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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第二部 旅の始まり

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20/23

消えない熱。

桜が目を真っ赤にしている。

侍はそれをぼんやりと見つめる。

…そんなに悲しむようなことだったか。


侍が目を開いたのに気がついた桜は、思わず駆け寄る。

一瞬ためらい、そして侍に抱きつく。


侍の背中に激痛が走る。

「痛い。勘弁してくれ。」

桜は答えず、抱きついたままぐずっている。


その様子を見ていた女中が口を開く。

「あんたが運び込まれてきた時は大変だったんだよ。坊主のおっさんに担がれてきてね。もう一人の子はずっと泣き通し。この子と二人で付きっきりで看病してくれてたんだよ。」


桜は、やっと侍から離れる。

まだ鼻をぐずぐずいわせている。

「男の子は疲れてさっき寝てしまったけど、この子はその後も看病してくれてたんだよ。」

桜は大きな音を立てて鼻を噛む。


「男の子の手前、気が張ってたんだろ。ちゃんとしなきゃって。」

女中が優しく桜の頭を撫でる。

「後は私が見ておくから、ゆっくり眠っておいで。」

桜は頷く。

「…ばか。」

侍に向かって呟く。

そして、ぐずりながら名残惜しそうに何度も振り返り、部屋を離れる。


侍は閉まった襖を見つめていた。


…小太朗は目を覚ました。

ぼんやりとあたりの様子を理解していく。

障子越しに差し込む光。通りから聞こえる喧騒。

体の痛みと共に、記憶がはっきりしてくる。


焦る気持ちで部屋を見渡し、侍を見つける。

小太朗の目に涙が溢れる。

「お師匠さん、それ…。」

小太朗の顔が強張る。

絞り出すように声を出す。

「ごめんなさい…。」


小太朗は手が白くなるほど拳を握りしめる。

「僕のせいだ…。」


侍は目を細める。

「違う。」


小太朗はぐずりながら口を開く。

「僕がいたから…。」

侍は首を振る。

「お前はそこにいていいんだ。」

小太朗は一瞬躊躇し、それでも思わず侍に抱きつく。

やれやれと肩をすくめる女中。


泣きじゃくる小太朗が落ち着いた頃を見計らって、女中が声をかける。

「坊ちゃん、傷に触るから。」


小太朗の頭を優しく撫でながら続ける。

「このお侍さんも早く傷を治すためには、しっかりと休まないといけないんだよ。」

小太朗は頷く。


「坊ちゃんも疲れてるだろ。お姉ちゃんと一緒にしばらく寝ておいで。私が見といてあげるから。」


小太朗も、後ろ髪を引かれるように何度も振り返り部屋を出る。


「安心しな。子供達はお坊さんが見といてくれるってよ。」

侍は頷き、横になり目を閉じる。


背中の傷が、熱を帯びていた。

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