそうかもしれんな。雌雄を決する気ではない陣形だ。」
佐之助も頷く。
「そうであれば、なんらかの原因があると考えるべきであろうな。」
佐之助は近くの兵へ指示を出す。
「一旦様子見だな。物見の兵を出した。」
佐之助の言葉に、鍋蔵は頷く。
「小太朗、お手柄だな。」
小太朗は、恥ずかしそうに下を向いた。




