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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第七章 最終章

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かりんとう。

武虎は縁側で汗を拭う。

「修行ばかりでは身が持たないでしょ。」

母が、茶とかりんとうを持ってきてくれた。

深い皺が刻まれた痩せた手。


苦労をかけているな。と武虎は思う。

俺が名実共に天下無双であれば、苦労させずに済むのに。

「あんた達は本当にそっくりだね。父上とおんなじだ。」

最盛期を過ぎた父は、今では、たくさんの門下生の指導にその一日の大半を使っている。

本来なら、兄がそうなっている筈だった。


池の鯉を見つめながら武虎は思い出す。


かりんとうは兄の好物だった。

修行の合間に母は二人分の茶とかりんとうを持ってきてくれた。

「お前が食え。」

兄はいつもかりんとうを分けてくれた。

兄の好物だと知ったのは、兄が家を出てからだ。


父は厳しかった。

代々続く、将軍家の剣術指南役。

守永家の長。

その責任を果たすため、日夜修行に打ち込む姿ばかりを見ていた。


父が、老いを感じ始めた時。

その全てを兄へと伝えた。

武虎は、その兄の姿をずっと見ていた。


兄が家を出て行った日。

泣き崩れる母。

背を向ける父。

置いていかれた、代々伝わる刀。

武虎は、その背中を追いかけることができなかった。


武虎は教えてもらったことは全てできるようになろうと思った。

「剣は腰で振れ。」

「刃ではなく、鍔で切れ。」

父の教えを心に刻み込み、日々修行に打ち込んだ。


だが、兄には敵わなかった。

きっとその先にあるものに、まだ俺は手が届いていない。

苛立ちが武虎を奮い立たせる。

木刀を握り、立ち上がりかけた時、門弟が声をかける。


「武虎先生、中村様からの使者が来ております。」

武虎は怪訝な顔をした。



しばらくのち。

武虎は緊張していた。

横には佐之助。

幼い頃から、世話になった人だ。

佐之助の落ち着いた息遣いで少しだけ安心する。


目の前には右将軍、泰山。

恐れ多くて顔を上げることも憚られる存在だ。


目の前には豪華な異国の菓子があるが、とても手を出すことができる雰囲気ではなかった。


「佐之助。技王の国が落ちたとは本当か。」

「左様でございます。」

武虎は息を呑み込む。


「例の外国勢力の所為なのか。」

「左様と存じます。」

佐之助は短い返答の後、顔を上げる。


「民のため、戦さは平定するが良いかと存じます。」

泰山は、腕を組み考え込む。

「これは好機だ。兵は好きに使って良い、技王の国を併呑してしまえ。」

「はい。」

佐之助は短く返事をする。

「このまま、この国を一気に飲み込んでしまうぞ。」

泰山は口元を歪める。

「長らく続く、戦乱を終わらせる好機だ。」


泰山は、視線を武虎に向ける。

「貴様が、守永の次男か。長男のような馬鹿なことはするな。わしの駒であり続ければ、それなりの地位は約束しよう。」

武虎はただ、平伏するだけだった。

二人は、将軍の間を辞した。


「佐之助さん、兄は馬鹿なことをしたんでしょうか?」

佐之助は答えず、首を振る。


夕暮れの風が、静かに二人を包んでいた。


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