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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第七章 最終章

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遠くまで。

都への道のりは長い。

逸る技王を宥める鍋蔵。

「このままでは、馬が潰れる。」

鍋蔵は馬の様子を見ながら、馬が潰れないように適度に休息をとる。

代えの馬がいるわけではないのだ。


夜の闇の中、鍋蔵と技王は焚き火を囲む。

「一刻も早く都で体制を建て直さねば。」

ゆらめく炎に、技王の焦燥した表情が照らし出される。

鍋蔵は、黙って鍋に味噌を入れる。

味噌を溶かしただけの汁と干し肉だけの飯。


「少しでも体力をつけておけ。」

鍋蔵は湯気を立てるお椀を技王に押し付ける。


噛み締めた干し肉は、固かった。

二人は無言で噛み続ける。


「雲長を失った。子供の頃からずっと一緒だった。」

鍋蔵はただ頷く。

「俺の足りないところを補ってくれていたんだ。」

技王の手が震える。


鍋蔵はじっと焚き火を見つめている。


「雲長は信念を曲げなかった。」

鍋蔵は言葉を絞り出すように喋る。

「俺は雲長の妻子を助けることが、出来なかった。」


パチリと焚き火が爆ぜる。

鍋蔵の首を垂れた姿が、揺れる炎に照らし出される。


「俺は、俺の国の民の生活が楽になればいい。それだけを考えていた。発明は楽しかったしな。」

技王は、汁を飲み干す。

「だが、雲長を失った。」

天を仰ぐ技王。


しばしの静寂。

「急ごう。」

鍋蔵の言葉に技王は頷いた。


焚き火の火が小さく揺れる。

二人は夜明け前に旅支度を整えた。


…その頃。

小太朗と桜は都を目指していた。

「おっさんとは別行動だけど、都で合流するわよ。」

小太朗は頷く。

鍋蔵の判断で、別行動となった2人の頼りは一枚の地図。

「都に着いたら、佐之助さんがなんとかしてくれるって。お師匠さんがいってました。」

地図の上で桜の指が動く。

「ここが技王の国。ここが今からいく都。」

桜の指が丁寧になぞるのは南。力王の村がある辺り。

「私達、遠くまで来たのね。」


「この海の外にあるのが、悪い国なの?」

「この国を乗っ取るつもりらしいわ。私たちの生活を邪魔するなら、私は嫌い。」

「そうかなぁ。」

小太朗は腕を組む。

「でもきっと、その国の人たちも家族がいて、生活があるんだろうね。」

桜は頷く。

「会ったこともないから、良いか悪いかはわかんない。」

桜は地図を畳み、立ち上がる。

「休憩は終わり。早く都へ行くわよ。」


焦る気持ちを抑えながら、一路都を目指す二人。

暑い風が二人を包む。


日が沈み始めた頃、背後から蹄の音が近づいてくる。


身構える二人。

視線の先には岩之助。


「やっと追いついた。」

馬上から微笑む岩之助。

「女と子供の二人旅じゃ危ないだろ。」

岩之助は馬から降りる。

「二人とも乗れ。俺が都まで連れて行ってやる。」

桜はそっぽを向く。

「ありがとう。勘太郎さん!」

「いい加減、覚えてくれ。」

岩之助は苦笑いする。



戦乱の火は遠くから、じわじわとそれぞれの背中へと近づいてくる。

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