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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第二部 旅の始まり

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22/23

二度目の火。

屋台の前は、閑散としていた。

元祖!の方には行列。

桜の呼び込みの声が虚しく響く。


小太朗は、元祖!の方をじっと見ている。

行列の客の顔。食べた後の表情。おにぎりを焼くときの味噌の香り。


小太朗達の屋台と同じだった。

「同じことをしても、勝てないかもしれない。」

小太朗は腕組みをして考える。

「値段が同じだから、新しい方に行くのかもしれない。安くしようか?」

桜が口を開く。

「安くしても、向こうもすぐ値段を下げてくるよ。」

桜が腕組みをして考える。

「向こうが元祖!なら、こっちは本家!って看板に書こうか?」

小太朗は頷いたがすぐに首を振る。

「そんなことじゃ向こうには勝てないと思う…。」

結論は出ず。時間だけが経った。


風が味噌の香りを運んでくる。

「同じ匂いか…。」

小太朗は大きく息を吐く。

「同じ匂いだね。」

桜が答える。

「同じ匂いなんだよ!」


小太朗は、何かを思いついたのか、おにぎりを焼き始める。見守る桜。


一旦焼いたおにぎりに、もう一回味噌を塗る小太朗。

「何やってんのよ。勿体無いじゃない。」

桜が呆れる。


小太朗は気にせず、そのおにぎりをもう一回網の上へ。


…何かが違う。

より強い、香ばしい味噌の香り。


その匂いを嗅ぎつけたのか、通りの男が足を止める。

「何だ?この匂い。」

小太朗は、息を止めてその男をじっと見つめる。

桜もドキドキしながら見つめている。


男は看板を見て頷く。そして足早に屋台の前へ。

「一つもらおうか。」

桜は、大きな声で答えた。

「ありがとうございます!」


男はおにぎりをひと口食べる。

「…なんだこれ、さっきのより香りがいいな。」

桜は満面の笑み。

小太朗もほっと息を吐く。


…しかし、次の客はなかなか来ない。

風がせっかくの匂いを運び去ってしまう。


「小太朗どうしよう?」

桜はへたり込む。


しばらく考えていた小太朗は

「お姉ちゃん、冷えたおにぎりより暖かい方が美味しいよね?」

頷く桜。

「焼きたてを売った方が喜ばれるかも。」

小太朗の言葉に桜は大きく頷く。

「先に今まで通り焼いたおにぎりを準備して、注文が入ったら味噌を塗ってもう一回焼いてみようよ。」


小太朗は、おにぎりを焼き始める。

桜も今まで以上の大きな声で呼び込みを始める。


「一つおくれ。」

毎日のように、おにぎりを買ってくれていた客からの注文。

小太朗は2度焼きを始める。

今までより強く味噌の香りが立つ。


「熱々のおにぎりなので、気をつけてください!」

桜が元気な声を出す。

「熱っ。」

客が思わず声を出す。

「熱いって言ったでしょ。」

桜の笑い声。

「熱いけどうまい!」

客はおにぎりを平らげる。

「もう一個くれ。」


立ち上る濃厚な味噌の香りに、道ゆく人々が振り向く。


その様子を元祖!の男が苦々しく見つめていた。

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