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鍋侍と、弟子たち〜戦う前に、飯を食え〜  作者: now here man
第二部 旅の始まり

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17/23

食えなかった鍋。

燃え盛る炎。

虚しく響く子供の泣き声。

手付かずのまま冷めてしまった鍋。

誰かに食べさせるはずだった鍋。


侍は汗だくになって目を覚ます。

「終わったことだ。」

一人呟く。

二人は静かに寝息を立てている。



屋台は今日も繁盛している。

昨日買えなかった客、昨日食べてまた食べたいと言う客。老若男女、期待に顔を輝かせながら行列に並んでいる。

桜の元気な声が街道にこだまし、小太朗も手際よくおにぎりを焼いて行く。

…侍の手が、ほんのわずかに止まる。


「お師匠さん、追いつかないから手伝ってください。」

小太朗の言葉に我に帰る。

行列は続く。何事もなかったように。


「誰に断って屋台を出しているんだ!」

誰もが振り返るような大きな声。

昨日の十手の男が数人の部下を連れて現れる。


「許可なんているのか!」

桜が顔を真っ赤にしながら言い返す。

小太朗は、何が起こったのか分からずに、固まっている。


「こんなに沢山のお客さんが並んでるんだ。後にしてくれ。」

侍の言葉に男は顔を歪める。

「お前に指図される覚えはない。」

男は部下に合図し、行列の客達を追い払う。

「お前はこんなところで、こんなことをしている男ではないはずだ。今からでも遅くない、戻ってこいよ。」

男の言葉に、侍は顔を顰める。


「あの時の俺はもう死んだんだ。また、あんたの下で働く気はない。」

侍の言葉に男は思わず十手に手を伸ばしかける。

「相変わらず頑固だな。」

男は肩の力を抜く。

「ここでの商売は駄目だ。お上の許可を取れ。」

睨み合う、侍と男。


どこからともなく、ふらりと坊主が現れる。

「わしの許可でもダメかい?」

男は坊主の顔を見つめる。

しばらくの沈黙の後、男はやれやれとでもいうように、肩をすくめる。

「わかったよ。」

くるりと背を向け、部下達と共に十手の男は去っていった。

…誰も、何も言わなかった。


「あんた一体何なんだ。」

桜は怪訝そうに坊主に尋ねる。

「雲海だ。こう見えてもちゃんと坊主だぞ。」

「仏門に入っているにしては、煩悩まみれに見えるがな。」

侍の言葉に坊主は大笑いする。

「仏様も現世の楽しみの邪魔はしないさ。」

桜は苦笑いする。


「今日は商売あがったりだろ。甘味でも奢ってやる。三人とも付いてこい。」

坊主は慣れた感じに甘味処に入っていき、手招きする。


「鍋の。あの十手の男は何者だ。」

坊主は出された茶を啜る。

「…昔の上役だ。」

小太朗は侍の顔を見上げた。

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