52 マサル峠を越えて_19
* *
「おやおや、中年の一級剣士殿。一体血相を変えて、どうなされたのか?」
アントン騎士長が冷ややかな笑顔でそう訊ねると、剣士は額いっぱいの冷たい汗を、手の甲でしっかりと拭った。
「そう言われるな。我も、火薬の効力がワカったまでよ!」
その言葉に、騎士長は「おやぁ?」といった表情を浮かべた。
だって、本来なら火薬は王族と一部の関係者以外が知り得ない、極秘のものだからだ。
マズいなぁ、これは、……。
私がちらりと女占い師の方に目を向けると、……。
女占い師は、こちらに向けてひとつ頷いてくる。
下手をすると、女占い師が一級剣士に情報をリークしたとも取られかねないよね。
実際の話、私と中年の一級剣士、女占い師、他にも元女盗賊ら数名と、念話に特化したネットワークが形成されている。
これは、もちろんメンバーだけの極秘のつながりで、そのネットワークを他の誰にも知られるワケにはいかないんだよね。
下手をすれば、その関係まで疑われてしまうため、……。
だから、私は即座に手を打とうと思った。
とりあえず、話を逸らしてしまおうかな。
「実はですね、……。現在、私はその火薬を持っているんですよ!」
こちらのその言葉に、騎士長はグイッと顔を引き寄せる。
「ぜひ、見せて頂けないものかっ?」
一級剣士もそう言って、こちらの意図に乗っかった。
「えぇ、もちろんです。実は、これですね!」
火薬の入ったガラスの小瓶を取り出すと、騎士長のテーブルの前に差し出した。
騎士長はさっそくそれを手に取ると、……。
「なるほど、……。実物を手にするのは、これが初めてでしたが、……。やはり、黒い砂のように見えますな?」
その薬瓶を、中年の一級剣士も顔を近づけてじっと見ている。
「では、よろしいでしょうか?」
こちらの言葉に、騎士長は「ありがとう!」といって、直ぐに返してくれた。
私は床に置いてある鉄製の小さなトレイを取って、そこに火薬を匙ひとつまみ分注いだ。
「火薬について、実際に見て頂きましょうか?」
すると、興味を持った一級剣士も、グッと頷いた。
「それでは、……」
私はマッチを擦って、火薬に向けて軽く放ると、……。
ヴォンという音と共に、瞬間的に空気が爆発燃焼した。
「これは、凄いぞっ!」
一級剣士は声を上げて、少しも驚きを隠そうとしない。
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