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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第五章 技王

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豚汁。

技王に連れて、台所へ。

昼食の支度を始めようとしていた小太りの男に技王が声をかける。


二言三言話した後、小太りの男はニヤリと笑い、頷く。


用意した食材はどちらも同じ。

豚バラ肉、大根、にんじん、ごぼう、こんにゃく、長ねぎ。


技王の料理長は、見たこともない大きな器具に野菜を順番に入れる。

小気味良い音と共に、均一に切られた具材が飛び出してくる。

小太りの男は、煮立った鍋に食材を手際よく放り込んでいく。


鍋蔵達は、一つ一つの具材を手作業で切っていく。

「おっさん、あっちの方が早いわよ。」

桜は慌てているのか、少し早口だ。


「小太朗、こんにゃくを手で千切れ。」

鍋蔵の言葉に小太朗は首を傾げる。

「手で千切ったら、不揃いでカッコ悪いですよ。」

小太朗は不満そうにこんにゃくを千切る。



まずは、技王の料理長の鍋を食べる。

技王は満足そうに頷く。

「これだよこれ。いつ食べても同じ美味しさだ。」

「確かに美味しいわね。」

桜は悔しそう。


次は、鍋蔵達の鍋。

蓋を開けた瞬間、ふわっと立ちのぼる味噌の香り。

甘みとコクが混ざり合った湯気が、顔にまとわりつくように迫ってくる。

「こっちも美味しそうだな。」

技王は一口啜る。


ぐつぐつと煮える土鍋の中では、

味噌を吸いきったこんにゃくが、ぷるんと揺れている。

箸でつまめば、じゅわっと染み出す出汁。

噛んだ瞬間、弾力の奥から味噌の旨味がじわりと広がる。

「だが、俺たちの鍋と大して変わらないな。」


豚肉は程よく脂を落とし、味噌と絡んでコクの塊に変わる。

大根はとろとろに崩れ、甘さを溶かし込む。

ごぼうは土の香りを残しながら、出汁に深みを足す。

にんじんはほくりと柔らかく、ほんのり甘い。

「見た目は、技王の方が綺麗です。」

小太朗は悔しそう。


主役のこんにゃく。

他の具材の旨味をすべて引き受けている。

先程の鍋より、味が染みている…。

技王は首を傾げる。


椀によそえば、表面には味噌の薄い膜。

それを崩すと、中から湯気が一気に解放される。


小太朗は一口啜る。

熱い。だが止まらない。

「こっちの方が美味しいですよ。」

「食べるたびに微妙に味が変わっていくわね。」

二人とも箸が止まらない。


「…妙だな。」

技王はもう一口啜る。

「さっきと同じ味のはずなのに、違う。」


鍋蔵は小さく笑う。

「同じじゃないからな。」

小太朗は鍋蔵に尋ねる。

「何でですか?」

「こんにゃくは、汁が染み込みにくい。綺麗に切ってあれば尚更だ。」

桜は頷く。

「だから手で千切ったのね。」


「そして、飯はみんなで食べるから美味しいんだ。」

技王はキョトンとした表情。

「お前、面白いな。」

鍋蔵はニヤリと笑った。


「この国の技術を他の国の人にも教えたら、皆んなが豊かになるんじゃないんですか?」

小太朗の言葉に、技王は腕組みをして考え込んでしまった。

「この国の技術を周りの国に教えるのか?」

技王の言葉に小太朗が頷く。


「この国にしかない技術だから、みんなが欲しがるってことでしょ。」

鍋蔵は頷く。

「皆が知っていれば、羨ましがられることはない。」

「そうか。…そうだなそれも一理ある。」

技王は何かを思いついたようだ。

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