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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第二部 旅の始まり

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23/23

無駄にはしない。

次の日は、元祖!より少し多くの客がこちらに並んでいた。

しかし元祖!の男は余裕のある表情。桜はその余裕が引っかかる。


こうなったら、呼び込みの声の大きさでもっと差をつけようと思い、桜は喉が痛くなりそうなほどの声を張り上げる。


そこへ、中村佐之助がやってくる。

「いい匂いだな。だがお嬢ちゃん。この勝負お前達の負けだ。」

桜は言い返す。

「でもこっちが最初に始めたのに。」

「でももヘチマもねえ。許可があるか、ないかだ。」

中村は小太朗と桜を順番に見る。

「向こうは正規の許可を取ってる。お前達は許可なく営業している。」


中村は軽く息を吐き出す。

小太朗は震える拳を握りしめる。

「上に話が上がっている。…ここで終いだ。」


うなだれる小太朗と桜。


片付けを始めた。二人に雲海が声をかける。

「お前達の目的は何だ。屋台で食ってくつもりか?」

小太朗は首を振る。

「僕は一人前の男になって、お師匠さんに守られなくても大丈夫になりたい。」

桜も答える。

「私は兄の代わりに世間を見てくる旅だ。」

雲海は頷く。

「よし、わかった。後のことはわしに任せて宿に戻っておけ。鍋のやつの看病でもしてな。」


二人は、トボトボと宿に戻る。

言葉少なく、二人で夕餉を囲む。

そこへ坊主が顔を出す。

満面の笑顔で、二人の前に巾着を突き出す。


思わず受け取った小太朗はその重さにびっくりする。

「雲海さん、これって…。」

路銀が必要なんだろ。」

桜は頷く。

「お前達の2度焼きの方法を元祖!の奴に売ってきた。」

驚く二人。

「どのみち、すぐに見抜かれる。」

雲海は、目の前のお茶を飲み干す。

「だったら、売れるうちに売っちまった方がいいだろ。」

二人の顔を順番に見ながらも雲海は続ける。

「これは路銀の足しにしてくれ。」

唖然とする二人。

「もちろん、わしの取り分は貰ってる。心配しなくていいぞ。」

小太朗は巾着を見つめながら、口を開いた。

「…それ、僕達のやり方ですよね。」

雲海は頷き、お茶を飲み干す。

「だから、無駄にはしない。」

囲炉裏の火が、三人の影を揺らした。

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