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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第四章 天下無双

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静かな村、戦の気配。

「久しぶりの村だね。」

小太朗は声を弾ませる。

平原の真ん中。田んぼに囲まれた集落が見える。

どこにでもある、ありふれた集落。


入道雲がゆっくりと流れていく。

鳶の鳴き声が彼方から聞こえてくる。

なんの変哲もない、そんな一日のはずだった。


「何か、おかしくない?」

鍋蔵は頷く。

「どこが?」

小太朗の言葉に桜が答える。

「人のいる気配がしない。お昼時なのに、ご飯の支度をしている感じもしない。」

確かに、煙の一つも上がっていない。


三人は、あたりに警戒しながら集落へと近づいていく。


静寂が集落を包んでいる。

一軒一軒中を覗いて見るが、人っ子1人見当たらない。


集落の中で一際大きな家に入った時、やっと村人がいた。

「こんにちは。」

桜の声に村人は反応しない。


よく見るとやつれた表情。

生気のない目をしている。


鍋蔵が駆け寄り村人の肩を揺らす。

「しっかりしろ。何があったのか教えてくれ。」


村人が掠れた声で喋る。

「…水を。」

小太朗が慌てて竹筒を差し出す。

村人は、貪るように竹筒の水を飲む。

そして、大声をあげて泣き出した。


桜は村人の肩を優しくさする。


しばらくして、村人は少し落ち着いたようだ。

「この村ももう終わりだ。」

擦り切れた着物の袖で目元を拭う。


「都で戦争だってんで、この村の若者やら米やら何もかも持っていかれちまった…。」

村人は顔を突っ伏して再び泣き始めた。


「それでこの村には誰もいないんだね。」

「とりあえず、飯を食おう。」

鍋蔵は背中の鍋を下ろし、囲炉裏に焚べる。

小太朗と桜も手際よく準備を手伝う。

残り僅かな米を入れ、お粥にする。


ゆっくりと湯気が立ち昇る。

小太朗はお粥を入れたお椀を村人に差し出す。

村人は震える手で受け取り、お椀の中を見つめる。


「暖かいうちに食え。」

言いながら、鍋蔵は小太朗と桜にもお粥を注ぐ。


小太朗達が食べ始めたのを見て、村人も食べ始める。

初めはゆっくり一口。そのあとは手が止まらなくなる。

「…ありがとう。」

村人は呟く。


4人のお椀と箸の音だけが、静寂の中に響く。


「煙が上がっていると思ってきてみたら、まだ人がいたのか。」

野太い声と共に、大柄な男が顔を出す。

日に焼けた顔が髭に覆われている。

「この村はもうダメだ。俺と一緒に逃げるぞ。」

男は村人を背負う。

「何があったの?」

桜が男に問いかける。

「この村は戦場になるって話だ。もうすぐ実りの季節だったのにな。」

男は天を仰ぐ。

「夕方には戦が始まる。お前達も早く逃げろよ。」


男の姿を見送る三人。

「どうしよう。」

小太朗が、鍋蔵を見上げる。

「一旦この場を離れよう、そして様子を見る。」

小太朗と桜は頷き、それぞれの荷物を背負い、歩き始めた。


集落の外れまで来たところで、小太朗が2人を呼び止める。

「…何か聞こえない?」

耳を澄ます三人。


かすかに聞こえる赤子の泣き声。

三人は声の方へと駆け出す。

集落の外れの小屋の中には、泣いている赤子と放心状態の女。

「こんなところで何をしているの?早く逃げなきゃ。」

桜の声に女は答えない。


小太朗が呟く。

「この音ってもしかして…。」

「馬の蹄だな。」

鍋蔵が耳を澄まして答える。

「小太朗、桜。2人を連れて逃げろ。北の方だ。」

二人は頷き、動き始める。


鍋蔵は一人立ち上がり小屋の外へ出る。

「ここは俺が引き受けた。」

鍋蔵の言葉を背に、小太朗達は北へ向かって歩き始めた。

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