夕暮れの帰り道。
小太朗は、寺子屋へと向かう。
鍋蔵が療養のために温泉入っている間、技王の計らいで寺子屋で学ばせてもらうことになった。
歳の頃もまちまちの子供たちに囲まれ、白髪混じりの先生の話を聞く。
字の練習をする。
算盤で計算をする。
周りの子供達と自分を比べて、出来ること、出来ないことがわかった。
もっと綺麗な字を書きたい。
もっと早く計算したい。
今まで、桜が教えてくれていたことだが、周りに仲間がいることで、小太朗はさらに熱心に学ぶことができるようになった。
寺子屋が終わった後の時間も新鮮だった。
友達と日が暮れるまで遊ぶ。
鬼ごっこで転び、皆に笑われる。
小太朗もつられて笑う。
そんな当たり前のことすら、今までの自分には無かったことに気がついた。
日暮れどきに迎えに来た桜と、技王の屋敷へ帰る。
そんな穏やかな時間が、小太朗は好きになっていた。
夕闇の中、今日の出来事を桜に話す。
桜もその日の出来事、出会った人や学んだことを話す。
夕暮れの涼しい風が吹く。
こんな日がずっと続けばいいのにと小太朗は思った。
「おい、待ってくれ!」
大声で呼びかける声に二人は振り返る。
視線の先には岩之助。
小太朗と桜は緊張を解く。
「何か用ですか?勘三郎さん!」
「もはや、一文字もあってねえじゃねえか!」
岩之助は大笑いする。
桜は少し嫌そうな顔をしながら岩之助を見る。
「何か用?おっさんはまだ温泉から帰ってきてないけど。」
「…そうか。残念だがわかった。どうせ今の俺ではまだ勝てない。」
桜は歩きながら、技王の国に来てからのことをかいつまんで岩之助に説明する。
岩之助は、黙って一部始終聞いている。
その様子を見て、小太朗は『この人もなんとなく大人になったなぁ。』と思ったが口に出すのはやめた。
岩之助は桜と小太朗を技王の屋敷へ送り届け、自分の宿へと向かう。
「まさか、本当に会えるとは。心臓が飛び出るかと思った。」
岩之助は、はやる胸を抑え不審なほど慎重な足取りで歩き出した。




