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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第二部 旅の始まり

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18/23

炎の名残。

侍は浮かない顔で、宿の囲炉裏の火を見つめている。

炎に照らされて四人の影がゆらめいている。


「鍋の。あの男とはどういう関係なんだ。」

雲海が問いかける。

「昔の上司だ。すごい人だが、俺とは生き方が違う。」

囲炉裏の火がパチリとはじける。

小太朗と桜は、じっと俯いている。


「クヨクヨ考えても仕方ないな。明日に備えて早く寝るぞ。」

雲海は小太朗と桜を促す。


二人が眠りに落ちた後、侍と雲海は囲炉裏のそばに座っていた。

「…思い出したくないって顔だな。」

雲海が侍の湯呑みに酒を注ぐ。

侍は酒の濁った表面を見つめている。


酒が微かに揺れる。

耳が痛いほどの静けさが2人を包んだ。



激しい戦いの後の静けさ。

血の匂いが混じった、乾いた風を肌で感じる。

体が思うように動かない。

侍は目の前の泣いている子供のために、鍋の準備をする。有り合わせの材料で。


どこかで大きな声が聞こえる、友軍のようだ。

どうやら敵軍の兵がまだ隠れていたようだ。

周りの喧騒は侍の心には届かない。

侍の体は泥のように疲れ果てている。ただ、鍋を作ることに集中する。


気がつけば、あたりは火に包まれている。

木が焼ける匂い。

人々の嘆きの声。


「こんなところで何をしている。」

侍が見上げた先には、十手の男。

「鍋で目の前の子供を救っても、他の者達は救えない…。」



…囲炉裏の火が弾ける音に我に帰る。


雲海がただ静かに侍を見つめている。

侍は湯呑みの酒をひと口飲む。喉が焼ける。

「…強いな。」

雲海は無言で酒を注ぎ出す。

侍は酒の表面に映る炎を見つめる。


侍は湯呑みの酒を一息で飲み干した。



侍は薄明かりの中で目を覚ました。

外からは仕事熱心な棒手振りの声、豆腐やあさりなどを買い求める女衆の声が聞こえる。


侍はじっと掌を見つめている。

「朝か。」

一人呟く。

一瞬、昨晩の炎が頭をよぎる。


小太朗がもぞもぞと起き出す。

大きく伸びをして侍を見て微笑む。

「お師匠さん、おはようございます。」


侍は、視線をあげ小太朗に目を合わせる。

小太朗の気配に釣られて桜も目が覚めたようだ。

「おっさん、おはよう。」

侍は二人に朝の挨拶をする。


小太朗と桜は、慌ただしく朝の準備を始める。

侍は急かされるように、腰を上げた。

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