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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第七章 最終章

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託す。

夜半だった。

扉を叩く音に佐之助は目を覚ます。

妻と子供を起こさないように、佐之助は剣を握り、玄関へと向かう。


用心しながら声をかける。

「こんな夜半に何事だ。」

「佐之助さん、すまない。開けてくれないか。」

聞き覚えのある声。

今は、鍋蔵と名乗っている男だ。


剣で敵わなかった男。

共に戦った男。

信頼できる男。

様々な思いが込み上げる。


佐之助は、そっと扉を開ける。

憔悴しきった鍋蔵の顔を見て息を呑む。

「どうしたんだ。」

他に言葉を思いつかなかった。

擦り切れ、泥に塗れた着物。

月が鍋蔵の影を映す。


佐之助は、周りに人がいないのを確認し、鍋蔵を家に入れる。

「頼む。」

鍋蔵は一言だけ、吐き出すように呟く。


「落ち着け。」

佐之助は、土間に鍋蔵を座らせ、水を差し出す。

鍋蔵は、一息で水を飲み干す。


佐之助は、鍋蔵が口を開くのを待つ。

「技王を都へ連れてきた。」

佐之助は鍋蔵の顔をまじまじと見る。

「彼を助けてやってほしい。」


佐之助は腕を組む。

外からは、鈴虫の声だけが聞こえる。


「俺は軍人だ。将軍からは技王の国を併呑するように指示を受けている。明日には先発隊が出発する。」

佐之助は、一口水を飲む。

「もう止められん。」


「それは構わない。ただ、技王を生かしてやってほしいだけだ。できるだけ人が死なないようにだ。」

鍋蔵はニヤリと笑う。

「国は失っても構わん。民を死なせたくないんだ。」

佐之助は、鍋蔵の真意を測りかねる。


この男は、今だに測りかねる。

その思いが、静かに込み上げるばかりだった。


「技王は理想家だ。国を治める力はない。だが民を幸せにしたい心は本物だと思う。」

鍋蔵は、自分の手を見つめる。

「俺は、それを助けたいと思う。だから、佐之助さんに頼みにきたんだ。」

「相変わらず、無茶なことを言ってやがる。」

佐之助はため息をつく。


「どうしたいんだ。」

「技王の国に住む人たちは豊かだった。」

鍋蔵の手が白くなるほど握りしめられている。

「俺には政治はわからん。」


しばらく黙った後、

「だが、あいつならもっと多くの人を救える気がする。だから生かしてやりたい。」


「お前は変わらんな。」

佐之助はため息をつく。


静かに夜は更けていった。


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