盟約。
佐之助は、泰山を待っていた。
豪奢な間は静寂に包まれている。
佐之助の横には夏樹。
何か、覚悟を決めた表情で座っている。
「どうした佐之助。軍に何か問題でも生じたのか。」
泰山の言葉に佐之助は顔を上げる。
「会わせたい人物がおり、連れて参りました。」
泰山は、夏樹を見る。
「国を失った王か。」
夏樹は。ニヤリと笑う。
「覚えておられましたか。」
泰山は頷く。
「同じ師から学んだ仲だ。お前はあの時のままだな。」
夏樹は泰山を見据えて口を開く。
「頼みがあって参りました。」
「何じゃ。」
「子龍を、部下の暴走を止めるために力をお借りしたい。」
泰山は腕組みをし、考え込む。
「…そして、国を取り戻したいと。」
夏樹は首を振る。
「俺に国を治める力量はない。今回の件で思い知った。」
「お主の望みは何じゃ。」
「ただ、民の命と暮らしを守りたい。」
泰山は夏樹の考えを探るように、じっと夏樹の目を見つめる。
全てを見透かす目だ。佐之助は思った。
しばしの沈黙の後、静かに戸が開く。
「久しぶりだな。」
泰山の視線の先には、雲海。
「何しにきた。」
泰山は口元を歪める。
「兄が帰ってきたのに、冷たいな。」
雲海は、その場にどっかりと座り込む。
泰山と雲海はしばらく睨み合う。
佐之助は、ため息を一つ。
「遠路はるばる来た兄に、茶の一つでも振る舞え。」
泰山は、舌打ちをし、小姓を呼ぶ。
「何か用があってきたんだろう。早く要件を言え。」
泰山は、雲海を急かすように言う。
雲海は、茶を啜り
「外国の侵略は目の前に迫っておる。だが技王の国を傘下に加え、勢力を固めることで防げると俺は考えている。」
佐之助は頷く。
「子龍を抑えるために兵を貸せ。後はこいつが上手くやる。」
雲海は佐之助を顎で指す。
「俺に得はあるのか?」
泰山は苦虫を噛み潰したような顔で、雲海に問う。
「お前は昔からいつもそうだ。損得ばかりだ。」
「違う兄者。俺たちの兵の命を危険に晒す価値はあるのかと聞いているのだ。」
雲海は、夏樹を見る。
夏樹が口を開く。
「俺の国の技術を全て公開する。俺の技術で救われる人が一人でもいるのならば協力は惜しまない。」
泰山は再び、腕を組む。
「お前を王に戻すわけにはいかん。それでもかまわんな。」
夏樹は頷く。
佐之助は成り行きを見守る。
雲海が無頓着に煎餅を齧る音だけが、この場に響いていた。
「佐之助、お主はどう見る。」
泰山の問いに佐之助は答える。
「技王の技術は少なくとも我らの10年先。民のためには喉から手が出るほど欲しいものと考えます。」
泰山は、雲海を睨む。
「兄者、今回は貸だからな。」
「佐之助、軍議を開け。我が軍は子龍を制圧。その勢いを持って侵略者どもを駆逐する。」
佐之助は、泰山の命を伝えるため急ぎ席を外した。




