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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第五章 技王

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守るための剣。

雲長に連れられて、三人は宮殿の前の広場へ。

無駄な装飾はないが、よく手入れされている垣根が取り囲んでいる。


「ここは、儀式の時に使う広場だ。」

小太朗は、もの珍しい光景に目を奪われる。

「こんな広場が作れるなんて、私たちの国より進んでるみたいね。」


雲長は、鍋蔵に問いかける。

「もう一度聞く。」


「剣術師範になってくれ。」

桜は驚く。

「おっさん、そんな話をしてたの?」

鍋蔵と雲長は頷く。

「お師匠さん、剣術師範になるんですか?」

「いや、そのつもりはない。俺は目の前の一人に飯を食わせる。それだけだ。」


「そんなぬるい生き方、俺は認めない。」

ふらりと、長身の男が姿を現す。

「雲長さん、俺はこの男より強い。」

「子龍。」

「こんな男に頭を下げなくても、俺がこの国を強くする。」

長身の男は、腰の剣を抜き鍋蔵の前に立つ。

「俺と戦え。俺の方が強いと証明する。」

鍋蔵は首を振る。

「俺は、強さを証明するために剣を振るつもりはない。」


「これならどうだ。」

子龍の合図で小太朗と桜の後ろに、若い兵士が二人現れる。

二人を拘束し、首元に刃を突きつける。


「守るための剣なら抜けるんだろ。」

「こんな、見え透いた挑発にならないでよね。」

桜が叫ぶ声が響く。

「お師匠さん、助けて。」

小太朗は、絞り出すように声を出す。

桜は痛みを堪え、目で「こっちに来るな!」と鍋蔵に訴える。


「これで、抜けるだろ。」

子龍の言葉に、鍋蔵の目が一瞬暗く光る。

桜は見逃さなかった。

「こんなのハッタリよ。」

桜は掠れた声を振り絞る。


…桜の言葉は鍋蔵には届かない。

鍋蔵は、腰の木刀を構える。

「かなり出来るな。」

子龍が呟く。

「お前こそ。」


小太朗は、固唾を飲んで成り行きを見守る。


互いの間合いを図るように、摺り足で距離を詰める子龍。

桜は唇を噛み締める。


一陣の風が吹いた時、二人の均衡が破れる。


目にも止まらぬ速さで、二人の剣が交わる。

金属と木の塊がぶつかる鈍い音。


鍋蔵の木刀は綺麗な円を描く。

体勢を崩す子龍。


子龍は剣を構え直す。

腹の底から溢れ出すような気勢を発し、鍋蔵に向かって突進する。


鍋蔵の木刀は小さな円を描き、子龍の剣を逸らす。


体勢を立て直し睨み合う二人は、まるで野生の獣。

見守るもの達は呼吸をすることすら忘れ、あたりは静寂に包まれる。


「おっさんの勝ちね。」

小太朗は桜の言葉に振り返る。

「おっさん、一歩も動いてないわよ。」


「なるほど、大した腕前だ。」

子龍は悔しそうに、顔を歪める。

「だが、お前を剣術師範としては認めん。どんな手を使ってもだ。」

子龍の合図で、若い兵士達は小太朗を羽交締めにしていた手に力を込める。

小太朗の口から呻き声が漏れる。



もう一人の男は、桜を突き飛ばし、剣を構える。

陽の光に煌めく刃。


桜はヒラリと身を躱す。

小太朗は、兵士の手を振り解き距離を取ろうとするが、足がもつれてよろめく。

「小太朗!」

鍋蔵の声が広場に響く。


鍋蔵の表情が変わる。

桜が怯むほどに。


木刀を握り直した鍋蔵が、一歩を踏み出した時。

「待て、子龍の負けだ。」

技王の声が響く。


小太朗は、体を起こす。

「あんた大丈夫なの?」

「コケただけだよ。」


「なかなか面白い見せ物だったな。」

いつから見ていたのか技王の声。

「子龍引け。お前が叶う相手ではない。」

技王の言葉に子龍は唇を噛み締める。

「しかし…。」

剣を構え直す子龍の手元を雲長が抑える。


うなだれた子龍に対し、技王は続ける。

「安心しろ。鍋蔵を剣術師範にするつもりはない。」

技王は、鍋蔵の方に向き直る。

「どうだ、気分直しに飯でも食べんか?」


「おっさんの料理の方が美味しいわよ。この国の料理にはない、何かがあるもの。」

桜の言葉に技王が、ニヤリと笑う。

「ウチの料理人と比べてみるか?」

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