二度目の火。
屋台の前は、閑散としていた。
元祖!の方には行列。
桜の呼び込みの声が虚しく響く。
小太朗は、元祖!の方をじっと見ている。
行列の客の顔。食べた後の表情。おにぎりを焼くときの味噌の香り。
小太朗達の屋台と同じだった。
「同じことをしても、勝てないかもしれない。」
小太朗は腕組みをして考える。
「値段が同じだから、新しい方に行くのかもしれない。安くしようか?」
桜が口を開く。
「安くしても、向こうもすぐ値段を下げてくるよ。」
桜が腕組みをして考える。
「向こうが元祖!なら、こっちは本家!って看板に書こうか?」
小太朗は頷いたがすぐに首を振る。
「そんなことじゃ向こうには勝てないと思う…。」
結論は出ず。時間だけが経った。
風が味噌の香りを運んでくる。
「同じ匂いか…。」
小太朗は大きく息を吐く。
「同じ匂いだね。」
桜が答える。
「同じ匂いなんだよ!」
小太朗は、何かを思いついたのか、おにぎりを焼き始める。見守る桜。
一旦焼いたおにぎりに、もう一回味噌を塗る小太朗。
「何やってんのよ。勿体無いじゃない。」
桜が呆れる。
小太朗は気にせず、そのおにぎりをもう一回網の上へ。
…何かが違う。
より強い、香ばしい味噌の香り。
その匂いを嗅ぎつけたのか、通りの男が足を止める。
「何だ?この匂い。」
小太朗は、息を止めてその男をじっと見つめる。
桜もドキドキしながら見つめている。
男は看板を見て頷く。そして足早に屋台の前へ。
「一つもらおうか。」
桜は、大きな声で答えた。
「ありがとうございます!」
男はおにぎりをひと口食べる。
「…なんだこれ、さっきのより香りがいいな。」
桜は満面の笑み。
小太朗もほっと息を吐く。
…しかし、次の客はなかなか来ない。
風がせっかくの匂いを運び去ってしまう。
「小太朗どうしよう?」
桜はへたり込む。
しばらく考えていた小太朗は
「お姉ちゃん、冷えたおにぎりより暖かい方が美味しいよね?」
頷く桜。
「焼きたてを売った方が喜ばれるかも。」
小太朗の言葉に桜は大きく頷く。
「先に今まで通り焼いたおにぎりを準備して、注文が入ったら味噌を塗ってもう一回焼いてみようよ。」
小太朗は、おにぎりを焼き始める。
桜も今まで以上の大きな声で呼び込みを始める。
「一つおくれ。」
毎日のように、おにぎりを買ってくれていた客からの注文。
小太朗は2度焼きを始める。
今までより強く味噌の香りが立つ。
「熱々のおにぎりなので、気をつけてください!」
桜が元気な声を出す。
「熱っ。」
客が思わず声を出す。
「熱いって言ったでしょ。」
桜の笑い声。
「熱いけどうまい!」
客はおにぎりを平らげる。
「もう一個くれ。」
立ち上る濃厚な味噌の香りに、道ゆく人々が振り向く。
その様子を元祖!の男が苦々しく見つめていた。




